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みんなのレビュー2件

みんなの評価5.0

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紙の本

鮮やかな色とまっすぐな言葉に心ごと持って行かれてしまう。

2009/08/08 00:09

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る

「ボスがきた」というタイトルから何を想像するだろうか。

ガキ大将だかいじめっこだかがやってきた、というイメージだろうか。

ボスがいったい誰なのか、なぜこの名前がついたのかは、
本書の編者でもある、止揚学園総リーダーの
福井達雨氏のあとがきを読むとわかる。

この名づけは、結構深いのだ。

だから、ここでは内緒にしておこう。

本書は、
重度の知的障害児の施設・止揚学園で生活をしている竹内雅輝君の絵に
同じく止揚学園の馬嶋克美さんが字を書いている。

原色の鮮やかな色たちが語りかけてくる。

顔の色や髪の色の常識的な配色ではなくて、
顔が青かったり、緑だったり、オレンジだったり、
髪が黄色だったり、青だったり。

ショックを受けた場面では、人は丸ごと黄色だったりするのだ。

そして、命の不思議に迫るまっすぐな問いかけ。

先生の説明を彼なりに理解する。

そして、その喪失感の本質を自らに引き寄せて描いた絵と言葉。

その見開きは、開いたまま、止まってしまうしか、できなかった。

悟ったように理解する部分とそれでも現実的にさびしいと思う気持ち。

確かに、私にも、両方あるから、
彼の喪失感を、私の喪失感として、理解できた。


本書は、日本のバリアフリー図書の歩みに、
「1980年 偕成社が障害のある子どもたちが描いた絵本
『ボスがきた』を発行」と刻まれている1冊である。

第1刷は、1980年4月である。
図書館で借りてきたこの本は、1988年2月の16刷である。

2009年8月現在も購入できる本書は、
いったい何刷まで重ねているのだろう。

表紙や見返しには、和紙の模様が見えるが、これは止揚学園の子ども達が、
木の実や草花からしぼり取った染料で染めて作った和紙なのだそうである。

手作り感を残しながらのロングセラーは、見事である。

偕成社のこのシリーズは、初版が1970年代から90年代なのだが、
「障害者を理解する本・絵本10巻セット」として
今もすぐに入手できる。

バリアフリー図書は、「FOR」と「BY」と「ABOUT」があるが、
本書は、障害者によって書かれた「BY」の本に当たる。

「ABOUT」でもある。

ちなみに、偕成社の本でいうと、障害者のための本である「FOR」は、
古くは(1970年代が初版で最近新版が出ている。)
『これなあに』と
『ちびまるのぼうけん』であり、
最近のものは、『はらぺこあおむし 点字つきさわる絵本』である。

1977年に障害者を理解する子どもの本の第1冊目である
『指で見る』を出版して以来の
バリアフリー図書を創作する歴史が、
人が変わっても社内に息づいているのだと思うし、
これからもバリアフリー図書創りを続けていってほしいと願う。


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紙の本

知能に重い障害を持つ子どもが描いた画期的な絵本

2011/08/28 09:02

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:まざあぐうす - この投稿者のレビュー一覧を見る

 この絵本の舞台は、知能に重い障害を持つ子ども達の施設「止揚学園」。
 昭和37年(1962年)、多くの人の協力を得て、福井達雨氏により設立されました。共同体制を持つ施設で、障害児差別に対する抵抗運動、教育運動を起こすなど、真摯な活動を続けています。
 
 ある日、止揚学園にコリ―の子犬がもらわれて来ました。ボスと名付け、子ども達はうれしくてたまりませんが、ボスは元気がなく、ごはんも食べないし、声も出しません。主人公のいっちゃんは、小さい時に、両親と離れて、この止揚学園にきたので、ボスがさびしくてごはんを食べない気持ちがよく分かります。
 いっちゃんや学園の子ども達とボスのほのぼのとしたふれあいが描かれています。ところが、皆にだいじに育てられたボスが突然病気で亡くなります。学園の子ども達は、その死をどう受け止めていくのでしょうか。

 燃えるような明るい色、心をえぐるような激しい色。
 児童指導員の三好保先生の指導により、学園の子どものひとりである竹内雅輝君が描きました。知能に重い障害を持つ子どもが描いた画期的な絵本です。明るく強烈な色彩で描かれた絵に、アール・ブリュット(生の芸術)の輝きを感じました。正式な美術教育を受けていないがゆえに、創造性の源泉からほとばしる自由な表現ができるのでしょうか。絵本を開くと、ことばよりも強く、絵が心に迫って来ます。絵本には、幼い頃から親元を離れて暮らさなくてはならなかった子ども達の深い喜びや愛、悲しみややりきれなさが漲っています。

 1980年、その年度に出版界に新風を吹き込み、書店の売り場活性化に貢献した出版物と発行者を顕彰する書店新風賞を受賞しています。絵本の表紙や見返しに印刷してある和紙の模様の元は学園の子どもたちが、木の実や草花からしぼり取った染料で作った和紙です。本編のみならず、表紙や見返し、そして、止揚学園の園長である福井達雨氏のあとがき「怖い顔がやさしい顔にかわった」まで、すべてに深い感動を覚えました。

 社会から隔離されなくては生きていけない子ども達の存在を忘れてはならないと思います。この子らが私たちと共に生きていける社会こそが、本当の意味で幸せな社会なのではないでしょうか。この子らが置かれている環境に思いを馳せてみませんか。多くの読者の心に感動を与え、問題意識を喚起する絵本として、この絵本が長く愛されることを願ってやみません。止揚学園の子ども達による絵本『みんなみんなぼくのともだち』、『みなみの島へいったんや』とあわせて、お薦めします。

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