ツヴァイク全集 ５ 人類の星の時間 みんなのレビュー

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投稿者：塩津計　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

歴史を題材にした短編集の中で、この一編だけは詩の形式をとっている。ミハイル・ペトラシェフスキーが主宰する空想的社会主義サークルのサークル員となったがために、1849年に官憲に逮捕され、死刑判決を受けたドストエフスキーがサンクトペテルブルグの刑場に引き出され、正に銃殺隊によって処刑される直前に皇帝（ツアーリ）の特赦がなされ、生存が許される、それまでのドストエフスキーの心のうつりかわりを綴ったものである。私は、これほどリアルで迫力のある文章を他に知らない。その後ドストエフスキーはシベリア送りとなり、兵役にも就くが、この時の実存的体験が契機となって作風は大きな変貌を遂げたとされる。諸君に一読することを薦める。