紙の本
ほのぼのできる小説
2001/05/01 13:18
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:remi - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、最初の方を読み始めた時点で「おっ?」と思ってしまいます。最初に登場するのは松井マルオ(商社勤務)、三木橋ヒカル(フリー編集者)のふたりですが、ふたりは同性愛者です。その後も、男から女に性転換した平田たま代(美容師)、たま代の犬のアポロン(マルチーズ)、岩淵のぞみ(OL)、田辺菊江(菊チャン・小説家)、岡野さん(マルオの家の階下に住む女性)など、個性的な人間が次々に登場してきます。彼らの間でなされた「夏の約束」とはいったいなんなのか、またその「夏の約束」は果たされるのでしょうか?
とにかく、ほのぼのと読める小説です。本書に登場する人物たちみんなが、愛すべきキャラクターだからでしょうか。
紙の本
夏の日差しがあるとすれば、必ずそれには影がある
2001/01/23 11:50
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投稿者:青月にじむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
あっさりさらっとした作品で、鈴木清剛風の、一見何でもない日常のひとコマひとコマを切り取った作品。出てくる人たちはホモ(という表現が正しいのかどうかは分からない。でも、文中にはこの表現しか無かったりするのでこう書いておく)だったりトランスジェンダーだったり、心に屈託を抱えながらも「今」を生きていく。但し、そこに妙な気張りはなく、周囲に違和感を与えることは知りながらも淡々と自分の一日を過ごす、という感じだろうか。皆が「刹那的」で、今あるこの状態がいつまでも続くとは思っていないことは中心的人物であるマルオとヒカルの関係からも分かる。
キャンプに行こうという「夏の約束」を実行しようとするもその計画は頓挫してしまう。そこまでの当たり前の日常を、半歩違った切り口で描いてみせる作品。こういう関係って、触れたら壊れそうな部分があって、でも、緩やかに繋がっていて、この年代にありがちなものかなあ、とふと思った。
とっても女らしいトランスセクシャルのたま代も、事故に遭えばやっぱり「男性美容師」と新聞に出てしまい、収容される病室も当然男部屋、という、現実のつれなさを思い知らされてしまうくだりがなぜか好き。
何気ない日常の何気ないように見えるあれこれを、繊細なタッチで描いた秀作、とでも言えましょうか。
作品自体、夏の日のようにきらきらしながらもそれぞれにその日によってできる「陰」を持っていて、でも、その日も陰も自分のものとして淡々と生きるその空気感が気持ちいい。実は、分かってはいた筈なのに、読んでいる間この作者は女性だ、とずっと思っていたのだった。こういった「性的役割」がいかに根拠無きものかを思い知らされますな。
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いつか読もうと思っていた本。
芥川賞受賞作だったんですね。
主人公がゲイなのは知っていたけど、デブとは思いがけなかった…
会社員のマルオは95キロ。編集者で小柄な恋人のヒカルとは手をつなぎっぱなしでデートをする仲。つなぎっぱなしにする必要性をこっちは感じないけれど、二人で宣言するような意味があるのかな〜。
今は女性になった美容師のたま代や、ヒカルの幼なじみの小説家・菊江など、彼らを囲む女たちも、ちょっとヘンだったりする〜ゆるい友達つきあいが描かれていて、なかなか良い感じです。
もっともの悲しいのかと思ったけど、嫌なこともありつつ、滑稽な日常。
2000年発行。作者は1962生まれ。
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ゲイのカップルやトランスジェンダーなど社会的少数者が、ごく普通に描かれごく普通に生活している。肩肘張らない描かれ方が大好きです。
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芥川賞受賞作とは思えないほど(?)、さくさく読める。
ゲイのカップルを中心に話はすすみますが、男から女になったトランスセクシャルの美容師が出ています。
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さらっとした日常が最後までさらっと流れてく感じ みんなそれぞれに悩みや満たされない何かを持っていて、意外にみんな愛らしい感じで良かったかな
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恋人同士のマモルとヒカル。二人のやさしく流れていく日常を綴っている。二人はゲイのカップル。普通と“違う”関係を嘆いたり、隠すこともなく、ふわっとした文体で包み込んだその空気感がいい。終盤に込められたさりげない主張。まだまだ人から気持ち悪いといわれるホモセクシャルな関係を作者の感性で透明感を持たせた点が上手いと思う。
私の間違いでなければ作者は男性だと聞いている。なるほど頷ける。第122回芥川賞作品。
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偶然なのか、直前に読んだ【熟れてゆく夏】と正反対にある作品。
あちらが「純文学調」なのに、こちらは「口語調」。
肩肘張った自然描写など皆無で、だれでも書けそうな文体。
あちら直木賞、こちら芥川賞の違いが見事に分かる。
オカマ、ゲイ、ホモの奇妙な男を中心に、ちょっと抜けた女性達が絡む話。
かなり、変な交友関係だが、どちらが人間的かと聞かれれば、ウ~~ンと唸ってしまう。
普通の人間ってナンなのよ・・・っと問いかけている作品。
と書くと、深そうに思われるが、全然深くない。
でも、やっぱり深い。
そんな難しいテーマでも、こうやって口語調に平易な言葉だけで書けるでしょう?と気付かされる。
じゃあ、オススメかというと、コレもウウ~~ンと唸ってしまう。
読んでいて、コレは男性が書いた作品だと信じて疑わなかった。
ところが、作者の写真を検索していると、見つからない。
ぼやけた女性の写真が一枚あるだけだ。
「千夜」というと、ひょっとして女性?
