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-内容- 健康を害し、母方の農場にやってきたペネロビー、ふとしたことから16世紀の時間に迷い込んでしまう。そこでは、王位継承にまつわる事件が繰り広げられていた…。
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自分もその時代を感じて
旅してきた感じ。
いい本に出会えました。
訳や、装丁を変えたら
今の時代の子どもたちにも
読んでもらえるかも。
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なんとなく読んでみたいなぁとずっと思いながら、なかなか手が出なかった重量級児童文学。16世紀エリザベス女王の時代にタイムトラベルする話と知り、俄然読む気に。話はメアリー女王の脱出計画に向かって進んでいく。どんどん読み進めたい気持ちとは裏腹に、情景描写の素晴らしさに一頁ごとに深く入りこんでいく。まるで自分もその場に立っているかのように。
脱出を今度こそ成功させようとするアントニーバビントンを、結末を知りながら何も出来ずただ見守るしかない主人公のペネロピー。過去を変えられないことが切なく、けれどこれが歴史物タイムトラベルの醍醐味と実感。きっともう一度読みたくなるなー。
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小学生の頃、何度となく図書館で借りて読んだ。高校生で船橋東武百貨店の旭屋書店で遭遇しすぐに購入。今まで何回読んだか分かりません。スコットランド女王メアリ・スチュアートがこの小説で好きになった。サッカーズ農園にいまもきっとバビントンのひとたちはいるのではないかと思える。フランシスが最後に『いかないでくれ』って叫ぶとき、本気で泣いたのは忘れない。
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できれば、訳が新しい岩波少年文庫の方を読みたかったんだけど、何も考えずに図書館で予約したら、こっちが届いた。
恨んで出てきた幽霊のようなどす黒い顔の女の子の表紙を見て、一瞬引いた。
しかし、新刊でもないのに、しおりが真新しい状態で挟まっていたので、どうも誰も手をつけないまま書庫行きとなった本のようである。きっとこのホラー小説のような表紙のせいに違いない!(この絵、子供はビビるってば)
イギリスの田園風景を楽しめる小説を読みたい、と思っていたので、風景描写をとても楽しんで読んだ。
行間から、館のあちこちで使われる様々なハーブのいい匂いがしてきそうだった。
最初、登場人物が、やたら説明セリフを吐き続けるのがどうも気になった。全員が橋田寿賀子ドラマの登場人物のよう。
でも、まあ歴史的な事件に絡んだタイムトラベルものなので、状況が分からないことには話が進まないからしょうがないのかな。
この本の見どころ(読みどころ?)は、なんと言っても、お館の三男坊フランシスとの甘酸っぱい恋でしょう。(←次男かも? 家族構成がちょっとよく分からない)
この少年、子どものくせに女心をつかむ術をすでに体得している。
ロビンフッドの話をした後に、「君はロビンフッドの恋人マリオンになれよ! 次にしとめる鹿の角はお前にやる」といきなりぐいぐいと距離を詰めてきたり、緑の服を着ている主人公に『グリーン・スリーヴス(=緑の袖)』を歌ったり。
デートに誘うのもさりげなくてうまい。
読んでてちょっとときめいた。
グリーン・スリーヴスが恋の歌だったとは、この本を読んで初めて知った。
(でも改めて詩を見て、この本の訳詩、肝心の部分がちょっと間違ってる、と思った)
バラッドやフォークソングがいくつか出てくるので、クリックするとYouTubeかなんかに飛んで音楽が聴ければいいのになぁ、と思った。
私は『グリーン・スリーヴス』と、『三匹の盲目のねずみ』くらいしか分からなかったけれど、おそらくイギリス人なら出てくる歌はぜんぶピンとくるのかな?
(ちなみに、私の頭の中の『三匹の盲目のねずみ』はジェームズ・ボンド映画第一作「ドクター・ノオ」のオープニングで使われたラテン・バージョンです)
追っ手が迫る緊張に満ちたクライマックスはとても印象的だった。
特に仮面をかぶった村人たちが闇の中から現れるシーン。ドラマチックな画像が目に浮かんだ。
ここは実写映像化されたものがぜひとも見たいと思った。
まあ上記ひっくるめてすべてにおいて子供よりもオトナが楽しめそうな本です。
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大好きな一冊。江國香織さんがオススメしていたので興味を持ち購入。自然描写が素晴らしい。ラベンダーの香りが本から香ってくるよう。
イギリス好きにもタイムスリップ好きにもオススメの本。
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気がつくとそこは、女王メアリーを救うべく画策するバビントン家の屋敷だった。時間移動ジュブナイルの傑作。
原書は1939年刊。新しい訳である岩波少年文庫版の方が人気があるのか、そちらのほうに物語の概要をわかりやすく書いてくれている人が多いので、興味のある人はご参照願いたい。また、こちらの評論社版も1980年刊ながら未だ絶版にはなっておらず、本訳もぜひオススメしたい。
時間移動を繰り返しながら歴史的事件の舞台裏を垣間見る本作。タイムマシンのような派手なSF装置はなく、迷い込むような感じでいきなり時代を移動するのがファンタジー的でよい。主人公の少女は最初からある種の諦観を抱いており、タイムトラベルものによくある歴史改変に奮闘するというようなこともなく、従って変えようもない史実の悲劇的な空気感が全体を漂っているのが印象的だ。しかしだからこその、農家の人たちの温かさや田園の豊かな風景が非常に香り高く描かれていて味わい深い。
良書ではあるが本作には難点もある。一つはとにかく日常風景の描写が非常にきめ細かいこと。これは利点でもあって、これゆえにそれだけ作品世界に深く入り込むことができるのだが、日本人にはイメージするのにエネルギーがいる事物が多く、自身の知識不足もあって調べながら読む時間が長かった。つまり人によっては読みにくい箇所が多いと思う。ただし繰り返すがこれはいいところでもあって、主人公ペネロピーとの一体感が増す、最後の感動への導線でもあるのだ。もう一つはやはり、作品内で多少書かれているとはいえ、メアリー・スチュアートの人生とその周辺の歴史的事情について、事前にある程度知識が欲しい、という点だ。これについては直前にシラーの戯曲を読んでいたものの、本作の主要人物でもあるアンソニー・バビントンの事件は詳しくなかったし、もう少し読む前に知識があればよかった。これは本書を読んだ人が皆抱く感想かもしれない。しかし逆に、本書をきっかけに興味を抱き、そこから調べ始めればよいことでもある。
現代のエンタメに慣れた人にとっては物語の展開がやや冗長に感じるかもしれない。とっとと話を先に進めてくれ、と。しかしじっくりと取り組めばそれだけの見返りがあり、読者に能動的な参加を求めるという小説ならではの醍醐味を味わえると思うので、序盤で投げずに最後まで読み通してほしいと願う。
作中で大きなポジションを占める「緑の袖」という詩。検索してみたら、イギリス民謡:グリーンスリーヴスとのことで、YouTube再生してみると、「ああ、この曲だったの!」と自らの無学を恥じると共に、そんな自分にも浸透している音楽の偉大さを思った。そして、本作のラストシーンには本当にこの曲がよく合うことも……。メアリー・スチュアートの人生とグリーンスリーヴスを愛しながら味わうとさらに深みが増し、まさに時を旅してきたような気持ちに浸れる、タイトルに偽りなしの名作ジュブナイルだ。