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ワンダフル・ライフ バージェス頁岩と生物進化の物語 みんなのレビュー

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みんなのレビュー51件

みんなの評価4.3

評価内訳

51 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

「進化とは移ろいゆく環境への適応であって、進歩ではない」

2010/01/17 20:36

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る

ほとんど説明する必要もないほど有名な進化論の代表的論客グールドがバージェス頁岩について解説した大著。

600ページ近いのだけれど、とても面白くてもっと読んでいたくなる。確かむかしNHKスペシャルで機械仕掛けのアノマロカリスを製作していて、面白いものを作るなと思っていたけれど、これらの奇怪動物から導かれる進化の歴史の本質に迫る、というグールドの試みを当時は全然知らずに見ていたのだった。

アノマロカリスやオパビニア、ハルキゲニア等々の面白い形の生物などについては本書で詳細かつ具体的な解説が行われている。付属肢だとか生物学の基礎的な分類について他ではあまり見ないくらいきっちりと書かれているので、このほかのバージェス動物ものを読む前にこれを読んでおくのが良いように思う。

それだけではなく、グールドの論述は人間中心の思考についての批判を伴っていて、ただ科学的に興味深い、というだけではない広がりがある。

本書でのグールド進化論のひとつの特徴は、偶発性の強調にある。「悲運多数死(デシメイション)」というキーワードが示しているのは、進化の歴史において、どの種が生き残り、どの種が絶滅するかはほとんど偶然にゆだねられているということだ。その当時の生態系で優位に立っていたはずの生き物が絶滅し、さほど目立たない位置にあった生物がその後繁栄するという歴史は、当時生物学者がいたとしても判断が付かないような偶然に左右されているという。これは、生物の形態、構造に科学的な法則による優劣はつけられない、という主張だろう。

グールドはまた、進化のよくある説明のなかで漏斗型の図を示し、過去は多様性が少なく、現代に近づくに従って生物の多様性が増していく、というイメージを喚起する図像を一貫して批判している。バージェス動物群の存在は、古代のある時期においては、むしろ現代よりも生物の基本デザインは異質性が高く、その後の悲運多数死において基本デザインのバラエティは減ってしまった、というグールドの主張を根拠づけるものと見なされている。生物種の多様性は漏斗型ではなく、底辺が広大なクリスマスツリー型だ、という。

もうひとつ、人間が生まれたのは、進化の繰り返しの結果の必然であり、それは人間という種が優秀であるからだ、というような俗流進化論への批判をグールドは繰り返す。彼はこう書いている。

「進化とは移ろいゆく環境への適応であって、進歩ではない」

本書では、科学的議論が人間中心主義へと収奪されることへの批判が大きな核として存在している。人間は偶然の産物であり、生命の歴史をリプレイしたら、人間は生まれなかったかも知れない、というグールドの主張は、進化の歴史を人間の誕生へと収斂させることへの批判だ。

こうした科学のイデオロギーへの収奪、というのはどうもグールドの大きな関心のようで、「人間の測りまちがい―差別の科学史」という本では科学が人種差別の根拠として用いられた歴史を辿っている。本書ではバージェス動物群を語りながら、科学を自分の観念なり思想なりに押し込めてしまう愚を一貫して批判している。


もちろん、そうしたグールド自身の主張がちょっとうるさいという人もいるだろうし、悲運多数死や生物デザインの異質性についての批判も多く(なんせ本書での英雄扱いのコンウェイ・モリス自身から後に批判されている)、学説としてはあまり受け入れられていないみたいなのだけれど、それをぬきにしても、バージェス動物群発見の物語やハリー・ウッティントンたちのバージェス動物群見直しにまつわるプロセス等を詳細に語っていて、バージェス動物群にまつわる人々のドラマとして、とても楽しめるノンフィクションであることは間違いない。

また、バージェス動物群を既存の動物門へと押し込めてしまったウォルコットがどうしてそのような間違いの多い新種記載をしてしまったのかについて、一章を割いて敬意を払いつつ同情的に語っているの点は本書にさらなる厚みをもたらしている。

