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紙の本
海よりも深く、山よりも高い恩のある師の敬愛すべき姿
2011/05/17 17:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
『恩師』とはなんだろう。
私の時代、すでに教師と生徒の間に『恩師』なる言葉はなく、私にとって『恩師』は幻の存在である。
本書収録の【鶴亀先生】は、恩師ツルカメ先生こと中林千万年先生と、かつての教え子達の物語。
定年を迎えたツルカメ先生は、田舎から上京した。その目的は、東京で働く教え子達を訪ねて回り、自分の教育方針を守り、実行し、りっぱにやっているか、自分の教育の成果を確認するための上京なのである。
さて、幻の『恩師』とは、いかなるものか。ページをめくる。
ツルカメ先生から、上京の出迎えと宿を頼まれた畑中君は、恩師上京の翌晩にお見合いがある。しかし、見合いだからといって、恩師を放っておくわけにもいかない。困った畑中君は、中学の先輩で、同じ会社の課長・花好さんに相談した。
花好さんは言う。「師の恩は、海よりも深く、山よりも高し」
なるほど、恩師とはそういう存在か。
見合いで恩師の相手を出来ない畑中君は、花好さんに頼む。「ツルカメ先生を迎えに行っていただきたいのです」
花好さんは警戒色豊かな顔つきで言う。「断るよ。先生が君のところへ頼んでこられたのは、僕よりも君を、なつかしがっていられる証拠である。だから、僕としては、先生の期待を裏切るに忍びん。それこそ、師の恩にそむくというものだ」
確かに、師の、海よりも深く、山よりも高い恩に背くのは問題だ。
ツルカメ先生を出迎えた畑中君。飲み屋で、あした、見合いをすると切り出した。
三杯目のビール大コップをあけたツルカメ先生は驚かず言う。「その見合いの席にわしは、ついていってやるぞ。そして、相手の女を評価してやる」
恩師とは、そこまでしてくれるものなのか。恩師の目に狂いはないだろう。
かくして、教え子たちは、恩師の『教え子達の立派な姿を見たい』という思いを受け止め、ツルカメ先生を、次の教え子へ、たらいまわ……、引き渡すのである。美しき師弟愛である。
そんな敬愛すべき恩師の姿を見せてくれた本作品に感謝したい。
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