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私が小学生の頃に買ってもらった学研小学生文庫の中の一冊(を読んだのですが、ブクログで出てこないのでこちらに登録します)。
三太少年の学校生活を生き生きと描いた短編集です。
ラジオドラマ化や映画化もされて人気を博したようです。
『三太とタヌキのしっぽ』は光村図書の小学5年用の国語の教科書の冒頭に載っていました。
しかし今読むと、もはや時代劇に近い印象を感じます。
戦後間もない頃の日本の山の中の村が舞台なんですが、古き良き田舎の光景です。飼っているニワトリがキツネに食べられたり、父親が山へ猟をしに行くような生活をしています。現在の日本でこのような生活をしている方々はどれだけいるでしょうか。
まあ私も子ども時代には山の中の町に住んでいたので、そんなに違和感なく読んでいたように思います。
三太が通う小学校のクラス担任は「花荻先生」という若い女の先生ですが、なかなか教養に富んだ開明的な思想の持ち主で、ジェンダー問題にも高い意識を持っています。それでいて子ども達を温かく育ててくれています。発表当時もすごい人気で、花荻先生人気のために教師志望者が増えたと言われています。まあ今見てもいい先生です。
それにしても「花荻」とは珍しい姓です。検索してもこの「花荻先生」しか出てきません。
「三太と白ギツネ狩り」の話で、三太は父親や音さんらと一緒に山奥の村に白ギツネを探しに行きます。この村は三太が住む村よりさらに山奥にあるようで、もはや別天地です。現在はここまで開発が進んでいるのか、或いは限界集落化して廃村になっているか。
とにかくそこで三太達は花荻先生に似たきれいな女の人に言われます。
「なんだかこのあにい、見たことあるようだよ。そうそう、いつか町にわざわざ見にいった、三太の十六ミリそっくらの顔だよ。」
映画化後の執筆なのでしょうか、自己言及のメタなセリフです。
巻末の解説で小暮正夫さんが
「とかく日本の児童文学はユーモアに欠けていただけに、三太の登場と活躍は新鮮でした。」
と書かれています。
この『三太物語』にしろ青木茂にしろ、忘れられるにはもったいない存在で、読み継がれていくべきだと思います。
今ウィキペディアで調べたら、同姓同名の他の青木茂さんは項目があるのですが、作家の青木茂さんの項目はありません。当然、『三太物語』の項目もありません。これは意外なことです。
ところで三太は一人っ子のようですが、なぜか「三太」です。こんな名付け、あるのでしょうか?
それにいつも名前で呼ばれていますが、三太の姓(ファミリーネーム)は設定されているのでしょうか。
OLDIES 三丁目のブログ
読み継ぎたい児童名作 青木茂『三太物語』
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