紙の本
日本人にはあまり知られていない中央アジアを彩った歴史を克明に描きます!
2016/09/20 08:14
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、講談社現代新書の新書東洋史シリーズの第8巻です。ユーラシア大陸を二分する北方の蒼き狼たちの遊牧草原国家と南方のオアシスを軸につくられた都市国家。その両者の対立・抗争と共存の歴史が、中央アジアを彩った歴史です。ある時には、トルコ化し、ある時はイスラム化する草原とオアシスの民について、その歴史を概観する最高の書です。
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中央アジアと言われて真っ先に浮かぶのは、モンゴル人です。彼らの遊牧生活に漠然とあこがれを抱いていた私は、さっそく本書を購入したわけです。モンゴル人こそは、元祖モバイラーだと思います。モンゴル人がなぜ、あれだけの強大な軍事力を誇ったのか、が本書を読み進むうちにわかると思います。この本は中央アジアにおける民族の入れ替わりが詳細に書かれているのと、入門書としてお勧めは巻末にある親切な文献案内、それと索引です。本当は西域史に非常に興味があるのですが、この本ではあまり詳細には書かれていません。しかし、それを補ってあまりあるモンゴル人の西進が書かれいるところが良かったです。とくに原因となったオトラル事件は、すさまじいですね。特にオトラル事件の首謀者イナルチュクが捕らえられ、サマルカンドでその目と耳に溶けた銀を流し込まれて虐殺された、とあるのはチンギス・ハーンの恐ろしさに震えが来ます。とにかくモンゴル人というのは、定住しないものとばかり思いこんでいたのですが、そうでもないんですね。征服先で、農耕を営み、定住化する民もいたとのことです。本書を読んでことさら感じるのは、我が日本が世界史的にみても極めて例外的な国家だということ。一度も他民族に征服されず、日本独自の文化が発展した国ということだけでも珍しいですね。まあ、アイヌとかマイノリティーを征服していったわですが、それにしても国民のほとんどが日本語だけをしゃべる、というのはちょっと珍しい気がします。次は日本人的思考法の元凶を考えるような本を読みたいな、と感じました。
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まず出色なのは地図の豊富さである。新書という限られたページ数・面積にもかかわらず地図をふんだんに掲載している。中央アジアという我々日本人からすると若干なじみの薄い地域が対象であるだけに、その時代・時代に合った地図で説明してもらえると理解も深まるというものだ。また系図も多数掲載しており、複雑な血縁関係をわかりやすくしている。さらに写真版も適度に配置され、視覚による理解の手助けとなっている。
さて、いったい「中央アジア」とはどこなのだろう。「アジアの中央部」というその言葉通り明確に示すことの不可能な用語なのだそうだ。そこで本書では次のように定義している。
「東のゴビ砂漠、西のカスピ海、南のコペト・ダウ、ヒンドゥー・クシュ、崑崙の山々、そして北のアルタイ山脈とカザーフ高原に囲まれた横長の長方形の地域。」
この地域にはいかに多くの民族が勃興を繰り返してきたか初めて知った。いわゆるモンゴル族やウイグル族だけではなかった。草原の民がいて遊牧国家が発生した。オアシスの民はオアシス国家を形成した。国家間で交流が始まると商取引や抗争が起き始める。トルコ化が起きる。そしてイスラム化も始まる。あるときモンゴルが大帝国を支配し、やがて衰える。ロシア革命後、諸民族はそれぞれの共和国を足場に次々とソビエト連邦に組み込まれ社会主義国家の道を歩む。そしてソ連崩壊後、現在はそれぞれ独立し独自の路線を歩んでいる。
この本が書かれた時期は1977年でありソ連崩壊前なので、そこまでの言及がないのが残念である。その後の各共和国の歩みを著者はどんな眼差しで見ているのであろうか。
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中央アジアの通史。最早古典の域に入るが、とりあえず一冊で古代から現代までを概観できる簡便さがある。読む上では、特に後半部分で人名と地域名をしっかり把握し、記述についていく必要があるだろう。地図を見ながらの読書が吉か。