紙の本
厳格も程々に
2002/07/30 17:06
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投稿者:霞(kasumi) - この投稿者のレビュー一覧を見る
(あらすじ)
探偵小説の中ではよく死体の発見場所として書斎が用いられる。
しかしこの探偵小説のようなことが実際に起こった!
ミス・マープルの友人、バントリー夫妻の書斎で死体が発見されたのだ!
被害者は全く見たこともない美女であった。
バントリー夫人の依頼でミス・マープルはこの謎の殺人事件に挑戦する!
バントリー大佐が可愛そう。
そしてそれ以上になんの罪もないバントリー夫人はもっと可愛そう。
悪いことは何もしていないのに、ここまでするとは。
もしミス・マープルのような頭の良い名探偵がいなかったら、
この夫妻は永遠に誤解されたままで、
もう二度とセント・メアリー・ミードには住めなかっただろう。
トリックのは動機がかなり恐い。
殺人を犯すのだからその動機はどれも恐いと言えばそうだけれど。
何が恐いのかは書いてしまうとネタバレになってしまう。
でも読んだ人の中には動機が恐いと思った人はきっといたはず。
紙の本
書斎の死体
2020/10/19 19:39
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投稿者:earosmith - この投稿者のレビュー一覧を見る
私の中では、ミス・マープルシリーズの中でも印象が薄い方。ミス・マープルの友人、バントリー夫人は好きなんですが。
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探偵小説でよくある場面“書斎の死体”が、普段と変わらぬある朝、バントリー邸の書斎で発見された。死体はバントリー邸では誰も見知らぬ金髪の美女。小説の作りごとのような出来事に戸惑うバントリー夫人は、親友のミス・マープルに相談。発見された遺体の身元が昨晩から行方不明になっているマジェスティックホテルのダンサーらしいことが判明すると、マープルとバントリー夫人は早速ホテルへ向かい調査を開始するのだが、果たして真相は…。1作目『牧師館の死体』以降、些細な村の出来事を大きな事件に関連させて、事件解決に光を与える才能の持ち主としてちょっとした名声を馳せている(らしい)ミス・マープル。マープルもの2作目である本作品でも『牧師館の死体』で登場した人物として警察のメルチェット本部長、スラック警部、牧師夫人のグリゼルダ(赤ん坊が生まれてる!)などの姿も見られる。その他、この後の作品にたびたび名前が出てくる元警視総監のヘンリー卿も富豪の友人として登場。今回の捜査の中心となるホテルには、殺されたダンサーを気に入り莫大な遺産を残そうとしていた富豪やその家族、ダンサー仲間が宿泊し、彼らの周辺の動きを掴むことが事件の経緯を押さえる初期ポイントなのだが、人の出入りが多くてちょっと複雑。と、彼らの動きや動機に注目させておいて、実は「確か」と思われていたことに落とし穴が作られていた、という筋書きが上手い。設定は一見地味だが、ストーリー展開、話運びの妙技がなかなか冴えている。【以下ネタバレ含むため未読の方はご注意】第一の遺体の身元確認にそんな落とし穴があったとは気づかなかったが、言われてみればなるほど確かにそうだった。そこを疑えれば、誰が(誰と共謀して)犯行を行ったかわかってくる。すべて最悪の事態を想定し、人(の発言)を頭から信じない非常に猜疑心の強いマープルならではの着眼点で、感じた違和感…着古したドレス、短く切られた爪…などから様々な可能性が浮かんでくるのだ。犯人達の分刻みで複雑な筋書き、さらに遺体を放り込まれ罪を着せられそうになった人物の意外なとっさの対処によって、事件が更に複雑になってしまったのだから、全体のタイムスケジュールが欲しいくらいだ。警察の得意とする科学捜査や物的証拠による犯人検挙が難しい素人探偵が犯人を追いつめる手としては、こうしたちょっと芝居がかった演出が必要。今回も犯人はマープルの仕掛けた最後の罠(演出)に引っかかり、御用となるのだった。ところで個人的に好きな場面は、書斎の死体が発見される前の、短い部分。お屋敷付きのメイドがお盆に載せたお茶の道具を運んできて朝のお茶を知らせてくれる音を聞きながら朝のまどろみの中で目覚める、というところ(実際にはこの日ばかりはイレギュラーな事件のためにそうはならないのだが)。いかにも上流階級の奥様の優雅な暮らしっぷりが感じられて、こんな朝の迎え方もいいなぁと想像するのも楽しい。まぁ、実際自分がこの時代に生まれてたら、奥様側ではなくてお茶を運ぶメイドがせいぜいだろうけど^^;(2010.5.2.再読&感想登録)
