紙の本
痛快な冒険譚
2018/05/22 07:25
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投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
村岡花子訳に続き、西村孝次訳の本書を読んだ。会話のテンポが良く、読みやすい。翻訳によって登場人物のキャラクターが微妙に異なってくるのも面白い。
特に違ってくるのが、紅はこべ捕縛に執念を燃やすショーヴランである。村岡花子訳では表面的にはひたすら慇懃な人物。それが、西村孝次訳では、粗暴で無礼な側面を見せる。
また別の相違点もある。マルグリートの尾行がショーヴランに発覚した時、暗闇の中で彼に顔、胸、肩をいじり回される場面がある。それが、村岡花子訳では、顔だけをまさぐられている。村岡花子さんは、際どい描写を敢えて避けたのだろうか。
海外文学の日本語訳を読む場合、翻訳の違いを比較するのも興味深い。物語と併せて楽しめる。
紙の本
奥様の冒険
2015/08/19 21:43
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
フランス革命では、多くの貴族、のみならずその妻子までもが断頭台に送られ、その残虐さに対して非難が浴びせられたと言う。かつてパリで女優として名を知られた主人公は、今はイギリスの富豪の夫人となっているが、兄はいまだに追われる身である上に、自身は虐殺派に加担したかのような謂れのない噂に傷ついている。
パリ市内から貴族達を次々に脱出させる手助けをしている、謎の人物紅はこべが、兄を救うための彼女の頼りだが、紅はこべの正体はフランス政府も血眼で捜索している。果たして紅はこべの正体は誰なのか、そして彼女の運命はどのように変転していくのか。
紅はこべの活躍は、彼女にとっては噂で聞くレベルのものでしかなかったが、俄然切迫した問題となった。そこへフランスの外交官が接触して来る。社交界の花である彼女は、少しずつ時代の動乱に巻き込まれていき、遂には愛する人を守るために命がけの冒険へと向かっていく。
つまり紅はこべの活躍や、その正体が誰かという謎といったスリルではなく、かつてはヨーロッパ一の才媛と呼ばれた美女が、愛のために泥まみれになり身を挺しての決断と勇気のドラマだ。
歴史ドラマの女性視点としても、女王やファンタスティックな女戦士でもなく、ただの非力な奥様の、けなげで懸命な冒険、つまり丸きり女性向け歴史ロマンと言えるだろう。もう紅はこべの正体なんて、感情を煽るための道具でしかない。
紅はこべはイギリス社交界では英雄視されているが、フランスでの肅正に対して政治家の反応は反発と放置の両方があったともされており、ヒロインの態度は必ずしも紅はこべの正義に加担するということでもない。作中ではフランスの末端兵士や場末の宿屋の亭主など、さまざまな声が挙げられているし、やがてくるロベスピエールの失脚や、周辺国との戦争と、さらに流動的な背景の中で作者はむしろ庶民の心情に同情的でさえある。
その相反する立場の葛藤の中にあるからこそ、愛のために生きるという姿勢が際立つのであり、単なる勧善懲悪の物語から離れた別の深みをもたらしている。そこには善悪、正誤といった二項対立だけで世界を説明できるわけではないという考え方があり、女性の視点でこそ脱近代的な新しい世界観が得られるという、現代フェミニズムにも通じていて、そこにも女性読者達の希望を掬いとる要素があったのではなかろうか。
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大好きなんです、このお話。
舞台は18世紀、フランス革命華やかなりし頃。フランス貴族を救い出す謎の男紅はこべ。
すごくカッコイイのよ〜。それに、胸がキュンとなるようなラブロマンス。
主人公のパーシー・ブレイクニー卿のキャラがいいんだなぁ、すごく。
一級品のエンターテイメントだと思います。
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この本とであったのは中学生のとき講談社から出ている痛快世界の冒険文学「紅はこべ」ルパンのように活躍する紅はこべは本当にカッコイイですよ。最近深夜NHKでこのドラマをやっていましたが紅はこべかっこよかったなー。貴族らしくって。しかし、ヒロインがとんでもなく不細工だった。美貌の歌姫のはずでしょ!君。
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海外ドラマとして放送されていたのが目にした切欠。元は小説ということで読んでみたのですが、さすがは海外小説の翻訳版。いかにもな言い回しや表現もあり、ですがドラマの吹き替え同様の言い回しもあって、ドラマの場面を思い浮かべながら読むことが出来て楽しかったです。残念ながらドラマ第1話以降の内容のある話は、翻訳がなされておらず洋書でしか売っていないのが悲しいところ。ドラマもビデオが日本版がないので見れませんしね。再放送を待って録画したり見たりします。中々面白いです。
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大胆不敵なリーダー「紅はこべ」と、その仲間たちの活躍を描いた歴史冒険小説。北島洋子のマンガ(週刊マーガレットか少女フレンド)で知りました。
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動機は宝塚星組で『スカーレット・ピンパネール』を上演するから。
不純なもんです、所詮。
お言葉。
▲誇りが夫を彼女から遠ざけたのであり、女として、彼女は一度は自分のものとなったあの愛の獲物をとりもどしたかった。突如、彼女には、一生のうちにふたたび幸福というものが残されているとすれば、それはこの人の接吻をもういちど自分の唇に感じることしかないという気がしたのだった。▲
