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紙の本
民主主義の 歴史と理念と 現状と
2023/08/07 21:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:清高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
1.内容
本書刊行時の1977年においては、世界中のあらゆる国で民主主義が制度化されているが(本書を読めばわかるが、当時のソ連流の共産主義も民主主義と無関係ではない)、それがどのように成り立ち、今後どうなるかを記した本。ギリシアのポリスや、イギリスの立憲主義は、元々民主主義的なものではなかったが(どちらも有権者になるには制限があったから)、それら古の制度や理念をも取り込んで近代民主主義が完成した。
2.評価
(1)近代の民主主義が、民主主義的なものではないものを用いて成り立っているという内容が興味深かった。日本国憲法第43条第1項には「全国民を代表する」とあるが、この表現が実は民主主義的でないことがわかり、目からうろこが落ちた。
(2)民主主義の歴史のみならず、民主主義の何たるかがわかるところがある。特に第2章2b「多数決の原理」のところ。多数決は擬制であり、「少数者の権利(略)の尊重と組み合わされてはじめて機能する」(p.142)ものであることは肝に銘じた方がいい。
(3)アメリカやヨーロッパの民主主義のみならず、共産主義や旧植民地における民主主義を検討していることが、とりわけ現在から見たら新鮮であった。
(4)以上の通りであるから5点とする。
紙の本
初版から30年経っているが今でも「まだ?」「また?」と思わせる。
2008/02/18 10:43
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「民主主義」の歴史を振り返り、そこに共通する理論を考察し、今後の展望を考える。「民主主義とは何なのか」を読みはじめたら、この本がかなり引用されていたので探して読んでみた。初版から30年経っているが、読めば驚くほど「まだ?」「また?」と思う記述が見出される。一度は真面目に「民主主義のなんたるか」を自分で考えてみようと思う方は手にとって損はない本だと思う。30年前の状況と現在を比較しながら読むのも興味深い。例えば:
・国会中継の討論を空しく聞きながら、こちらも読んだのだが、討論と説得が難しくなった政党性の議会でも「論点を明確にし、責任のありかを問う」場としての価値はある、などと書かれているのを読むと、確かにそういう位置づけもある、と思う。責任所在についてあまりにもあいまいな答弁を聞いていると、それも怪しくなっているか、と感じるけれども。
・民主主義が「大衆化」「複雑化」することで白か黒、善いか悪いかに陥りやすくなること。生活が不安になると「・・そういうときこそ、いちばんわかりやすい荒唐無稽のデマゴーグが大衆の支持をかっさらういいチャンスが生まれる」と、歴史的な例を引用して説明される。まだ記憶に新しい「民営化、賛成か反対か」選挙を思い出させる。(念をおすが、この本は初版1977年である)。「一気に権力掌握の機会を作ったのは恐慌であった。大衆の生活不安のさなかに、このひどい状態になったのは、すべてユダヤ人が悪いんだと単純明快に割り切って見せて、ナチスが権力を握ればすべてはよくなるという訴えかけで大衆の支持をかっさらい、議会の多数を獲得したからであります。」と続く文章は、現在の時点でも、なんとも不気味に響くのではないだろうか。
終章「民主主義の展望のために」の数ページのなかに、著者の意見は集約されている。著者は、必ずしも「民主主義しかない」とは言っていないが、「民主主義に根本的な一つの特徴、ほかに求めがたい長所があるとすれば、それのみが、人間が政治生活を営むうえに、人間の尊厳と両立するという一点であります(p208)」という理由で支持する。ほぼすべての人間が「尊重されている」と感じ、権力をひっくり返す可能性のある要因が少ない状態に近づける考え方、という視点で、他の「主義」も各自、検討してみてもいいかもしれない。
過去の歴史の中での民主主義を振り返り、原理を検討してきた著者の結びの言葉を引用しておく。「求められているのは近代民主主義がどういうものであり、どういう特徴と困難とをもっているかの自覚であり、当面する諸問題を受けとることにおいてそれを解決に役立てる勇気であり、そのことを通じて民主主義の機構と作用領域とを組み直して行く叡智であろうと思います。(p207)」
岩波新書黄色版の1、という番号を付されているというのも、出版の意気込みが伝わってくるような一冊であった。まだ入手可能なのは嬉しい。
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