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ミステリー史の勉強なら
2002/04/18 23:23
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投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
掲載作品:ヘミングウェイ「殺人者」、フィルポッツ「三死人」、ハメット「スペードという男」、クイーン「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」、コッブ「信・望・愛」、バーク「オッターモール氏の手」、チャーテリス「いかさま賭博」、セイヤーズ「疑惑」、ウォルポール「銀の仮面」の9編。
「いかさま賭博」は本書で唯一気に入った話。私がセイントのファンだから言うのではない。いかさまポーカーがテーマの軽い作品だが、二転三転の化かし合いがとても楽しめた。
「オッターモール氏の手」は、エラリー・クイーンら米国ミステリー界の大御所たちが1949年に選んだベスト短編「黄金の十二」の堂々の第1位に選ばれた作品。当然大いに期待して読んだが…文章はやたらと回りくどくてウンザリするし、内容も大した事ないし…どうしてこれがそんな傑作なのか、全然わからない。
ヘミングウェイは、ドライな文体と内容で、その後のハードボイルド・ミステリーに大きな影響を与えたという。ミステリー史的には価値があるのかもしれないが、この「殺人者」そのものは実にあっけない話だった。
「疑惑」も「黄金の十二」に選ばれた一品。悪くはなかったが、同じ毒薬を扱った話なら、クリスティーの「事故」の方がずっとあざやか。
以上、総じて期待外れだった。ミステリー史の勉強でない限り、あまりお薦めしない。
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『殺人者』 アーネスト・ヘミングウェイ
ヘンリー食堂にやってきた黒ずくめの2人組。居合わせた客と従業員を閉じ込め近所に住むスウェーデン人のアンドルソンの殺害を狙う。
『三死人』 イーデン・フィリポッツ
デュヴィーン探偵事務所に持ち込まれた依頼。バルバドス島で起きた3件の殺人事件。依頼人エイモス・スランニングの兄で地主のヘンリイが夜中に砂糖キビ畑で射殺された。重なり合うように死んでいた畑の番人ディックル。離れた場所からの銃撃で自殺の可能性はない。同じ夜に首を切られ崖から突き落とされ死んだソリイ・ローソン。砂糖キビ畑で起きる泥棒に神経を尖らせるヘンリイ。ヘンリイの失恋。
『スペードという男』 ダシール・ハメット
スペードにもたらされた依頼。命を狙われるマックス・ブリス。マックスからかかっってきた電話で彼の元に向かったスペード。殺害されたマックス。マックスを殺害する動機を持つ弟のセオドール。マックスの秘書との結婚でアリバイを持つセオドール。スペード事務所にかかってきた謎の電話の秘密。
『は茶め茶会の冒険』 エラリー・クイーン
オーエンのひらくパーティーに誘われたエラリー。深夜眠れないエラリーが本を求めて書斎に入ると通常鏡に映るはずの時計が消えていた。エラリーをオーエンと間違えたガードナーとのおしゃべり。翌日消えたオーエン。何者か送りつけられる意味のない贈り物。
『信・望・愛』 アーヴィン・S・コップ
死刑を待つ3人の外国人の囚人たち。護送列車から脱走する。ギロチンにかけられるはずのフランス人。終身刑として一生孤独な密室に閉じ込められるはずのイタリア人。ジワジワと首をしめられ絞殺されるはずのスペイン人。ホテルに逃げたフランス人。牧場の番人のメキシコ人と入れ替わりイタリア人を逃がし自らを被害者として縛られたスペイン人。
『オッターモール氏の手』 トマス・バーク
ロンドンの街を恐怖に陥れる連続絞殺魔。事件を追うオッターモール巡査部長。事件の真相に気がついた青年新聞記者がオッターモール巡査部長に語る事実。青年新聞記者の末路。
『いかさま賭博』 レスリー・チャーチス
聖者と呼ばれる義賊サイモン・テンプラー。汽車の中で出会った手品のトリックを売る男。メガネをかけると印が見えるトランプ。浜辺で言い争うカップル。結婚するはずの男女。エディが2人組のイカサマ師に結婚資金を巻き上げられる。メガネのカードを使ったイカサマ。サイモンを罠にかけようとするイカサマ師達。
『疑惑』 ドロシー・L・セイヤーズ
妻のエセルと幸せに暮らすママリイ氏。世間を騒がす毒殺魔のアンドリューズ夫人も逃亡。食事のたびに体調が悪くなるママリイ氏。新しく雇い入れた家政婦のサットン夫人に疑惑を持つママリイ氏。検査の結果食事に砒素が入れられていたことが判明。エセルを思い家に急ぐママリイ氏。エセルの来客。
『銀の仮面』 ヒュー・ウォルポール
夜中に自分の家の前で行き倒れていた青年ヘンリイ・アボットを助けたソニヤ・ヘイズ。翌日から何かと訪問を重ねるヘンリイ。妻と子供を連れての訪���。ソニヤの家で倒れる彼の妻。徐々に家を支配されるソニヤ。