この本に対する批判や新説がいくつもあるようで、進化論をめぐる議論もとても面白そうだ。

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紙の本

古生物学研究の知的現場に立会う様な、興奮する様な面白さと魅力

2003/03/30 20:12

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 生物学に関する本の題名が、「素晴らしい人生」とはどういうことかと思ったが、「驚嘆すべき生物」という意味であった。「バージェス頁岩と生物進化の物語」と副題が附いている。カナダのヨ−ホ−国立公園内バージェス頁岩に残された、5億7千年〜5億1千年前のカンブリア紀にのみ存在する、生物大爆発とよばれる多種多様な無脊椎動物の化石の、解剖学的研究に基づく同定、系統分類の誤りと訂正の歴史、生活様式と生態、を紹介している。本書には、古生物学研究の知的現場に立会う様な、興奮する様な面白さ、魅力が有る。そのほとんどが絶滅してしまう、多様性というより異質性という方が適切な、形態が様々に異なる、異様な生物群が、カンブリア紀には存在したのである。それらは、現存する生物の系統とは全く異なる、分類学上の独自の門をなしていた、と考えられている。原本発行後の研究の進展に拠り、この本に書かれている内容も、 その後かなり修正が必要になってきてるそうだが、知的感動は変わらない。

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紙の本

センス・オブ・ワンダーを感じられると思います

2017/04/28 21:39

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:コスモス - この投稿者のレビュー一覧を見る

生物進化について熱心に勉強または研究している方には、この本に書かれていることが当たり前に感じられるか、それとも間違っているように感じられるかもしれません。
しかし、生物進化について知らないことが多い人がこれを読めば、今までの常識を覆されることに間違いなしでしょう。

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紙の本

タイトルが全てを語っている

2002/07/04 09:00

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投稿者:みゆの父 - この投稿者のレビュー一覧を見る

タイトルが全てを語っている、分厚く、専門用語にみちあふれた一冊。バージェス頁岩からみつかった化石群をめぐって繰り広げられたドラマ、この本の表紙を見ればわかるトンデモな姿をしたカンブリア紀の生物たちの生態、ダーウィン進化論をめぐる生物学者たちの論争、そういった話題がてんこ盛りになっているので、読み通すには根気がいるかもしれない。

しかし、この本は単なるノンフィクションではないし、単なる専門書でもないし、単なる教養書でもないし、「断絶平衡説」という自説を宣伝するための単なる伝道書でもない。いわば、それらのどれでもなく、同時にそれら全てでもある類の本なのだ。

それではこの本のメッセージは何か。答えは単純、それは「ワンダフル・ライフ」だと僕は思う。〈ワンダフル〉は〈奇妙な〉で〈ライフ〉は〈生物〉だから、「ワンダフル・ライフ」は「奇妙な生物」と理解する(訳す)ことができる。たしかにバージェス頁岩からみつかったのは先カンブリア期の「奇妙な生物」だったから、これは正しい理解だろう。

ただし〈ワンダフル〉には〈驚異の〉という意味もあるし、〈ライフ〉には〈生命〉という意味もある。つまり「ワンダフル・ライフ」は「驚異の生命」、逆に言えば「生命の驚異」を意味している。そう、生命はそれ自体で驚異なのだ。先日惜しまれつつ亡くなった生物学者グールドさんがこの本で伝えたかったのは、そんなことだったのではないだろうか。

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紙の本

カンブリア

2023/07/21 14:49

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:レムロム - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず、これは文庫本です。ですが、十分な情報量があるので、カンブリア紀の生物について詳しく知りたい人にはうってつけだと思います。

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紙の本

カンブリア紀の爆発への誘い

2002/07/10 12:32

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:もぐらもち - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この本の魅力はグールドさんによる地質年代、節足動物、化石から生物を復元する方法についての講義、そしてカンブリア紀の奇妙奇天烈生物の精緻な復元図にあるのではないでしょうか。まるで、古生物学を知らない読者にとって詳細な説明は知らない専門的な世界をのぞき見るようでわくわくします。
 およそ5億7千年前、生物の多様化が集中して起こりました。これをカンブリア紀の爆発というそうです。突如として複雑な形態をした硬い殻を持つ多細胞動物が登場したのです。バージェス頁岩はこの爆発的進化の直後、およそ5億3千年前の時期で軟体性の動物群の化石を産出します。この化石群によって生物の多様性が最大になったのがカンブリア紀であり、偶発的なできごとによって、一部の系統の生物だけが生き残ったことが分かるのだそうです。これをグールドさんは悲運多数死と呼んでいます。「生物は人間に向かって一直線に進化したのではない。人間が存在するのは全く偶発的なできごとだ。」というのが、グールドさんの主張です。この考え方は私にはとっても受け入れやすいです。「生物は人間に向かって進化しているのだ!」なんていわれると、そんなバカなと思ってしまいます。やおよろずの神を受け入れる日本人だからでしょうか。
 生物の進化についてはまだまだ議論が分かれるようです。バージェス頁岩の研究もまだまだ続いているようです。これからもカンブリア紀の研究結果から目が離せません。

