紙の本
見せちゃいけない部分。
2007/11/25 19:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクヤマメグミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
三部作第二弾。
一作目の『言い寄る』で感じた主人公・乃里子の自由奔放でキラキラした部分はなりを潜め、自ら選んだ新しい生活に必死に馴染んでいこうとする従順さが前面に出ていた。
予想もつかなかった結婚生活の一部始終が描かれている。
恵まれた美しい部屋の中で、乃里子が感じる違和感。
彼女がいつまでも仕事部屋を手放さなかったのはこの理由からだろう。
本の中の彼女と同じように読み手の私も息苦しさを感じていた。
結婚とは何だろう。
赤の他人と暮らしていくのは決して簡単なことではないと思う。
すぐに慣れるというものでもないだろうし。
でも努力しようと思うのは、そこに相手への愛情があるからだ。
前作と比べて浮いたエピソードが少ない分、物語は乃里子の内面風景を中心に細部まで書き込まれている。
まるで自分が体験したように、読み終えた後は苦くて重いものが残っていた。
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「言い寄る」「私的生活」「続・私的生活」という3文作の中核。好き好きで一緒になった二人に、ある日冷たいすきま風は吹き抜ける。女は「明るく」悩む。この人に優しくしてあげたいと思う気持ちは、もしかしたら残酷なことなのではないかと。愛と依存の狭間で、誰もが揺れる。その揺れを女は全身で甘受する。痛々しく切なく健気で、でも心からそんな女を羨ましく思う。言葉の軽さとは到底かけ離れた重いテーマが横たわっている。
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最後の方に向けて面白くなった、かな。ちょっと遠い世界の話のような。剛みたいな男はすきじゃない。ノリコの考え方はすき。
(06/09/09)
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最初はかなり夫のいいなりの彼女がやっと自分の素直な気持ちに気付いたとき、とった行動は、家を出ることだった。「私の私的生活はみんな彼に吸収されてしまって私自身の存在すらなく、彼の私的生活の一部分として私がわずかに生き残っているだけ」。
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映画のジョゼとこの作品しか知らないけど 田辺聖子さんは男女の別れのリアルさを描くのがものすごくうまい気がする 目を背けたくなるけどこれがほんと
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かわいい装丁のほうを買ったからこっちのは人にあげてもいいんだけれど
今のところわたしが本をあげられる範囲に田辺作品の良さを見いだせている人がいないのが残念。
ちょっと古くさいのに目をつぶって読んでもらったら絶対にはっとする作品がたくさんあるのにな。
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エイミーがエッセイで傑作だと言っていたので読んでみた。初の田辺さん。途中まではってかほとんど、剛がムカついてムカついて読んでくのがしんどいくらいだった。(中杉さんはまさしくオアシス)小説読んでてこれほど肌に合わない登場人物も珍しいくらい。超うざかった。暴力ふるうわ、嫉妬は異常だわ、超自己中だわ、人をバカにするのが人生のガソリンなんて最低だ。特に最後の喧嘩での、のりちゃんの心を粉砕した言葉の数々ね。「君は怠けすぎ」・・・ドン引き。 でもこんなに胸クソ悪くしてても(笑)、最後の20ページを読んでそんな気持ちもいつのまにか消えてしまった。本を静かに閉じて、エイミーの言うことは本当だと思った。 田辺さんは源氏物語のイメージしかなかったけど(読んでないけど)、なるほど美しい日本語を書かれる。女版宮本輝って感じを受けたけど、土地柄だけでたまたまだろうかw(しかも失礼?←どっちにw)とっても鋭い女心の描写なんだろうなと思った。 それにしても「田辺聖子」さんって、何ともしっとりと完結していて、美しい名前だ。書かれる文章にぴったり。おいらにとって「もっと読みたい!」「毎日読みたい!」という文章ではないけれど(良い意味で上品だし、女心なんてわかんないのにって恥ずかしくなるからw)、その素晴らしさはにわかに味わわせてもらったつもり。新鮮でした。
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私が人生で一万回は読んだ本です。
きっかけは6年生のとき、松田聖子氏が「月刊明星」で薦めていた(笑)
「この本のカップルは 剛(ゴウ)とノリちゃんなんですよ。ウフフ」
なぁーんて書いてあった気がします。(松田聖子の本名はのりこさん)
6年生が読む本ではありません。カンペキな大人の恋愛小説です。
神戸の御曹司・中谷剛に嫁いだ乃里子は、今で言うセレブな生活三昧を送っている
子供はいず、2人は、夫婦漫才のような息の合ったカップル。
普通の家庭から嫁いだ乃里子は、その生活を面白がりながらも、何か違和感を覚えていた。
