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紙の本

アガサが偽名を使って発表した「殺し」の出てこない小説群の1冊。彼女自身の失踪事件の理由がわかるような…。

2001/06/12 11:30

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る

 40歳を目の前にした女性の半生が描かれている。でも、単なる回顧というスタイルを取るのではないところが、アガサ・クリスティーのうまいところ。

 手に障害をもったある女性が、ひとけのない場所を散策しているとイギリス人らしい婦人に出会う。申し分のない社交辞令が交わされたあと別れるが、何かがおかしい。何だろうとひっかかって歩いているうち、婦人が自分の手の異常に一瞥もしなかったことに思い当たる。もしかして、あの人は…。
 くるりと踵を返して戻ると「…そんなことをしてはいけません!」と叫び、婦人の自殺の意志を断ち切る。そして、ひと晩つきそいながら婦人から聞き出したのが、彼女の半生という設定なのである。

 全部の話が終わったところで、聞き手の女性の手の障害の様子と職業が明かされる。そこで、タイトルを確認して実にしゃれた作りの小説であるなあと感心する。

 まずまずの人生を送ってきた女性に起こった大きなショックを確かな筆致で描いた小説である。ハーレクイン風で、それも若い女性読者向きではなく、どちらかというと妙齢のご婦人(おばさん)向きだと言ってしまえばそれまでだけれど、ところどころに散りばめられたアガサの思索の断片が興味深い。また、心に響いてくる。

 たとえば、
<戦争はたいていの女にとっては、一人の人間の安否である…>
<人間は多くの出来事の中からいくつかを選び、記憶の中におさめる。考えてみるとおかしなものだ。意識的であろうとなかろうと、選択は必然的になされるのだ>
<内なるビジョンに生きる人はみなそうだが、シーリアもふしぎと外から影響されることの少ないたちだった>

 私にとって興味深かったのは、自殺を考えるに至ったシーリアという婦人の家族関係の力学である。子どもを持つことで生じる夫婦関係の変化は誰もが指摘するところだけれど、ある種の人間にとって子どもの存在は必ずしも「かすがい」ではなく、むしろ良好だった夫婦関係の障害になることがあるという可能性。それをアガサは実にあざとく描いている。
 夫は、かいがいしく子を世話する妻を見て、自分に妻の愛情が注がれなくなったことを不満に思い子に嫉妬する。妻は、楽しそうに遊ぶ夫と子を見て、自分の遊びの機会が奪われたと子に嫉妬する。かつて夫の遊び相手は自分であったのに…と。

 今さかんに問題が表出している幼児虐待は、子の世話が大変なために起こるという側面もあろうが、上に指摘したような愛情の力学のゆがみが、悲惨な結果を惹き起こすこともあるのではないかという気がした。「こいつ邪魔だなあ」と子の顔を見て感じることがある母親として…。
 家族という人間関係の中で起こる危うい磁場を精緻に組み立てていき、「いつまでも美しくいてほしい」という男性のリクエストに神経を破綻させていってしまう哀れな女性の姿を見事に描き出した小説である。
 ミステリーとは異なるアガサのストーリーテラーぶりを存分に楽しめる1冊だと思う。

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2010/11/02 20:39

投稿元:ブクログ

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