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紙の本

不思議な化石群をめぐるドラマ

2002/01/27 05:05

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:トリフィド - この投稿者のレビュー一覧を見る

 一時期テレビでもよく取り上げられていたので、最近ではもうみんなバージェス頁岩を知っているのだろうか。これは、(マニアもいるらしい)アノマロカリスやハルキゲニアをはじめとする、バージェス頁岩の奇妙な生き物たちを巡る本である。

 カナダのバージェス頁岩から奇怪な化石の数々が発見されたのは1909年。しかしそれらが正しく解釈されるようになるまでには、長い時間がかかった。そして結論として出てきた生物の姿は、既存の分類体系のどこにも収まらない奇妙もの、カンブリア紀の異質な生物の数々である。

 本書は、バージェス化石の波乱に富んだ研究史をたどり、さらに生物の進化を解釈する上での、バージェス動物の持つ意味を解き明かしている。

 話題ははかなり専門的な領域にまで及んでおり、正直なところ、もう少し簡潔に書けなかったのかと思わないこともない。しかしがんばって読めば、とても読み応えのある本である。

 科学はつねに進歩する。本書が書かれた後にも、この分野の研究は進んでおり、本書で語られている事柄の中にも覆されたものもあるそうだ。その後の話は、『カンブリア紀の怪物たち』で読むことができる。

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追悼コメント

2002/05/21 18:57

1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:松浦晋也 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「グールド」で最初に思い出すのが、ピアニストのグレン・グールドという私は、決してスティーブン先生の良い読者ではなかった。それでも「ワンダフルライフ」は読んでいる。感心しながら読んだ。
 この本の魅力は 絶妙な語り口はあるにしても、なによりも題材——奇怪にして魅力的なバージェス生物群だろう。それは「あり得たかも知れないもう一つの生命」という夢を我々に見せてくれる。スティーブン先生はなによりも、どこのツボを押せば読者を生物の世界に招き寄せられるかを熟知していた。その影響力たるやたいしたもので、tanomi.comでアノマロカリスのぬいぐるみが人気を集めたときには心底びっくりした(NHKの科学番組と言うには感傷的過ぎるアレはとりあえず忘れよう)。
 「あり得たかも知れないもう一つの生命」へのあこがれは、そのまま宇宙生命への興味とつながるはずだがスティーブン先生はそこには踏み込まなかった。一歩手前で留まったのだ(なにの?)。しかし留まる必要を感じない人種の中には「ワンダフルライフ」に影響されて、そっちに行ってしまった人がいる。清原なつののマンガ、その名も「ワンダフルライフ」は母星を失い地球に漂着した宇宙人のおとうさんと地球人のおかあさん、ハーフの娘という家族が織りなすコメディだ。おとうさんは滅んでしまった自分の星の生物を復活させるプロジェクトに寄付を続けている。
 滅んでしまった生き物を思って空を見上げるおとうさんの姿は、ちょっとだけスティーブン先生を思い起こさせる。的確な語り口の後ろには、常に生命をいとおしむという感覚があったように思えるから。

 享年六十。「長生きして欲しい人ほど早く死ぬ」というジンクスは、また一つ実例を増やしてしまった。合掌。
(松浦晋也/ノンフィクション・ライター)



■スティーブン・ジェイ・グールド氏が5月20日急逝されました。ご冥福をお祈りいたします。(bk1)
■追悼・スティーブン・ジェイ・グールドはこちら

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2004/10/30 19:51

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2004/10/31 20:28

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2004/11/30 06:35

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2006/06/18 22:43

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2006/10/11 06:51

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