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紙の本
歴史のダイナミズムを描く、しっかりした思考の筋道
2001/03/20 00:16
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:鍼原神無〔はりはら・かんな - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は、昭和の日本で、まだ「暗黒の中世」って西欧史のイメージが一般通念に遺っていた頃に書かれたものです。
「歴史書は、結論よりもその結論が導かれた思考の筋道こそを読むべき」と言われますが。中公新書の57番って若い番号の『正統と異端』が、今でも版を重ねているのは、しっかりした思考の筋道が、普通の読者向けに平易に説かれているからでしょう。
この本で説かれているのは「西欧の中世初期から盛期中世にかけてのローマ法王権のと皇帝権の確執が後の西欧社会を準備した」って観点です。
「アヴィニョンの捕囚」などで低迷していた法王権が、グレゴリウスの境界改革を経て、皇帝権と張り合う型で伸展。法王権が皇帝権を圧倒するかに思われたときに、両権威の下で伸長していた中世的地方権力が後の絶対王権への道を歩みはじめていた。
図式的に要約しちゃうと、とても簡単。あーそーか、ってなもんですけど。
堀米氏の記述は、法王権の進展に伴う「正統と異端」のもんだいを、豊富な事例と適確な要約とで分析してみせてくれます。ヨーロッパ史のダイナミズムの一断面の活き活きと描写が読めます。
「ヨーロッパ精神の底流」については、最近では堀米氏の時代よりも、更に深層に切り込んだ歴史書、一般向け概説書でも珍しくはありません。
それでも「結論が導かれた思考の筋道こそを読む」楽しみを求めて、この本を読む価値はあります。きっと学説史を知識として知るよりも、深い読書の悦びを普通の読者でも味わえることと思います。
極、個人的希望としては、堀米氏の他の著作もいろいろ復刊、再版されてほしいものと願っています。
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