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紙の本
あ~あ、ああ~あ
2015/08/26 07:19
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「この本は、テレビドラマのシナリオです」と、この本の冒頭の「読者へ」という文章の中に倉本聰さんは書いています。
「北の国から」といえば、1981年10月から翌年3月まで金曜の夜に放映された人気ドラマで、翌年以降はスペシャルドラマの形で2002年まで放映されました。倉本さんの代表作のひとつです。
舞台となった北海道富良野はその後有数の観光地にもなりました。
この本はそのドラマの前半12回分のシナリオが収められています。
「読者へ」という文章に戻ります。
倉本さんはシナリオは「普通の小説を読むのとはちょっと違って最初はとまどうかもしれません」と書きつつ、「シナリオを読むことに馴れてみてください」としています。
「ただ読むだけではない、創るよろこびをも同時に持てるでしょう」という言葉で、終えています。
シナリオはよく設計図だと言われます。
どういうことかといえば、シオリオを読んで演出家は表現を考えます。役者は演技を考えます。大道具はどんな場面なのか組み立てます。衣装はどんな服を着たらその場面にあうかを考えます。
そのすべての基が、シナリオなのです。
いいシナリオはきっと読むだけでいろんな役割の人が動きやすいそういうホンなのかもしれません。
この「北の国から」の場合、すでに見たことがある人なら真っ先に浮かんでくるのが、さだまさしさんのスキャットかもしれません。あの唄が流れれば、もうそこは「北の国から」の世界ではないでしょうか。
妻の浮気をきっかけに東京を引き揚げ、自身の故郷北海道富良野に戻る五郎。純と蛍という小学生の息子と娘を連れています。
ファーストシーンはその妻である令子とその妹雪子の会話です。
浮気をして離婚させられた令子が「あの人には東京が重すぎたのよ」というセリフがあります。「あの人」というのは五郎のことです。
とても、重いセリフだと思います。この短いセリフに、主人公の五郎が背負ってきたもののすべてが込められているような気がします。
ドラマが放映されてから34年経ちました。もう五郎のような人はいなくなったような気がします。
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