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エラリー・クイーン「キ印ぞろいのお茶の会の冒険」が他の本のあとがきに出てきたので、それだけ読んだ。時間があったらまた他の短編も読んでみたい。シリーズの他の巻も。
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第四巻はサスペンスの佳作が集まったが中でもひときわ不気味なのが「オッターモール氏の手」予備知識なしで読んで作者の企みに心地よく騙されよう。
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短編ミステリーアンソロジーの第四巻。本巻には1930年代前半までの話が収録されている。
「殺人者」 アーネスト・ヘミングウェイ
アメリカの大作家ヘミングウェイの作品。現在の「殺し屋」のイメージを作り上げた作品でもあるらしい。町の食堂にやってきた殺し屋と、そこに居合わせてしまった人々のやり取りが書かれる。古典的なハードボイルドらしい淡々とした文体が、現場での緊張感を引き立てていて非常にクール。
「三死人」 イーデン・フィルポッツ
探偵社に所属するイギリスの植民地バルバロイ島で三人の男が死んだ事件を調査しにいくが失敗し、後に上司が真相を言い当てる話。証拠が一切無い中、当事者の性格のみを組み合わせる事で違和感なく推理を構築する手腕が見事。ヘンリイ卿の行動はなんとなく夏目漱石の『こころ』を思い出した。
「スペードという男」 ダシール・ハメット
ハードボイルドミステリーの古典であるダシール・ハメットの作品で、サム・スペードが出てくる数少ない短編の一つ。命を狙われていると電話があった依頼者のアパートに行ったら既に殺されていた話。題名の通りスペードの人柄に焦点が当てられた作品で、どんな状況でも冷静に、頑強に事件に立ち向かう男の姿が描かれている。
「は茶め茶会の冒険」 エラリー・クイーン
クイーンの短編の一つで、『不思議の国のアリス』のキャラに扮したパーティの中で帽子屋の主人が消える話。読者(アメリカ人)がアリスシリーズに親しんでいるのを前提に書かれているらしく、後半の種明かしはアリスの内容をほぼ忘れていた自分にはピンとこないものであった。実は事件そのものにアリスは関係ないけど。ちなみに以前の日本語訳名は「キ印だらけのお茶の会の冒険」。これは修正待ったなしだ。
「信・望・愛」 アーヴェン・S・コップ
護送中の列車から脱走した三人の囚人が、夫々が最も嫌がっていた処刑方法とよく似た方法による天の裁きを受ける話。因果応報ここに極まれり。題名が格好いいのだが本編との関連がいまいち分からない。ついでに「三死人」とタイトルを入れ替えても違和感が全くない。
「オッターモール氏の手」 トマス・バーク
1930年代ロンドンで起きた連続絞殺事件の話。恐怖を煽るようなナレーションの語り口が非常にうまく、全体的に不気味な雰囲気に包まれている。「体も自ら考えを持って勝手に動くことがある」というオッターモール氏の説は非常に斬新ではあるが…
「いかさま賭博」 レスリー・チャーテリス
「聖者」の別名を持つ義賊、サイモン・テンプラアが細工されたトランプを使ったイカサマ賭博の一味を撃破する話。前巻の「堕天使の冒険」と少し似ている。イカサマを使ってイカサマを破るという案件そのものが罠だったのに、それも早い段階で見抜いて利用するとは、聖者の名は伊達ではない。
「疑惑」 ドロシー・L・セイヤーズ
愛妻家の男が、新しく雇った家政婦が逃走中の毒殺犯ではないかと疑う話。一旦疑惑を持つと些細な事でも怪しく見えてしまうのも怖いが、その疑惑以外の可能性につ��て盲目になってしまうのも恐ろしい。
「銀の仮面」 ヒュー・ウォルポール
金持ちの老婦人が、ミステリアスな若い男を家に招き入れたことが原因で破滅する話。要約すると嫌な話。この話の教訓は、怪しい相手に余計な親切心を発揮するとロクなことにならないという事なのか。
四巻の作品は、全体的にダークな雰囲気のものが多かった。気に入っているのは「疑惑」、「オッターモール氏の手」、「銀の仮面」。
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ただ、ヒュー・ウォルポールの「銀の仮面」が読みたくて借りてきたもの。
「銀の仮面」は有名な短編かもしれない。小金持ちの孤独な中年女が、貧しいが美しい青年に気を許したばかりについには…「これでも眺めて暮しなさい」と壁に銀の仮面をかけて去って行く青年。すごくゾッとする。
他にも自分の家政婦が毒殺魔では?と恐怖する主人公におとずれるラストに驚く(予想がつく人もいるかもですが)ドロシー・L・セイヤーズ「疑惑」。
無差別連続絞殺魔の正体…作品が発表された頃は斬新だったのでは?トマス・バーク「オッターモール氏の手」。
この2作が他では面白かった。