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紙の本
明治日本を作った男
2007/04/24 14:23
13人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて明治維新は市民革命かそうでないか等という愚にもつかない下らない議論が延々と繰り広げられた。そんなことはどうでもいい。明治維新の本質とは何か。それは長州による日本占領であった。こう理解したほうが物事が見えてくるように思える。長州は宿敵薩摩を味方に付け、徳川幕府を打倒することに成功し(徳川慶喜とは裏で握って抱き込んだ)日本を占領したのである。国民の総意ではなく長州による日本支配がその本質だったから、明治政府は非占領民の反乱を恐れた。せっかく長州が作り上げたガラス細工のような新政府が、世の中の見えない会津のような馬鹿者達によって壊されることを恐れた。だから長州が作った権力機構は複雑怪奇を極めた。制度上は議会がある。内閣がある。首相がいる。しかし、誰も何も決められない。決めるのは常に元老である。このシステムの中核にいて、すべてコントロールしようとしたのが本書の主人公・山縣有朋である。山縣は陸軍という暴力装置を抑え、参謀本部を支配した。その上で、形式上は議会・内閣を設けるが、それはあくまで形であって、そこでは国家の枢機に関することは何も決められないように制度を設計した。自分の意に反することは、何ものも通らないようにしてしまったのである。それでも日本という国が曲がりなりにも持ったのは山縣有朋がずば抜けて優秀であり(彼は政治判断をほとんど誤らず、常に「正解」を出し続けた)長寿であったからだ。その山縣が1922年に死ぬ。彼が死ぬと、日本には中心が無くなり、主がいなくなった。伊藤博文も既にいない。井上馨も既にいない。残ったのは優柔不断で臆病な西園寺公望だけだ。これじゃ、政府を動かすことは出来ない。政治の天才・原敬は、民主主義という制度を利用して、多数党・政友会をバックになんとか民主主義を日本に根付かせ、長州支配を切り崩し、「民意」に基づく政治を実現しようとした。彼の目論見はかなりの部分、成功するが、すんでのところで彼も暗殺されてしまう。政治の中枢に真空地帯が生じた隙につけこんで日本を乗っ取ったのが陸軍参謀本部を中心とする日本の軍部である。彼らは天皇陛下の名を借りて政治を壟断し、国策を捻じ曲げ、日本を支配しようとした。しかし、彼ら軍部とて、日本を完全に支配することは出来なかった。山縣が築き上げた複雑怪奇な権力構造が仇となって、誰も何も決められないシステムであったことは昭和になっても変わらなかったのである。東条英機は首相と陸軍大臣と参謀総長を兼務した。兼務すれば日本を支配できると思ったのだ。でも、出来なかった。米国の大統領のように一人に権力が集中していれば出来ることが、そうではなく、一人が三役を兼務することでは、それは出来なかったのである。こうして山縣が作り上げた「明治日本というシステム」は崩壊していく。もとはと言えば、日本国民を最後まで信用できず最後まで他人に権力を明け渡すことを躊躇った山縣に責任があるのだが、国際政治蓄膿症の西郷隆盛や、「政治」というものを理解できない「会津藩」の滑稽な喜劇役者ぶりを見ると、山縣の気持ちが分からぬでもない。こういう国は海外にも結構ある。ホメイニ師が作り上げ、現在ハメネイ師が支配するイランなぞは山縣が作った明治日本にその構造が似ている。明治と言う国家の中核にいた山縣有朋の人と成りをコンパクトにまとめた本書は、今もその輝きを失ってはいない。
紙の本
古くて新しい評伝
2017/06/19 15:32
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーク - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は刊行から既に60年近く経ち、人物評伝としては古典の域に達するものであろう。しかしその記述は平易にして、史料から権力者山県の姿を描き出そうとしている点にその古さを感じさせない所以があるのかもしれない。
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