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[ 内容 ]
国家神道は、近代天皇制国家がつくりだした国家宗教であり、明治維新から太平洋戦争の敗戦まで八十年間、日本人を精神的に支配しつづけた。
本書は、国家神道の成立から解体までの過程を詳細にたどり、その構造と思想を分析して本質的性格を明らかにすることによって、神道が日本人にとっていかなる意味をもったかを追求する。
[ 目次 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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国家神道の人為性を指摘して、それが神道の可能性を抑圧したことを批難。
歴史的な流れがつかみやすくて良いけれど、意外に主観的だった。書かれた時代に即した問題意識なんだなと。
国家神道体制が成立していった原因にはあまり深入りしていない、というかすくなくとも思想的必然性はなかったという論調。政治的な方向からたどっている感じ。大体、国家神道に内実はなかった、と評価しているから当然だが、物足りないとは思ってしまう。
特に形成期以降には神道側の人間の動向については触れられず。宗教官僚としてばっさり。
幕末明治初期の、神社・仏教と民衆との関わりが複雑。ややこしい。
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「国家神道」村上重良著、岩波新書、1970.11.27
230p ¥150 (2017.10.15読了)(2017.10.12借入)(1971.09.20/2刷)
島崎藤村著『夜明け前』を読んだとき、国学が王政復古の呼び水となったことを改めて認識しました。だけど、それが、廃仏毀釈とどう結びつくのかがよくわかりませんでした。
そこで「神々の明治維新」安丸良夫著、「本居宣長」子安宣邦著、の二冊を読んでみました。
国学というのは、儒教や仏教が日本文化に影響を与える前の純粋日本文化を研究する学問のようです。本居宣長は、『古事記』の読み方を確定することにより、日本を探り当てたようです。
明治維新で、王政復古が成り、国学思想に心酔する人たちが実権を握った藩で行われたのが、廃仏毀釈でした。明治新政府の主導で行われたものではありません。
純粋日本を復活させるには、仏教は邪魔である、ということです。
廃藩置県がおこなわれて明治新政府の考え方が浸透することによって、廃仏毀釈運動は下火になったようです。
王政復古、天皇親政、祭政一致、を目指した明治政府は、神社の整理統合を行い主要なところは、政府の直轄にしました。
明治政府が、国民統治のために考えたのが、国家神道です。中身は、明治憲法と教育勅語です。教育勅語には、儒教の思想が入っているので、大和魂を語れるのか、と思ってしまいますが。仏教、儒教には思想がありますが、神道は、儀礼であって、思想ではありません(?)
明治憲法と教育勅語で天皇制の正当性を信じてもらえば、それでよかったのだと思います。太平洋戦争の降伏条件も国体の維持でした。敗戦で、明治憲法と教育勅語はなくなりましたが、天皇制は残り、天皇に対する畏敬の念も残っています。国家神道の役目は十分果たされたのではないでしょうか。
【目次】
まえがき
序説 民俗宗教としての神道
Ⅰ 神道のなりたち―国家神道の前提
1 原始神道―神社神道の起源
2 古代の紳祇制度―皇室神道の成立
3 神仏習合と神道説の形成
4 近世の神道―民間神道と教派神道の成立
Ⅱ 国家神道の形成
1 神仏分離と神祇官再興
2 廃仏毀釈運動
3 国民教化政策
4 祭祇と宗教の分離
5 教派神道の編成
Ⅲ 国家神道の思想と構造
1 国家神道体制
2 国体の教義
3 宮中祭祇と神社祭式
4 神職制度と神社の経営
5 天皇制下の創建神社
6 神祇院の設置―国家神道の絶頂期
Ⅳ 国家神道の解体
1 神道指令と天皇の人間宣言
2 神社本庁の設立と神社の復興
結び 国家神道の本質と役割
参考文献
●民族宗教(7頁)
民族宗教は、もともと未発達な生産段階での、共同体的な社会集団による生活と生産のための儀礼中心の宗教であるから、日本の原始社会のような、イネづくりを主体とする農耕社会では、イネの豊饒をもとめる農耕儀礼が、民族宗教の主要な内容を形成した。天皇の宗教的権威も、この農耕儀礼を全国的規模で主宰する機能に発している。
●神祇制度(29頁)
古代天皇制国家が定めた神祇制度は、天皇家の祭祇を国家的な性格を持つ皇室神道���して制度化し、主要な神社を官社として朝廷の直接の支配下に置いた。国家神道は、皇室神道を基準として神社神道を再編成するために、古代の神祇制度の再現を、最大の目標とした。
●神像(40頁)
原始神道では、もともと神体は存在せず、鏡等の神体ができたのちも、神の姿を人間になぞらえて造型することは、ながく行われなかったが、平安時代に入って、九世紀後半の貞観期には、仏像に倣って彫刻、絵画による神像がつくられるようになった。
