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文明の衝突と21世紀の日本 みんなのレビュー
- サミュエル・ハンチントン (著), 鈴木 主税 (訳)
- 税込価格:1,100円(10pt)
- 出版社:集英社
- 発売日:2000/01/18
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紙の本
文明の衝突を地で行く今の国際情勢を理論的に予測し警告している歴史史観
2003/11/23 22:54
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良書普及人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
イラク戦争が終わり、平和が訪れたと米国の指導者が言っているのをあざ笑うかのように世界の各地でテロが横行している。
これはまさにサミュエル・ハンチントンが本書の中で警告しているとおりである。
唯一の超大国の指導者として、米国は極めて自然に、まるで世界が一極システムであるかのように考え、行動する傾向にある。力と美徳を鼻にかけ、慈悲深い親切な支配者だと考えている。他の国々に米国の原則、習慣、制度の普遍的な正当性について説教をたれ、他の全ての国もそれを採用すべきと押し付ける。
しかしそれは幻想であることが多い。まるで世界が一極システムであるかのように行動することで、米国は世界の中で孤立しつつある。英国やイスラエルをはじめとする数カ国の支持は得られるであろうが世界の殆どの国と国民は反対の立場にいる。
米国は定期的にさまざまな国を無法者国家呼ばわりするが、多くの国にとって、今は米国の方が無法者の超大国になりつつある。1997年のハーバード大学の報告では、世界人口の3分の2を占める国々のエリート達は、米国を自分達の社会に対する唯一最大の外的脅威と捕らえている。
どうも米国は、以上のようなハンチントンの警告を無視して、パンドラの箱を開けてしまったようである。イラクへの強引な対応を契機に、イスラム社会の反米、反西欧感情を逆なでし、文明の衝突を地で行くシナリオに入り込んだかの様相を呈している。
日本はどうするか。ハンチントン氏の見立てでは、米国と中華文明の狭間で難しい舵取りを強いられるのであるが、バンドワゴニング(強いものにつく)のが日本のお家芸だと指摘されていることからすると、米国が何時までも強いと考えて、どこまでもついていくのであろうか。しかし、戦前、当時の強国は、ナチスドイツであると誤った判断をしたのが日本であると揶揄されている。
バランシング(勢力の均衡を維持)するというヨーロッパ風の外交手法もあるのだが、現在の日本の立場、外交能力では、無理なのかもしれない。
3年以上も前の本書であるが、書かれていることが、現在の世界の有様を極めて適切に説明できていることは、本書が歴史史観として将来を見通しうる一流のものであることを証明しているのだと思う。願わくば、ブッシュ大統領にもこの本を読んでもらいたいということである。小泉首相はもう読んだのかなあ…
紙の本
イラク攻撃が始まった今、改めて読みたい
2003/03/23 03:43
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コアラ - この投稿者のレビュー一覧を見る
国際世論の同調なしに、アメリカによるイラク攻撃が始まった。テロ支援国家の潰滅という、イラク攻撃の大義名分は理解できるけど、ホントの理由は何なの?という人にお薦めです。
正直、3年前、僕自身は数ページ読んで、この本を投げ出していました。「なんかタイトルがカッコいいな」というだけで、購入したことが原因です。ただニューヨーク・テロ事件のとき、本書のタイトルから想起して本書が気になり始め(でも、まだ読まない)、イラクへの攻撃ムードが高まった最近になり、意を決して(大げさ?)読みました。
冷戦終結直後、世界はネットワークを緊密にしていくと見られていたとき、著者は文明の多極化が進み、その断層線に衝突が起こるとの理論を展開しました(有識者の間では相当なインパクトだったらしいです)。そして、その後の国際政治は、その理論通りに推移していきます。アフガン戦争を端緒に、湾岸戦争、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボでの紛争、そしてニューヨーク・テロ事件です。
これら文明間の衝突で見逃せないのが、イスラム文明のアイデンティティが世界の覇権国たろうとするアメリカに挑む構図です。もしくは西欧文明を押し付けるアメリカに対して、文明の利益を守ろうとするイスラム世界と言ったほうが正確かもしれません。ニューヨークのテロでは国対国の戦争ではないと言われました。そして今度のイラク戦も、今のところ表面的には国と国の戦争ですが、実はアメリカはイスラム文明全体と戦っているかもしれないのです。本書を読むと、そう思わされます。世界でもっとも元気(若年層が多い)で信仰心(団結心)に厚く、人口の多い文明と戦うのだからとんでもないことです。信仰の名のもとに戦う(聖戦=ジハード)心境は、一般的な日本人には理解できないところでしょう。一極体制という覇権を守るために攻撃する、アメリカの心境も理解し難いものがありますが…。一極体制をアメリカが過信することについては、著者は警鐘を鳴らしています。
今回、なぜイギリスはアメリカ(世界で唯一の超大国)を支持し、フランスは反対するのか。同じ西欧文明に属する国でも、態度が別れるのはなぜか。これはヨーロッパ地域における関係各国のパワーバランスに起因しているようです。パワーと文化の相互作用が、国際協調や紛争の要因になると定義しています。
はっきり言って、僕にとっては難解でした。これでも随分と優しくなっているそうです。日本は世界でも類のない「固有の日本文明」であるとのくだりには、プチ・ナショナリズムを刺激されて喜んだりもしました。しかし中国という地域大国の再生により、日本は新たなパワーバランスを模索していく必要があるようです。
とにかく難解で、世界の権威であるハンチントン氏に向かって「なに言ってるんだ、このオッサンは(失礼)」とツッコミを入れながら読みましたが、「世界ってこういうことなんだ」と思わせてくれるには充分な一冊でした。おそらく2度、3度と読めば、より理解が深まることでしょう。でも読み始めるには勇気がいるんだよなあ、この本…。