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肉屋一筋の人生に虚しさを感じ、コペンハーゲンを訪れたキュルツ氏。彼の地で出会ったイレーネ嬢に頼まれ、ホルバインの細密画をベルリンまで運ぶことになるのだが……。
ミステリ風味のドタバタ喜劇。全編に漂うのどかな空気感が愉しい。特に間抜けで実直な盗賊団のなんと愛おしいことか。ささやかな幸せを感じさせるラストも素晴らしい。
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正直者の肉屋のキュルツがひょんなことからある事件に巻き込まれて…という話。キュルツのバカ正直でお人好しな性格が滑稽で可笑しかったり、悪者が100%悪になりきれていなくて間抜けだったりと、いたるところにコメディー要素があって面白かった。犯罪小説といえばそうだけど、血生臭かったりドロドロしたところがなくて、陽気に読めた。
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ミステリーが本職じゃない作家のミステリーは、独特の味わいがあってたまに読みたくなる。
ナチス政権下のケストナー作品は社会風刺が封じられている。
亡命せず、狂い行く祖国を冷静に観察しつづけたケストナーの目がここにあるかと思うと胸が痛い。
当時、家庭の薬箱という原題で出された《役に立つ詩集》の日本語版を持っているが、その小松太郎さんの訳だから本書を手に取った。
前作があることを知らずに読んでしまったので、泥棒一味はあまり頭に入ってこなかった。
何より本作の魅力は肉屋のキュルツ親方のキャラクター。
このひとを創作しただけで、このミステリーは、成功していると思った。
小松さんのリズミカルな翻訳も効いている。
13章で教授が、青年に裏をかかれたときの台詞
痙攣が起こるよ、おりゃあ!畜生、おれって人間を知らねえんだな!
にしびれました。