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紙の本

「人間は、死と不幸と無知とをいやすことができなかったので、幸福になるために、それらのことについて考えないことにした。」(パスカル『パンセ』)

2009/08/14 17:20

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:ぶにゃ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 死刑囚の、罪と罰の物語である。作品の基調は、暗くて、重い。サスペンスフルな犯罪者小説とは異なり、どんでん返しもなければ、衝撃的結末もなく、むろん謎解きもない。陰鬱とした薄暗い獄舎の壁の隙間から、死刑囚たちの、ただ人を殺すためだけに生まれ落ちてしまった、いわば宿業という謎に対する呪詛が漏れ聞こえるような作品である。

 主人公の獄中ノート「悪について」の章は、ドストエフスキーの『悪霊』を彷彿とさせる世界が漂っている。そのノートの中にこんな文章がある。「何の目的も理由もなしに悪を欲するということが確かに人間にはある。人間には盗むのを楽しみ、滅びゆくのを好み、傷つくのを望む暗黒の衝動が備わっているらしい。そしてもしかすると、憎しみのためではなくて、殺すのを愛するために殺すこともあるのだ。」
 否定することはできない。人間のこころの奥底には計り知れない衝動が確かに渦巻いている。
 精神科医でもある作者は、50年ほど前、東京拘置所に若き医官として勤務し、多くの死刑囚たちと交流してきた。この作品の出版から一年後に、『死刑囚の記録』(中公新書1980年)という本を出しているが、『宣告』で描き出した死刑囚のモデルたち一人一人の実像を、医学研究者としての幾何学的な眼と、作家としての豊潤なこころを通して精力的に記録している。死刑について考えようとするとき、この書籍は一読する価値があると思う。
 
 隣房の死刑囚に対し、「死刑によってしか救われない憐れな人間がいる」と主人公は語る。「もし、おれが死刑という判決を受けなかったら、おれは大切なことを知ることができなかった。」
 大切なこととは何だろう。
 この作品は、大切なことを知るために、残酷で取り返しのつかない行為をするしかなかった人間の、救いようのない宿命を読者の前に提示する。主人公は続けて独白する。「もしおれが人を殺さなかったとしても、おれは常に人を殺す可能性を持った人間であったと思う。」
 大切なこととは、そんな自分を知るということではなかったのか。ヒトの生命を奪う行為、ヒトの人生を勝手に遮断する行為、そうした他人の犠牲の上にしか成り立ち得なかった自己認識。自分を知るということは、まよい込んだ迷路の暗闇の中で、ひとつの出口を見つけたというのに等しい。出口の先には、もはや一本のロープが垂れ下がっているほかないのだが、それでも、出口は必要だったのだ。
 
 死刑制度は、是か非か。
 この作品は、しかし読者にその解答を迫ることはしない。作者の考えを強要することもない。極刑が死刑である以上、死刑に値する罪は確かにあり、罪は償われなければならない。しかし、償うということはどういうことであるのか、そして償わせるというのはどういうことであるのか、目を閉じるのではなく目をしっかりと開けて、いま一度考えるべきことの必要性を、静かに訴えているようである。
 たとえば、死刑になりたいがためだけに人を殺す殺人者に対して、死刑の宣告はどんな意味があるのだろう。それを考え始めると、僕はただ立ちすくんでしまうばかりなのである。 

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