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「アガサ・クリスティ」の長篇ミステリー『書斎の死体(原題:The Body In The Library)』を読みました。
「アガサ・クリスティ」作品は昨年4月に読んだ『ヒッコリー・ロードの殺人』以来なので、約1年振りですね。
-----story-------------
書斎に転がる死体なんて探偵小説の中だけ― が、現実に見知らぬ女性の死体が大佐の書斎で発見された。
深まる謎を解くため、「ミス・マープル」が駆り出され、まもなく被害者と“マジェスティック・ホテル”の関係が明らかになるが…
「クリスティー」が「ありふれた設定」を「意外な展開」でみせる渾身作。
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1942年にに発表された「ミス・マープル」シリーズの長篇2作目となる作品、、、
「ミス・マープル」シリーズの長篇は、長篇1作目の『ミス・マープル最初の事件 -牧師館の殺人-』以来なので、約2年振りですね。
ある朝、セント・メアリ・ミード村にあるゴシントン・ホールの書斎で見ず知らずの若い女の死体が発見される、、、
屋敷の主である「バントリー大佐」も妻「ドリー」もわけがわからず当惑するばかり… 早速「ドリー」は親しい友人である「ミス・マープル」に助けを求める。
行方不明となっていた二人の女性が捜査線上に浮かぶが、発見された死体は前夜から行方不明となっていたダンサー兼ホステスの「ルビー・キーン」であることが、またいとこ?の「ジョージー(本名:ジョゼフィン・ターナー)」により確認される、、、
マジェスティックホテルでダンサーとして働いていた「ジョージー」は、足首を捻挫してダンスができなくなったことから、親族でダンスができる「ルビー」に代役を依頼し、一緒にマジェスティックホテルに住み込んでいた… そして関係者に聞き取りをする中で「ルビー」は、マジェスティックホテルに滞在している老富豪で足の不自由な「コンウェイ・ジェファースン」に気に入られて養子となる予定となっており、遺産のほとんどが彼女に相続されることになっていたことが判明する。
「コンウェイ」は飛行機事故で両足を失うケガを負っており、その事故で息子と娘を失っていた… 遺された妻(義理の娘)「アデレード・ジェファースン」と夫(義理の息子)「マーク・ギャスケル」が「コンウェイ」と一緒に宿泊しており、「ルビー」の死亡により、遺産を相続する可能性が高まっていた、、、
二人は破産寸前であることも明らかになり、動機のある二人に容疑が向けられるが、二人とも「ルビー」の死亡推定時刻に明確なアリバイがあった… そんな最中、石切場で車が炎上し、車中から黒焦げの死体が発見される。
車はマジェスティックホテルの客で「ルビー」に好意を寄せていた「ジョージ・バートレット」と判明… 死体は遺された衣類の一部や靴から、もう一人の行方不明者でガール・ガイド団員の「パメラ・リーヴス」と特定される、、、
なぜ、全く無関係のゴシントン・ホールに死体が放置されていたのか?
2件の殺人事件の関連性は?
犯人は動機のある「アデレード・ジェファースン」か「マーク・ギャスケル��なのか?
それとも犯人は、、、
「ルビー」に好意を寄せていた「ジョージ・バートレット」?
「ルビー」がハンドバッグに写真を入れていた、派手な生活をしている映画関係者の「バジル・ブレイク」?
「ルビー」がが死亡する前夜のエクシビジョンダンスを踊っていたホテルのプロのダンサー兼テニスコーチの「レイモンド・スター」?
