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スペイン土産に頂いた本(なので正確には講談社文庫ではない)。
装丁も挿絵も美しい。美しいものは卑しさから人を救ってくれる。
この本に出逢い、スペインを旅することを誓った。
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アルハンブラ宮殿は
過去からの時をいただいてたたずむ
歴史が
すでに歴史と分かたれぬ伝説が
たんねんに語られる
土地の明るさと暗さ
情熱と沈鬱
その空気
夜は月光に美しく沈み
おそろしいまでに静まる
ひきずるようなギターは
かつて住まい
夜毎弾き楽しみ踊り語り満ち足りて暮らした
貧しき者たちの
楽か
宮殿にまつわる夢が
時を超え
石とともに宮殿をかたち作っている
(2003年02月04日読了)
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1832年に出版されたアルハンブラ宮殿への紀行文。前半はグラナダへの旅路とアルハンブラ宮殿の遺跡を描いたエッセイ風の読みもので、これもなかなか旅情豊かで楽しめるが、秀逸なのは後半。アルハンブラで聞き取った様々なムーアの物語、説話を書き留めて、さながらグラナダの遠野物語を読むようだった。
江間章子の解説に「木枯しが吹きすさぶさびしい夜に、燃える暖炉の近くに集まって、村の古老から昔ばなしを聞く」と例えられた雰囲気そのままに、物語自体が持つ素朴な楽しみが滲み出るような小品が並ぶ。最近はジェットコースターみたいなエンタメ小説ばかり読んでいるので、こういう各停列車に揺られるような、おちついた物語が読めて、心底ほっとした。
アルハンブラ宮殿は、現在でこそ修復作業が進み、スペイン屈指の世界遺産となっているが、欧米諸国にその素晴しさを最初に紹介したのがこの「アルハンブラ物語」だと言われていて、ワシントン・アーヴィングの代表作の一つ。
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筆者がグラナダを去るとき、自分まで悲しくなってしまった。ずっと、アルハンブラの物語に耳を傾けていたかったような。そう思わせるのは、グラナダの住人や物語のなかのムーア人たちに対する筆者の控えめな同情や、アルハンブラのわびしさ、美しさ、風の気持ちよさの繊細な描写が、素直に心に響いていたからだと思う。アメリカ人である筆者から見たスペイン人の描写にも惹かれる部分が多かった。
出版は1832年、アルハンブラの管理は適当で、グラナダへの旅は盗賊の危険も伴うような時代。異教徒ムーア人の残した遺産と共に生活をしていたスペイン人たちが、アルハンブラに抱いていた幻想、畏怖。きっと今とは違って、夢と現実、歴史と物語がごっちゃになっていたんだろう。その時代だからこそ書ける、アルハンブラの姿なのだろう。
この本を開く時間が、まさに夢のような時間になっていた。
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世界でもっとも美しい建物。アルハンブラには、この世のものとも思えない美と深い心の安らぎがある。
スペインのレコンキスタを完成し、スペイン内のイスラム建築を破壊しまくって、キリスト教会に変えて行ったイサベル女王も、アルハンブラは、あまり手をいれていない。
外向きには、キリスト教でスペイン統一を進めた反イスラム強硬派の女王だが、アルハンブラには、あまり外部の人を入れずに、その美しさから1人心の平安を得ていたという。
という美しい場所についての19世紀の旅行記。スペインで外交官をしていたアービングは旅行でアルハンブラにいって、そのまま数ヶ月そこに滞在した。(うらやましい限りだ)
これは、その旅行記であるとともに、いろいろな人からきいたアルハンブラにまつわるお話しを書き留めたもの。
美しい物語、悲しい物語、ちょっと幸せになる物語などなど。
人々の思いが、ストーリーとして、建物に投影されている感じ。
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19世紀の旅、アルハンブラの現実の歴史、幻想的な民話。
3つの要素が入っていて、それがアーヴィングのあたたかなまなざしを通して語られる美しい本。21世紀の今、この本を読めば、時空を超えた想像の旅に出かけることができる。
初めて読んだのは今よりずっと前。翻訳の日本語に一部混乱が見られ、読んでるこちらも混乱してしまう部分があった様に記憶している。けれど作品の詩情を伝えているのは岩波文庫のものよりむしろこちらの方だと感じたが、今読み返したらどう感じるだろう。また時間を見つけてアーヴィングと旅に出ようかな。
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二度目にアルハンブラ宮殿に行った時に教えられた本。
昨年三度目のアルハンブラ宮殿訪問時にも読んでいなくて、この度ようやく読了。
不思議と幻想の物語、四度目行くことがあれば、より一層楽しいものになりそう。