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評伝フォーレ 明暗の響き みんなのレビュー
- J=M.ネクトゥー (著), 大谷 千正 (監訳), 日高 佳子 (訳), 宮川 文子 (訳)
- 税込価格:11,000円(100pt)
- 出版社:新評論
- 発行年月:2000.1
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紙の本
フォーレの全体像に、手紙など膨大な資料を駆使し、共感と敬愛を織り混ぜ精緻な作品分析で迫った優れた労作
2000/07/30 06:15
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投稿者:高橋洋一 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「レクイエム」で有名なガブリエル・フォーレ(1845−1924)は、フランス近代の作曲家として、サン・サーンスに師事し、とりわけ、歌曲、ピアノ曲、室内楽の分野で優れた仕事を遺した。「夢のあとに」「ヴァイオリン・ソナタ第1番」「ヴァイオリン・ソナタ第2番」など、流麗・明澄で叙情性豊かなメロディーが、独自の夢幻的な魅力を醸し、わが国にもファンが多い。
またフォーレは、作曲と平行して、パリの名門コンセルヴァトワールの院長などを務め、同校においての硬直した音楽教育体制を一新し、モーリス・ラヴェル、シャルル・ケックラン、アルテュール・オネゲルら多くの優れた後進を育てるなど、音楽教育の分野でも、卓抜な業績を遺している。
「評伝フォーレ 明暗の響き」は、フォーレの専門家として定評あるジャン=ミシェル・ネクトゥーが言うところの「主流から外れた群小作曲家と今も見なされている」フォーレの「知られざる全体像」に、手紙、自筆譜など膨大な資料を駆使し、フォーレへの共感と敬愛を織りまぜ、しなやかな感性による精緻な作品分析で迫った優れた労作である。
著者のネクトゥーは、ラヴェルなどの研究で知られるジャンケレヴィッチに師事し、文学博士号を取得後、現在パリのオルセー美術館の音楽課長を務め、フォーレの専門家として有名だが、ラヴェル、マラルメ、ドビュッシー、ストラヴィンスキー、オネゲル、ロシア・バレエ団のディアギレフなども研究対象に入る視野の広さも“武器”になっている。本書では、こうした視点の広さが生かされ、フォーレのドビュッシーやシェーンベルグへの影響、プルーストが「失われた時を求めて」でゲルマント公爵として描いたエリザベト・グレッフュル夫人がフォーレの賛美者であり、夫人の従兄弟の耽美的詩人ド・モンテスキュー伯爵(プルーストと親交深く、「失われた・・・」でシャルリュス男爵として造形されている。)がフォーレの文学上の貴重な助言者であったなど、当時のパリ社交界のサロンでのフォーレの華麗な交友ぶりも存分に描き込まれている。
また、1989年「ペレアスとメリザンド」の付随音楽を手がけた経緯、1907年に初めてのオペラ「ペネロープ」を上演して大成功を収めた経緯(このオペラは、50年代から、「夢のあとに」の名唱でも知られるソプラノのクレスパンの主役で世に広まっていく。)なども読みごたえがある。
著者の守備範囲と関心の広さが、実証的研究と鋭い美学的想像力を通して興味深い指摘を随所にちりばめている。例えば、第2部の第4章「白と黒で」での、ピアノ連弾用の組曲「ドリー」(1894−97)のオーケストラ版が、1913年にテアトル=デ=ザールで舞台上演された時の記述。ドビュッシーの友人ルイ・ラロワは、この曲に合わせてとても愉快な台本を書き上げ大成功を収め、ラヴェルも絶賛の言葉を寄せた。この作品についての著者の次の推測は実に魅力的で説得的である。
「我がままな娘と、ダンサー、道化師たち、そしてアクロバット・・・、恐らくジャン・コクトーはこのディヴェルティスマン「ドリー」のうちに、やがてピカソとサティの協力を得て制作することになる彼の有名なバレエ「パラード」の原形を見たに違いない」。本書は優れた翻訳、情報量の多さもお薦め。 (bk1ブックナビゲーター:高橋洋一/評論家 2000.07.29)
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