この小説のすごいところは、乃里子の女性としてのバランス感覚。
彼女は30代前半の設定ですが、センスがよく(すごいドレスも宝石も持っているのに
髪はショートでいつもナチュラルメイク。憧れはいつもハイジ)お料理が上手、主婦として才覚がある。
セックスには熱心なのに、パートナーの剛にいつも客観的に大人の愛で接することができる。
結婚前には、クリエィテイブな仕事を持ち、自立をしていたのに、
結婚後は、家庭に入りきちんと剛をサポートしている。
すべてのことに、女性的なねちっこい感情ではなく、心の声に正直に生きていながら、聡明な彼女。
その彼女が、少しずつすこしずつ剛との関係に、疑問を持つところは、今までの人生あまたな恋愛小説を
読みましたが、リアルかつもう完璧すぎて胸が痛いくらい。
「優しい声を出す自動販売機は全部品物が出尽くした」
「自分は、剛と別れて、役者にオンオフがあるように、本当の私生活に戻ったのかもしれない」
こんなくだりがあります。
私は、常に乃里子になりたくて、いや乃里子のようなバランス感覚のある女性になりたくて
どんな芸能人より、彼女を意識して生きてきたような気がします。
田辺聖子先生へお手紙を渡す機会があったときも
「今、私はどのくらい乃里子に近づけたか?生きる指針にしています」
と書かせていただいたくらい。
年もほぼ同じ、自分の好きな仕事をもつことができ、結婚もしました。まったく環境が同じではないけれど
乃里子のことが理解できるようになった今、思うことは
彼女にもほろ苦いせつなさがあったんだと 等身大で彼女を生々しく感じる今日この頃です。
男性に優しくしまくってしまった結果が、自分にかえってくるそのほろにがい想い。
乃里子をかみ締めながら、今日も読み返すのです。
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結婚3年の夫婦の物語なのですが、私は最初から「この二人、大丈夫なのかなぁ〜」と心配しながら読んでおりました(笑) 田辺聖子の文章は、本音の部分が言葉として細かく描写されているので分りやすいし、しかも面白い。
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NHKの「日本の100冊私の1冊」で内山りなが紹介していて興味を持った本。
淡々とした語り口ながらも、主人公の気持ちが垣間見れとても面白かった。
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田辺聖子さんの代表作として挙げられている本。やっと読みました。すこぶる面白かったです。他人と一緒に暮らしているなら多かれ少なかれ乃里子のように自分の<私的生活>の分量を少なくして相手に合わせたり、逆に合わせてもらっていたりするのではないでしょうか。男性がこの本を読んだらどう思うか興味がありますが、自分のオットに読んでもらって感想を聞くのは、おばけが出てきそうな気もしてはばかられます。中杉サンの、「そうと知らんかった人は、かなわんやろうなあ」という言葉が、深いです。
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30過ぎで自立して仕事をしていた女が、年下でお金持ち旦那さんとの結婚ごっこからある日目を覚まして、自分を取り戻すためにまた一人に戻って行く話。というとても現代的なストーリーだけど、実はこの本が出版されたのは1981年。今から30年近くも前なのだ。しかし、読むとほんの今さっき書かれたかのように、しっくり来る。
30年経ってもまったく古くさくならない著者の感性には驚きしきり。
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すこしの違和感が、完全なズレになりやがて別れ…の過程がすごくリアル。田辺聖子独特の、かんさい弁での掛け合いのテンポのよさがすき
いつも物の例えが、しゃれてて納得!て思える これが、あたしが生まれる前の作品だというのに、すごくセンスがいい。
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「言い寄る」の続編。乃里子は剛と結婚。ゴージャスな新婚生活を送り、剛のあふれる愛情を浴びている。幸福の絶頂にいる乃里子で話は始まる。一人称で乃里子の生活、心情が語られ、彼女の好きなもの、興味の対象等が表現される。その好きなもの、こと、興味の対象を表現している文章を読んでいくと、まるで現代の「源氏物語」「枕草子」のようである。この小説に出てくる日常の細かなこと、ささやかな楽しみが著者の言葉によって語られると本当に「なるほどそうだ」と共感する。これこそ田辺聖子のの真骨頂であろう。
しかし剛との甘い生活は続かない。大きな事件が起こるわけではなく、日常の中に潜む小さな違和感が最終的に二人を離してしまう。それを言葉で表現していく著者の巧みさ!男女の関係が破局を迎えるのはこのようなことなのだろうと感じ入った。
三部作なので「苺をつぶしながら」も読もう。
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男と女が上手くやっていくために芝居が入る。もう無理ってなった時、芝居だと知らなかった方は辛いよねぇ。ちょっとずつ忍びよる限界がリアルで面白い。