- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
無邪気さ故の残酷さ
2010/01/15 20:34
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
乙一作品を読むのはこれが初めて。だからわたしにとってはハジメマシテの作家さん。しかしその存在を知らなかったわけではない。いやむしろ、こぼれ伝わってくる情報が多すぎて敬遠していたというべきだろう。
乙一といえばホラー。わたしの中で勝手に形成されたホラーイメージが強過ぎて、手に取るのをずっと躊躇っていたのだ。だってホラー苦手なんだもん。
しかし本書は乙一が16歳の時に執筆したデビュー作ということでぐぐっと勇気を振り絞って手に取ってみた(大袈裟)。読むのはもちろん太陽燦々のまっ昼間をチョイスしたけども。
そうしたら! 驚いたっ! 本書に描かれる「怖さ」とは、わたしがイメージしていたそれとは全く違っていたのだっ!!!
ホラーといえば、幽霊やお化けが出てくるものだと思い込んでいた。だから乙一の作品もてっきりその類だと…。
しかし本書で描かれているのは生身の人間の怖さだ。それも、『源氏物語』のように生き霊になった人間の恐ろしさではなく、日常生活をきちんと営んでいる、生き霊にもならない「普通の人間」の恐ろしさだ。
冒頭、本書の語り手であると思われる「わたし」こと五月ちゃんは、9歳の夏休みに友だちの弥生ちゃんに突き落とされて死んでしまう。不審な物音に気付いた兄の健くん(小学生)が弥生ちゃんの元にやってきて、五月ちゃんの死体を見つける――「五月ちゃん、死んでるじゃないか。弥生、泣いてちゃわからないだろ、何があったのか話してみなよ」。
弥生ちゃんは言う――「あのね……いつもの枝でお話ししてたらね……五月ちゃん滑って落ちちゃったの」。
「そうか、滑って落ちちゃったのか。それじゃあ仕方ないさ。弥生はなにも悪いことなんかしてないだろ、だから泣くのはやめなよ」
この会話がもうとてつもなく恐ろしい。友人を殺しておきながら、それをあっけらかんと隠す9歳の少女。故意ではないからと――まるで不注意でお皿を割ったときのように――「仕方がない」と言う少年。この無邪気さが恐ろしいのだ。
そして更に恐ろしいことに、ばれると困るという理由で幼い兄妹は「わたし」の死体を隠すことを決意する。
これが冒頭のあらすじ。そしてここから、兄妹は死体を隠しはじめるのだが、この時の様子がまた淡々としていて恐ろしい。
幽霊も生き霊も登場しないけれど、とにかく恐ろしいのだ。無邪気さ故の残酷さ――それがありありと描写されている。
本書には表題作の他に、『優子』というある心を病んだ人間についての短編が収録されている。表題作はところどころにちょっとした荒さが見えないでもないけれど、『優子』は素直に巧いと感じた。そして…やられたっ!!とも。
『夏と花火と私の死体』収録作品
・夏と花火と私の死体
・優子
紙の本
語り手は死体
2020/01/14 12:29
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
死体となった少女の視点め語られる物語という段階ですごい。それを破綻させずに最後まで持っていった構成力がすごい。
最後の最後まで不気味だった。
紙の本
衝撃のデビュー昨
2019/02/19 11:01
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:chieeee - この投稿者のレビュー一覧を見る
季節外れなこんな時期に夏のお話。ちょっぴり不気味なホラー。
短編集2編。
最初のお話は普通の年齢ならば、怖く感じなかったかもしれませんが、小学生達が主人公のせいか、妙に不気味に感じた。
末恐ろしい大人になりそう…。
2編目は、精神的なホラー作品。
主人公と一緒に怪しんだりはするものの、そのままでは終わらなかったのはいいとしても、幸せになれない結末なのに、不思議と爽やかに感じてしまった。
でもこの手の本は、昼間に読みたい。
寝る前にはやっぱり不気味です…。
紙の本
死体はどこに……
2002/04/10 13:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
小野不由美が解説で言っているとおり、作品の優劣を作者の年齢で判断するのはどうかと思う。思うのだが、これを書いたのが当時16歳の高校生だったってのは、やっぱり驚くよなぁ。「ワープロの練習のために書いた小説がほめられて」小説家になったんだとか。う〜ん、すごい。構成力、描写力ともに、申し分なし。多少稚拙なところもあるにはあるが、たいした瑕ではなく、それがかえっていい味を出している。一応ホラーなんだけど、あんまり怖くないというか、すっとぼけたような、爽やかな感じさえする話だ。似たような話が思いつかないほど独創的。同時収録された「優子」もまずまずだが、表題作には及ばない。しかし凄いことに変わりはない。ヤング・ノベルだったからといって読まないのは損だ。