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マルクス経済学の入門書です。
オーソドックスな教科書といった印象ですが、説明の詳しいところと、あっさりと片付けられているところの差が少し目につきます。
たとえば、井村喜代子が担当している第4章は、単に再生産表式論を一通り解説するだけではなく、現実の経済における「不均衡」の成立条件にまで突っ込んだ説明をおこなっています。また常盤政治が担当している第7章の地代論も、学説史的な説明も交えながら立ち入った考察が展開されています。その一方で飯田裕康が担当している第6章は、商業資本と利子生み資本について定性的な解説に終始しており、入門書としても若干もの足りなさを感じるかもしれません。とはいえ、全体的には必要事項がよくまとまっており、良書と言ってよいと思います。
なお、まったくの初心者がいきなり手に取るには、少し敷居が高いのではないかと思われます。本書よりやさしく書かれた、いわゆる「入門書の入門書」レヴェルの本として、相田慎一『経済原論入門』(ナカニシヤ出版)や古沢友吉『資本主義社会の基礎理論―マルクス・その人と学説』(三嶺書房)などがあるので、それらで足元を固めてから、本書で体系的に学習するのがよいのではないかと思います。