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H・Mシリーズ
ヘンリー・メリヴィル卿初登場。プレーグコートの持ち主ディーン・ハリディのに求められやってきたケン・ブレイク、マスターズ警部。密室となった石室内で殺害された霊媒師ダワース。凶器はかつて殺人鬼が使用したナイフ。 ナイフの傷や大量の血液の謎、暖められた部屋。第2の殺人。被害者は霊媒師の助手。消えたディーンの婚約者の弟。ダワースの妻の秘密。
2003年4月11日購入
2003年4月22日読了
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H・M卿の初登場作品。カーらしく怪奇趣味とミステリーが見事に融合した傑作です。やや真相の解明が唐突ともいえるが、布石は回収され、ロジックに崩壊もなかった。ただ、この訳者の和訳がわかりずらくストレスを感じた。他の訳者の同一作をつまみ読みしたら、とてもわかりやすかったので、次は別の訳者で再読したい。
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古いロンドンの屋敷に漂う底知れぬ怖さと霊魂に囚われる狂気をバックに、密室殺人を解決する、ヘンリー卿。想像以上に面白かった。
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HM卿デビュー作の本書。
正直、例によって読みにくい文章のため、中盤まではほとんど読後の結果については諦めていた。しかし、世評に名高い本書は、最後に至って複雑な絵図を読者の眼前に晒してくれた。
石室という離れで起こった密室殺人については、実のところ、あまり驚きをもたらさない。千枚通しのような短剣で刺された無数の傷痕の正体が実は弾痕だったというのはなかなか面白い発想だと思ったが、その犯行を成す方法がアクロバティックで、綱渡りのような危うさがあって、腑に落ちない(窓から塀の上に飛び降りて、屋根の上に降りる芸当を女優をやったという理由で片付けるには乱暴すぎる)。これを知らされただけでは本書は凡百のミステリに過ぎない。
しかし、この事件で最も読ませるのは真相で明らかになる複雑な人間関係だ。単純な事件の表層の裏に、かくも込み入った役割分担があったというのが驚き。
ちょっと頭の足りない助手ジョセフがダーワースの情婦グレンダで、ジョセフの死体がテッドだったという真相はなかなか面白い。ただジョセフの死体については焼死体とはいえ、歯型で本人か否かを判断できるという瑕疵があるので、諸手を挙げて賛同は出来ない(1930年代当時ではこの捜査方法がなかったかもしれないが)。
あと巡査部長マクドネルの役割も当時としては意外かつ大胆な趣向だったのだろう。この事件でこのトリック、そしてこの犯人を成立させるのにネックとなっていたのはこのマクドネルだから、共犯者として取り込むしかないのは当然なのだが。
あとスウィーニー夫人=グレンダのミスリードは効果的だった。この推理ミスがあったためにグレンダのイメージが大柄な老女と固定されてしまい、ジョセフ=グレンダの真相の時に、脳内イメージが揺らぐ感じがした。
残念なのは降霊会のテーブルでの人員配置が事件に何の関与していなかった事。降霊会はこの作品のモチーフだから、なにかに活用して欲しかったなぁ。
最後の真相は面白いが、そこに至るまでの内容・文体にどうしてもノレなかったのでそれを差し引いて評価は3ツ星。もはや私自身がカー作品の(翻訳の)文体に忌避感を抱いているのかもしれない。