投稿元：
レビューを見る
分裂病を脳の病気と捉えるのではなく、実存の問題（ものすごくおおざっぱに言うならば、心の問題）として捉えていく本。それぞれの具体的な症例はおもしろかった。この手の本はやはり肌に合う。研究書というよりも小説やエッセイのつもりで読んだ方が楽しめるように思う。
ただしレインは現在、精神医学界では全く相手にされていない。だがそれでも私には、レインが完全に死んだとは思えない。彼の考え方は医学よりも文学に近い。「病気」として薬物治療するのではなく、ひとりの人間の抱えきれない傷に近づいていく。彼が扱っているのは、完全な狂気ではないのだろう。《病んだ正気》とでも言うべきものに彼は迫っているように思う。確かにこれは医学とは呼べないかもしれない。しかし、医学が病気と認定すらしてくれないような、どっちかずの苦しさ、その曖昧な苦しみを救うために、レインはまだ生きているように思う。（けー）
投稿元：
レビューを見る
なぜか今更…レインの初期作品。サルトルなど、実存主義が援用されて、なんとなく時代を感じる。が、統合失調症（分裂病）におけるロジックの存在を、＜真の＞自己・身体を保護・隠蔽する＜にせ＞自己・身体の多用と、その両者の関係性の崩壊・にせ自己による自己への浸食など、今日でも頷ける議論ではあると思う。日常的に人びとが（私も）程度・内容の差こそあれ、多かれ少なかれやっていることを、すくい上げ、論理づける作業として、これは確かに革新的だったのだろう…と思わされる。現代でも、意義アリ、かな。
投稿元：
レビューを見る
思想というよりも、臨床心理学の名著。今ではすっかり内容が古くなってしまっていますが、「実存主義的」アプローチが私には大変面白かった。フロイトやユングより、レインの考察の方に親しみを感じていたのでした。
投稿元：
レビューを見る
大学時代卒論の資料にした。
※データは飛んでしまったけど・・・。
確か、八重洲ブックセンターで購入したはず。
投稿元：
レビューを見る
もう文学趣味ではなく実際の必要としてレインを読まなければならなくなった。実際の必要があらためてレインを呼び戻した。
ネットで古書を再入手し、ページの行きつ戻りつをくり返し、棒線と書き込みで思考の定着と据え置かれた疑問をなぞりつつ、脳裏にこびりついて離れない何人かのあの人この人の仮名をそこに残した。
あまりにも美しい「廃園に立つ影」最後のパラグラフを何度もかみしめる。
投稿元：
レビューを見る
「反精神医学」の名著。存在論的に「狂気」を追求した手法は、現象学へも遡る。「狂気」を人間の一様態としてとらえ「ラべリング論」は、正常と異常の境界をも取っ払う。ただ、家族の捉え方は、後にフーコーによって批判的継承され、資本主義社会の問題として修正される。
投稿元：
レビューを見る
精神が他人との関係性によって、ぶれていってしまう過程が、実際の分裂病になった患者さんの体験と症例を元に書かれていて読みやすかった！そして読んでる僕本人と他者との関係性や、感情とか久々に考えたなぁ・・・！
投稿元：
レビューを見る
アイデンティティを失った者の防衛機制としての分裂病について。ニセの自己の創出から、ニセモノ間の正負の対話まで、空っぽの自己をいかに守るかを実際の症例をもとにかなりの精度（私には正当に思える。）で解釈を行っている。
フロイトの理論を用いず、実地を元にしたもっと現実的で、自然な解釈を行っており、共感を持てた。
私自身も自己が空っぽなこともあり、分裂病質の人間こそが自然であるように思え、逆に無根拠にも自己を確定させる人間たちへの関心が増した。
