紙の本
世界最初の長編推理小説
2019/01/29 06:27
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投稿者:KTYM - この投稿者のレビュー一覧を見る
英国の小説家ウイルキー・コリンズ(ディケンズとほぼ同時期に活躍し、ディケンズとも親しかった様です)の手になる1868年の作品。T・S・エリオットが「もっとも早く書かれた、もっとも長い、もっともすぐれた推理小説」と評したそうです。その分量(文庫本で750頁超、しかも小さめの活字がびっしり)と古色蒼然とした佇まいに恐れをなし、これ迄手を出せずにいたのですが、意を決していざ読み始めると、これが面白い。バラモンの神像に由来する、手に触れた者には災いが降ると言い伝えられる「月長石(黄色いダイヤ)」の紛失と、貴族令嬢の不可解な行動にまつわる謎を縦軸に、19世紀英国らしい韜晦に満ちた語り口で語られる物語は目を離せません。人間性への深い洞察に裏打ちされたユーモアも最高。キリスト教の精神によって人々の救済を目指すクラック嬢の手記の部分は、爆笑ものです。後半は少しだれますが、複数の登場人物のリレー形式での手記によるり、少しずつ真相が明らかになってくるなど、語り方にも工夫がされています。
推理小説としてみると、ダイヤモンド紛失の謎をめぐって物語が進行し、最後に意外な真犯人が明らかになるのですが、メインのトリックが現代の眼から見ると説得力がなく、都合のいい説明を後から付け加えているようにしか見えず、物足りません。ポオによる創出後、推理小説が発展して行く過程で生まれた佳作であると言えましょう。ディケンズなど、英国の小説が好きな人にはお勧めです。
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長かった!
でも,次から次へと謎が生まれて,気になってどんどん読んでしまいました。
カーの「死者のノック」に出てくる作品で,気になってたんだけど,
ミステリの古典なので,「ミステリらしさ」よりも雰囲気を楽しむ
小説家と勝手に思ってました。でも,ミステリとしても面白かった!
まあ,そのトリックっていうか,ネタはどうなの・・・て思うところも
あったけど(あの人の疑惑が晴れるあの場面・・・),その場面ですら,
何重にも伏線が張ってあって,全部回収されているのです。
犯人が当てられるシーンと,ラストまで,一気に駆け抜けられます。
なんかこーゆー昔ながらのミステリをもっと読みたくなってしまった~。
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とにかく長かった~。でも、事件に関わった人たちの回想録をつなぐという構成が面白く、最後まで楽しめました。石を盗んだ犯人、というよりも盗んだ理由が今ではありえないのでは?そこが少し気になりました。
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誕生パーティーの夜に盗まれた月長石を巡る物語。
語り手が入れ替わり進む物語は、小説を何作も読んだかのような充実感。
語り手によって文体が変わり、そのどれもがその人物を見事に表している。
誰かに肩入れせずにはいられないようなミステリだった。
自分としては老執事ベタレッジの執事っぷりが堪らなくよかった。
謎解きとしては正直頭をひねらざるを得ないけれど、まあ書かれた時代を考えたらこんなものか。
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推理小説としてよりも、小説として面白い。途中からは、宝石なんか忘れてたしなー。長いけど、読む価値あり。
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ジョン・ハーンカルスがインドから持ち帰った「月長石」。「月長石」を取り返そうと追う3人のインド人。ジョンの姪であるレイチェル・ヴェリンダーの誕生日に遺産として譲られた「月長石」。その「月長石」を銀行から持ってきた従兄弟のフランクリン・ブレーク。もう1人の従兄弟ゴトフリー・エーブルホワイト。直前にヴェリンダー家を訪れた3人のインド人。誕生日の夜に盗まれた「月長石」。レイチェルの部屋の扉のはがれたペンキ。疑いをかけられた前科のあるメイド・ロザンナ。カッフ部長刑事の捜査。かたくなに調査への協力を拒むレイチェルと流砂に身を投げたロザンナの秘密。レイチェルと破局し海外に向かったフランクリン。ロンドンで生活するレイチェル。「月長石」を銀行に預けたと思われる宝石商ルーカーと接触したために襲われたゴドフリー。ゴドフリーとの婚約と破棄。婚約破棄の裏に隠されたゴドフリーの秘密。ロザンナがフランクリンに残した手紙とペンキのついた服。事件から1年後に帰国したフランクリンとレイチェルの会見。レイチェルの見た犯人。事件当夜にフランクリンの飲み物に入れられたアヘンの効能。カッフ部長刑事の復帰。
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著名古典の一作。
ミステリではあるが、いかんせん昔の作品(だから、古典なのだが)であるので、謎のオチは「そのまんま」という感じで、期待しすぎると拍子抜けするかも知れない。
ただ、本作の素晴らしいところは、登場人物の個性が際立っているという点ではなかろうか。執事ベタレッジもさることながら、ほかの登場人物も総じてみな、人物を確立させている。
物語運びもなかなか上手いので、読ませる読ませる。
やはり、古典的名作たる、と読了して思う。
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はぁぁ、重たかった!(物理的に。
取り合えず読み始めて、月長石ってイエローダイヤモンドなのかよう!と叫んだ石好きです。
ムーンストーンって邦題で良かったんでないかい。
和名だと長石って入るからどうも違和感が。ムーンストーンならまだ直訳月の石だしねぇ。もしくは月光石とか…うーん。
クラック嬢の章が読んでて一番辛かったです…。
ここはやっぱり宗教観の違いなんだろうなぁ。
すれ違いすれ違いで命を落とすロザンナに「なんなのよもう!」って思ったり、はけーはくんだレイチェルー!だったり。
女性陣が手強すぎた。
カッフさん好きなんだけどあんまり活躍しなくて残念。
カッフさんだけで別の物語が出来そうなくらい、いいキャラしてたのに!