●本居宣長(66頁)
本居宣長は、人間のさかしらを排して、神にたいする絶対の信仰を説いた。宣長は、自己の神道観をとくに展開しなかったが、神の道、天皇の道をすなおにうけいれることが人間の道であるとした。
●平田篤胤の復古神道(66頁)
復古神道は、宇宙万物の創造神、主宰神をアメノミナカヌシノカミとする。世界は顕(現世)と幽(死後の世界)から成っており、幽冥界はオオクニヌシノカミがつかさどるとした。幽冥界は、霊魂の世界であり、神の心がそのまま行われる世界として理想化された。篤胤は、来世の問題を重視し、人間は、死んだのち幽冥界におもむき、生前の行為についての審判を受け、その魂は永遠に生き続けると説いた。
●廃仏(82頁)
幕藩制のもとで、すでに廃仏を断行し、神社中心の政策をとってきた岡山藩、水戸藩等に続いて、幕末には、薩摩藩と津和野藩で、廃仏と神道化が行われた。
●寺院と神社(97頁)
近世の仏教各宗は、寺檀関係によって、民衆の生活に家の宗教として根をおろしており、民衆は、葬式、年忌等をつうじて、寺院と主体的なつながりを保っていた。神社は、本来、共同体の宗教であり、氏子意識は一般に受動的で、氏子としての主体性が育ちにくい。
神社をもって寺院に変える構想じたいが、非現実的であり、時代錯誤というべきであった。
●廃仏毀釈(104頁)
廃仏毀釈の嵐は、廃藩置県を境に、しだいに鎮静し、政府の急激な神道国教化政策も転換して緩和される方向に向かった。
●国家神道の教典(134頁)
帝国憲法発布の翌1890年10月30日、教育勅語が発布され、学校教育の基本におかれるとともに、国家神道の事実上の教典としての役割を担うことになった。
●国家神道の思想(137頁)
教育勅語に盛られている思想は、儒教にもとづく封建的中世の観念と、日本人の宗教的伝統に根ざす祖先崇拝の観念との結合であった。
●合併(167頁)
神社の合併は、もっぱら下級の非官社を対象に進められ、大正初年までには約八万の村社、無格社クラスの神社が合併または廃止され、神社総数は一挙に11万余社に激減した。
この強行措置によって、全国各地の由緒ある神社が破壊され、民間神道、習合神道の神事や行法も多く失われた。
●靖国神社(184頁)
靖国神社の起源は、1869年6月、東京九段の田安台に創建された招魂社である。
鳥羽伏見戦争から函館戦争にいたる天皇軍側の戦没者3585名が合祀された。
●八紘一宇(208頁)
八紘一宇とは、全世界を天皇に帰一させるという思想であり、最終段階では、ほとんど全世界を敵とした太平洋戦争のイデオロギー的根拠となった。
☆関連図書(既読)
「古事記」三浦佑之著、NHK出版、2013.09.01
「古事記」角川書店編・武田���宏執筆、角川ソフィア文庫、2002.08.25
「楽しい古事記」阿刀田高著、角川文庫、2003.06.25
「日本書紀(上)」宇治谷孟訳、講談社学術文庫、1988.06.10
「日本書紀(下)」宇治谷孟訳、講談社学術文庫、1988.08.10
「本居宣長」子安宣邦著、岩波新書、1992.05.20
「神々の明治維新」安丸良夫著、岩波新書、1979.11.20
「夜明け前 第一部(上)」島崎藤村著、新潮文庫、1954.12.25
「夜明け前 第一部(下)」島崎藤村著、新潮文庫、1954.12.25
「夜明け前 第二部(上)」島崎藤村著、新潮文庫、1955.02.05
「夜明け前 第二部(下)」島崎藤村著、新潮文庫、1955.03.15
「大系日本の歴史(12) 開国と維新」石井寛治著、小学館ライブラリー、1993.06.20
「明治維新の分析視点」上山春平著、講談社、1968.06.28
「明治という国家」司馬遼太郎著、日本放送出版協会、1989.09.30
(2017年10月19日・記)
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国家神道は、近代天皇制国家がつくりだした国家宗教であり、明治維新から太平洋戦争の敗戦まで80年間、日本人を精神的に支配しつづけた。本書は、国家神道の成立から解体までの過程を詳細にたどり、その構造と思想を分析して本質的性格を明らかにすることによって、神道が日本人にとっていかなる意味をもったかを追求する。
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事実を淡々と陳述しているのかと思いきや所々に主観がチラリ。所謂前後レジームが幅を利かせている時代における考察ならそれも仕方がなしか。
接続詞など文章構成における工夫が乏しく非常に読んでいて疲れるが、日を改めてまたじっくり整理しながら読みたい。
日本各地に原始宗教として誕生
⇨古来の祭神に加え記紀中の神々を再配祀
⇨伊勢神宮を頂点にした序列化
⇨皇族を頂点に戴く国教へ
⇨宗派統一整理
⇨土地再分配
⇨末社などの土地を召上げ、廃社
⇨柳田國男、南方熊楠ら反発
⇨国威掲揚に利用