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紙の本

ナウイ父子家庭の話 1980年初版

2009/03/03 15:45

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る

赤瀬川原平さんはペンネームをお持ちです。
で、小説を書くときは尾辻克彦さん。
『肌ざわり』は初めてお書きになった小説なんだそうです。

絵学校の先生であるお父さんと小学生の娘・胡桃子ちゃんが登場します。
あるとき遊びに来た学生が言いました。
「先生の家、本当に奥さん…いないんですね。」
「そりゃそうですよ。
うちはちゃんとした父子家庭なんですよ。
ナウイんです。」

そうです、この短編連作は、ナウイ父子家庭の話なのです。胡桃子ちゃん、あるお話では六年生だったり、一年生だったりします。
それがどうして分かるかといえば、このお父さん、娘に話しかけるとき「おはよう、一年生」とか「やめなさい、六年生」なんて呼びかけるのですよ。
面白いでしょ。

お父さんと娘のやりとりがほんとうにほのぼのしていて、嬉しくなります。
とにかくユニークなお父さんなので、ついついお父さんの問いかけに「ぶ-っ」て吹き出すことが多い胡桃子ちゃん、なのです。

例えば、こんなかんじ。
「そう、主婦。主婦の気持。お父さんは主婦でしょ」
「ぶ-っ」

いいなぁ~と思うシーンがいくつもありましたが、
一番だと思うのは、胡桃子ちゃんがお父さんの絵学校の学生さんといっしょに遠足へ行く話のところ。(「内部抗争」)
まずその日の朝にお父さんがお弁当の卵焼きを作るシーンがわくわくします。一年生の娘に「うわぁ、もうトロントロンね。お父さん、混ぜるのうまいね」卵の混ぜ方を褒められ照れるお父さん、いいですねぇ。
それから、遠足からの帰り道、「お父さん、あと電車いくつ?」とすこし疲れ気味の娘に聞かれたすぐのセリフがすこぶるいい。

「いやあと一つだよ。乗り換えはあと一つだけ。
家に帰ったらうどん作って食べようね」
「うどん?」
「そう、うどん。胡桃子好きでしょう」

朝早くから遠足の弁当作りでお父さんも疲れているだろうに、その日の晩ご飯まで算段している。
ここに、ほろっときました。
しかも娘の大好物のうどん!

そうそう六年生になった胡桃子ちゃんは食後に、リンゴをむいてくれるようになるんですよ。

「お父さん、リンゴ食べますか?」
「はい食べますよ」

父と娘のやりとりに、にやにやほのぼのしながら、
ふと先日読んだ幸田露伴親子の話を思い出しました。
そしてわがやの目を向ければ、
娘も小さいころは、「パパと結婚する」なんて言ってたのに、今ではそんなことを言ったことすら忘れているだろうなぁ~と。忘れかけていた懐かしい話を思い出しました。

1980年初版です。
当時はナウイって言葉が流行っていたのだろうなぁ。
こちらもしみじみ懐かしいです。

あと、広島の牡蠣の話が出てきます。
私も何度か広島の牡蠣を知人に送ったことがあるのです。届いたときの風景が再現されたようで、なぜだか可笑しくてたまりませんでした。そこはかとなく笑いをさそう文章…原平さんを感じますねぇ。つくづく嬉しい。

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