今なら園芸刑事でコージーミステリになりそな雰囲気。
まぁなんだかんだ、最初の方のベタレッジさんとオチも好きです。
ロビンソン・クルーソー、読んでみようかな(笑。
よし、次は軽い本を読もう!(物理的に。
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長い。けれど面白い。関係者によって語られる証言により真実が姿を現わすってパターンは湊さんの作品のような感じ。150年も前に書かれた作品とは思えないほど今風な構成だけれど、描かれる風俗や社会制度は、たしかに19世紀だわ。第1の証言者の語りは日の名残りを彷彿とさせるし、第2の証言者の信仰的偏見に満ちた語りはとても面白い。
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700ページを超す大作である。インド寺院の秘宝、黄色のダイヤ(月長石=本書のタイトル)が盗まれ、その行く末とともに物語が展開していく。
秘宝を守るべく宿命付けられてきた3人組のインド人、彼らは何世代にもわたり、秘宝を追って取り返すべく暗躍している。彼らの活動は通奏低音のように物語のなかを流れている。
イギリスへダイヤが渡っていくが、令嬢の誕生日のプレゼントとして突然登場、だが、その夜のうちに忽然となくなってしまう。誰が盗んだのか?
登場人物の手記を通じて、事件が追いかけられていくが、そこにはドラマがあり、謎解きの推理が刺激されていく。一人の視点だけでなく、多くの登場人物の視点を通じて、輻輳する事件が解きほぐされていく。そのプロセスには斬新さがあり、その先に驚くべき真相が待ち構えている。
十分楽しめる重厚さが魅力である。
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1868年発表の古典ミステリ。長くて表現古めかしいけど意外に読みやすかった。ロビンソン・クルーソーオタクの老執事(前半の語り手)が可愛い。すぐ聖書みたく引用するの。ミステリ面より英国階級社会の人間ドラマのが面白かった。
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ムーン・ストーン。宝石というのは人を惑わす。惑わされ振り回される人物一人一人の個性と描写が活き活きしていて面白いし色褪せない。日本は明治時代。比較すると世界を縦横無尽に飛び回る壮大さに驚いてしまう。読んでいるうちにページが割れ始めたので、上下巻のほうが読みやすそう。『白衣の女』は読もうと思う。
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長編推理小説の始祖と呼べる古典なのだそうな。
このジャンル、第一走者からして本作のような完成度であるのだから、2世紀を経た現代になるともう伸びしろ的に厳しそうだな、などということを思いながら、まったりと読了。
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「最初の、最大にして最良の推理小説」という惹句そのまんまの良作だった。
複数人による報告の体を取っている大部の小説だが、それぞれのキャラクターがどれも個性的で生き生きした魅力に満ちていて、途中ダレることもなく最後まで読み切らせる筆力は流石だと思う。
ただ、古い時代の常識で書かれているので、肝心の部分の仕掛けが現代の目で見ると怪しいものになってしまっているのは少し残念。
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2022/7/20読了
本作の発表は1868年、シャーロック・ホームズよりも時代は早い(『緋色の研究』の発表は1887年)。長編推理小説の興隆は第一次大戦後という認識だったが、こんな超・長編もあったのだね。そして、この長~いお話の大部分の語り部であり、主家に忠実で、『ロビンソン・クルーソー』を信仰する老執事ベタレッジには、是非是非長生きして欲しいと思った。