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紙の本
新時代の民衆の息吹がいっぱい。
2010/05/08 08:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:浦辺 登 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日々、沖縄の普天間基地移設問題でテレビやインターネットが報じる情報が瞬時に全国津々浦々にまで届くようになったが、幕末や明治の時代の民衆にとっての政治情報のメディアは何だったのだろうかと考える。江戸時代から「読み、書き、そろばん」という庶民の教育は寺子屋であったと言われるが、それでも明治生まれの祖母から伝え聞いた話では無学文盲が多かったという。そのことは、あるお寺では経を唱えることができない農民のために、般若心経をイラストで描いて読ませていたという。
そういう幕末、明治という時代、年貢もしくは税の取り立てに敏感な庶民が政治状況を把握する手段のひとつに、芝居、講談、浪花節、壮士劇があったという。官憲としては民衆が徒党を組んで政府に反旗を翻すことを嫌ったが、その影響で盆踊りや、芝居にまで中止命令を出していたという。
本書では、民衆がどのような娯楽を支持していたのかを明治時代の初期、中期、後期の三期に区切って述べてある。さらには、女性の社会進出と芸能という関係性も興味が失せないように解説されている。おもしろいと思うのは、広義の芸能人を支持する判断材料が人格、倫理にあるところに現代と変わらぬ日本人の気質を感じる。女性アイドルに若者が群がるように、明治の時代も女義太夫にファンが殺到して、新聞紙上で芸能週刊誌まがいのプライベートが暴露されており、情報メディアが発達しても、庶民のすることに本質的な変化が見えないのがおかしい。
この明治時代、革新的な芸能人といえば川上音二である。女優を養成し、女房のマダム貞奴と海外公演に出かけたり、自前の劇場を作ってみたりと、なかなか太く短く生きた人物と思う。
上野の谷中霊園、高輪の泉岳寺に川上音二郎の碑が残っているが、今はやりの「墓マイラー」ならば、博多の承天寺に出向いてみてはどうだろうか。
なんにしても、民衆が支持する娯楽がこの新書サイズに収まりきれるはずもなく、はちきれる新しい時代の息吹で溢れていた。
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