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紙の本

2000/3/19朝刊

2000/10/21 00:18

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投稿者:日本経済新聞 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「政権は短く、財閥は長い」——韓国にはこんな言い方がある。どんなに権勢を誇ろうと大統領の任期は五年。しかし任期のない財閥会長は大統領以上の“独裁者”である。この本の著者、鄭周永氏は韓国一の大財閥・現代の名誉会長。南北分断前に現在の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)から身一つでソウルに来て、一代で地位を築いた。創業者にして現役。「コリアン・ドリーム」の体現者だ。
 貧しさに耐え、汗を流して働き、努力すれば道は開ける——鄭氏の生きざまは日本の植民地支配から独立した後の激動の韓国史そのものでもある。鄭氏は今年八十五歳。財閥経営と同時に、今は故郷・北朝鮮との統一実現を夢見て労をいとわない。現代グループで育てた牛を連れて北朝鮮を訪れ金正日総書記とも会談してしまうあたり、その行動力は衰えを知らない。
 「人生とは試練の連続であり、連続する試練と戦いながら、それを克服していく過程がまた私たちの人生」と鄭氏は言う。時の政権との間合いを間違えれば、財閥経営が一気に傾くのは韓国の歴史が証明している。鄭氏もまた、九二年の大統領選に出馬、敗れたことで逆境に陥り、金泳三政権の五年間はひたすら隠忍自重の日々を迫られた。自伝という性格を別にしても、苦難を乗り越えたからこそ今がある、そんな自信が行間にあふれる。
 「成功の機会は誰にでも平等にある」「人類の発展は、すべてプラス思考をもった人間によって導かれてきた」……。鄭氏の言葉は、悲観論に傾きがちな日本人に挑戦する勇気を与えてくれる。
(C) 日本経済新聞社 1997-2000

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