投稿元:
レビューを見る
昭和初期の庶民の生活が詳しく書かれているので当時を知らない私にとってはすごく新鮮だった。
登場人物がすごく生き生きとしていて元気が出る。
投稿元:
レビューを見る
「本格小説」等の著者・水村美苗さんの母堂が80才を目前に書いた私小説。
幼い子どもでも自分の出自に敏感なものである。若い父と親子ほども歳の離れた母。聡明な娘は父方・母方それぞれの構造を理解していく。
昔、母は芸者で妾として二人の子をなした。次には置屋の精神薄弱の息子と結婚させられ二人の子を生む。そこにあらわれた若い書生と駆け落ちして出来た子どもが彼女だった。正式の結婚ではない「庶子」としての無言の差別が当時はあった。明治から大正時代の庶民と金持ちの暮らしぶりが抑制のきいた文章から浮かび上がる。
プライドが高く上昇志向の強い少女は自らの人生を切り開いていく。人生は幼少時代に欲したものを追い求めていくもののようだ。美しいもの華美なもの、目立つもの・・主人公もまたその母のように奔放に自分を解放していく。粗野で教養のない母を整理的には嫌悪しながらそれでも世話をする(しなければならない)主人公というところで小説は終わる。続編を読みたいものだ。娘の美苗氏にまで伝播するかのような女の生き方は強烈な印象を残す。
投稿元:
レビューを見る
水村美苗の母親の自伝小説。読売新聞で連載されていた「母の遺産」でまず美苗さんのファンになり、その独特な世界とそこをそう表現するかと毎度うならされる心理描写は「本格小説」でも読み進むのが惜しいような気持にさせられ、でもこの人は寡作なのでなかなか次々とは読ませてくれない。そんな時、図書館で美苗さんの隣にあった本がこれ。
正直お母さんの作品が面白いとは限らないので何度か手にとっては借りずに来たが、その内容が、美苗さんがお母さんをモデルに書いたという「母の遺産」の、その「母」が書いた自伝小説と知ってから、これは読むしかないと。そしてそして、読んでみると、もうとまらない。現代では考えられない、この時代だからこそのお話だけど、これはこうやって本人が書き残してくれなければ、流れ消えていってしまう人生の話。決して作ろうと思っても作れないお話。
「母の遺産」を毎週楽しみにして読んでいた時はこの「母」の存在にうんざりしていたが、その「母」がどう育ったかを描いた「高台にある家」を読み終わった今、当然ながら「母」の印象は変わった。そしてタイミングよく出版された「母の遺産」。もちろん購入。読まなければ!