急に、確信が揺らいでしまった。
ようやくその正体が判明した。
男性なのに、それに違和感を抱く、性同一性障害を持った人らしい。
どうりで、不思議な文章だと思った。
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ゲイの人たちを数多く知っているわけではないが、彼らの生活がとても「リアル」に感じられる。へんに気負っていないところがいい。
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「八月になったらキャンプに行こう」そう約束していたマルオたち。発起人はオカマちゃんのたま代だ。マルオと彼を取り巻く心優しい人々の、ある夏の物語。
主人公のマルオはゲイでヒカルという恋人がいる。堂々と手をつないで町を歩く。小学生に卑劣な野次を飛ばされたりするが、マルオは黙って受け流す…。
あまりにも淡々としすぎて、読んだ後ちょっと呆然としてしまう。 “差別”というテーマにしてはおとなしすぎるし、本当に、起伏のない日常を描いたって感じ。この中にどんなメッセージがあるのか、私には分かりません。
☆芥川賞
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芥川賞受賞作。
さくっと読めました。
わりと明るくてさっぱりしていて、嫌いではないかな。
マルチーズのアポロンかわいい、と、ただそればかり考えていました。
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装丁と題名だけだと、小中学生くらいの子どもの話なのかな~と思ったんですが、読んでみたら全然違うので驚きました!
ゲイ、トランスジェンダー?女装家?、売れない作家、など何となく世の中のド真ん中本流から外れてしまったような人たちが出てきます。類は友を呼ぶ・・と言っちゃあいけませんよ。
彼らは、そのことを取り立ててマイナスに思うわけでもなく、「普通のこと」として生きていて。
トイレの個室の壁にあんなような落書きをするサラリーマンっているんだな・・・て違う所で、ふ~ん。って意外に思いました。
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途中、男二人の会話にちょっぴり涙しそうになったけれども、終始よくわからない空気。いわゆる複雑で繊細なのでわからないということよりも、記述の量と描写が薄すぎて、想像が膨らまずに、よくわからないという感想。なーんかこの惜しい感じ、ちょっぴりもったいない。
でも2000年にゲイカップルの小説を書くってセンセーショナルなことだったんだろうか?とかそっちのことを考えてしまった。
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気になって早速読んだ かつて芥川賞の「夏の約束」152頁の小品で明るく軽いけど実はとても重い本だった。恥ずかしながら てっきり女性だと思っていたけど、外見は違っていて中身は女性の福岡出の作者さんだった。そしてこの本を芥川賞に推した人たちの識見と言うか時代と言うか多分 昔だったら無かっただろうな と感じながら読了した。それでも今でも住み難いのでしょうねぇ!とりわけ偏見の強い国だからなぁ。
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各お話の最後の方に大きめの出来事が起こるだけなので感想の言いようがないのだけれど、何となく和むような、でも根っこの方はちょっと寂しいような雰囲気が好きです。自分の欠点や世間からの批判対象となる部分を受け入れられてはいる。友達や恋人、家族に全部認めてもらおうとは思っていないけれど、すれ違うと孤独も感じる。そのリアルな距離感を、温かく描いた作品だと思います。
読み終わってから気付きましたが、表題作で芥川賞をとってたんですね。