等々の、謎が提示され、お得意の人間観察により「ミス・マープル」が見事な推理で事件を解決するのですが… 読者は、ここまでの展開で既にミスリードさせられていて、真実に目が行かないんですよねぇ。
現在の捜査ではありえないのですが、、、
被害者を特定するのに肉親一人の証言に頼っているし、焼死体の特定に遺留品に頼るとかね… でも、気持ちよくミスリードさせられていて、まさか死体が入れ替えられているとは思いもよらなかったですね。
さらに、罪をなすりつけようとされた「ベイジル・ブレイク」が、自宅に放置された死体を発見して、慌てた末にゴシントン・ホールに死体を放置したなんて… 全く思いつかない展開、、、
そして、エンディングの一行で「レイモンド・スター」が詐欺師であることが仄めかされるオチも良かったです… 誰も彼の被害にはあっていんですけどね。
「人の言葉を無条件で信じてはいけない」という「ミス・マープル」の言葉が印象に残りました。
以下、主な登場人物です。
「ジェーン・マープル 」
探偵好きな独身の老婦人
「アーサー・バントリー」
退役大佐で地方行政官
「ドリー・バントリー」
アーサーの妻
「コンウェイ・ジェファースン」
富豪
「アデレード・ジェファースン」
コンウェイの義理の娘
「ピーター・カーモディ」
アドレードの息子
「ヒューゴ・マクリーン」
アドレードの恋人
「マーク・ギャスケル」
コンウェイの義理の息子
「ジョージー(本名:ジョゼフィン・ターナー)」
ダンサー
「ルビー・キーン」
ダンサー。ジョージーのいとこ
「レイモンド・スター」
ダンサーでテニスの教師
「ベイジル・ブレイク」
撮影所の大道具係
「パメラ・リーヴズ」
ガール・ガイド団員
「バートレット」
ホテルの客
「ヘンリー・クリザリング卿」
元警視総監
「メルチェット大佐」
ラドフォードシャー州警察の本部長
「スラック」
メルチェット大佐の部下、警部
「ハーパー」
グレンシャー州警察の警視
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※再読後、新装版と共有
クリスティの長編ミステリー。マープルシリーズ。
書斎で死体が見つかるというミステリーありがちの設定であるが、クリスティにかかれば読者を惑わせ、迷走させる絶好の舞台装置になる。
導入から読者へ謎を提起し、全く面識の無い屋敷で発見されたブロンドの若い女性の死体。彼女が誰で、なぜこの屋敷で殺害されていたのか、が提示されて、その後、彼女だと思われる失踪者が踊り子として働いていたホテル、そこに滞在する大富豪、そして死体が発見された屋敷の近くに住む若い胡散臭い男と女と登場人物が出揃う。
物語が進行していく中で、村の石切場から若い女性の焼死体が発見され、更に事件は混迷を極める。
マープルは死体が発見されたやかたの夫人の友人であり、夫人から謎を解くための協力を要請される(昔の人にとっては他人の死は一種のスリルであり娯楽だ。)ヘンリー卿もホテル滞在中の金持ちから依頼があり、引退した身でありながら彼に協力する。
何より、作中の登場人物達がマープルの知り合いであり彼女に協力してくれる人達だ。現代ミステリーでは警察は素人には協力しない、情報は話せないの一点張りでヤキモキする事が多いが、この時代には捜査上のモラルは存在するが案外協力的であり、スムーズに進行していく事が多い。
警察では突き止められない真実もマープルと協力する事で得る事もあり(女学生の扱いは流石だ。というより、警察が鈍感なのか。)
クリスティの作品において、悲劇的な被害者は沢山いるが今作の被害者達はとても不幸であり不憫な人達だ。犯人について、動機の部分はあくまで統一されており、犯人は必ず殺人によって利益がもたらされる、若しくは愛憎によるものであり、突飛な理由(現代のサイコパス的な理由)は少ない(全く無いわけでは無い)。今回も例に漏れずなのだが全くコンセプトに古臭さを感じないのは流石だ。