おお、いかにも宝塚だあ。フランス革命後、貴族という以外に理由もなく断頭台に送り込まれる良心的(?)貴族を助けたイギリス貴族の一団「紅はこべ」。開けてみれば、理解し合う機会もつかめないままに冷えるに任せた夫婦愛の復活という物語でした。著者が女性ということもあって、ひたすら「紅はこべ」のリーダー、パーシーの妻の視線から描かれています。心理描写や情景描写もかなり装飾過剰で時代を感じさせます。でも、それでいいのです。これはロマンに関する物語なのですから。
読了 2008/4/10
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タカラヅカで舞台化されるということで読んだ。ストーリー自体はベタで、ベタであるからこそ面白いんだけど、いかんせん構成が……。主人公のマルグリートにあんまり共感できないし、紅はこべが危険を冒す理由もよくわからない。それは原作者の仕事がまずいのであって、訳者は、若干原文が透けて見える訳が多いけど、全体的にはグッジョブ。
最近出た集英社文庫の「スカーレット・ピンパーネル」もチラリと読んだけど、あれは抄訳だそうで、翻訳自体もけっこうやっつけ仕事みたいなところがあると思う。前後のつながりとか、登場人物の立場をよく理解せずに文章を訳しているようなところがあるので、こっちの方がいいと思うよ。
原題:The Scarlet Pimpernel
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渦巻き、沸きかえり、ざわめいている群集、それは人間とは名ばかりで、というのは、いやしい欲望やはげしい復讐と憎しみをの念に燃えている群衆は、その形相から見ても叫び声からしても野獣そのものにほかならなかったからである(本文冒頭より)。この書き出しで、「絶対好きだ、これ」と思って買いました。
フランス革命のギロチン処刑から逃れる貴族たちを救い出す秘密結社「紅はこべ」。その首領を捕らえようと画策するフランス革命政府のスパイ、ショーヴランとその陰謀に巻き込まれて葛藤するマルグリート夫人。「紅はこべ」をめぐる一大ロマン小説です。
なんども読者をハラハラさせつつ、格好良く優雅にピンチを切り抜ける様はまさしくロマンの王道といえます。逆に展開が読めてしまうと少し退屈かもしれませんが、王道たる粋や著者と訳者の気の行き届いた台詞回しがとても魅力的でした。
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カテゴリは迷ったのですが、冒険へ。
いや、冒険活劇でしょう、これは!!
お約束、といえばあまりにもお約束ですが、それがきちんと決まると気持ちがいい。
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The Scarlet Pimpernelの小説版です。
フランス革命のころの話ですが、改めて恐怖政治の恐ろしさを知ったよ。
ミュージカル版の「マダム・ギロチン」って曲好きだったけど、
これ読んだ後だと、なんて残酷な歌だろうってぞっとします。
展開は予想通りで普通に楽しめるかな。
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宝塚で大好きな作品スカーレット・ピンパーネルの原作
以前読んだのは児童文学全集だったので、文庫で再読。
話の筋は当然、児童文学全集と同じですが、こちらの方がすれ違う夫婦の心理がきちんと書き込まれていてロマンスに浸れます。
デュハーストとフォークスはちゃんと原作に存在したキャラだったのねというのも、こちらを読んで発見したこと(笑)
フォークスの活躍は、舞台ではずいぶん削られちゃってたのね~。
原作を読むと、舞台版のアレンジの秀逸さに感心しました。
設定といくつかのエピソードだけつかって大胆にアレンジしてたんですね。
宝塚見たことないって人にもお勧めできる作品なので、スカーレット・ピンパーネルはぜひ再演してほしい。
歌えるトップさんが出てきたときに(笑)
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スカーレット・ピンパーネルの原作ってことで読みました。
読めば勇気が出てくるような、そんな作品であります。
フランス革命に興味ある人は是非読むべし!
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小学生の時、『世界名作文庫』とかいう本で読んだっけ。
映画でも見たような気がするし、宝塚でもやってたなぁ(←昔のやつ、見てないけど歌は知ってる「その名も野に咲く〜べ〜には〜こべ〜」)
買った動機も覚えてないけど、積読山にあったものを掘り出して読んでみました。
最初は乗り気じゃなかったのでちんたら読んでいましたが、途中からものすごく面白くなってきて、久々に「このまま終わらないでほしい、もっと分厚い本だったら良かったのに!」と、終わりを惜しみつつ読む本となりました
物言いは古くさいし、差別表現もあるし(そこはそれ、原作に忠実に訳しているのでしょう)感情表現はオーバーだし〜、と突っ込みどころは満載なのですが、それでも面白かった!
マルグリートとサー・パーシーのすれ違い夫婦の場面は、ジェーン・オースティンの『自負と偏見』みたいでしたわ〜。
ハッピーエンドってわかってたけど、ほんとにハラハラドキドキしました。
最初はこの小説、どこの出版社でも断られたとか。
『赤毛のアン』もそうだったのですよね。
その後に無事、陽の目をみられてよかったです。
ロマンあり、冒険ありのコスチュームプレイ作品だから、舞台にはうってつけですねぇ。
でもサー・パーシーって難しい役どころだと思うけど。
あまりに面白かったので、続きが読みたいのですが・・・・なんと!続編があるのですね!知りませんでした〜!
でも、どこを見ても不評のようで・・・(^^;
う〜〜ん、読むべきか読まざるべきか〜〜〜
ところで、作中に出てくる「紅はこべ」って、どんな花だか全く想像がつきませんでした。
「どこにでもある、路傍の草花」とあるのですが。
調べてみたら、ヨーロッパではどこにでもある草花でも、日本では自生していないそうです。
なるほど、わからないはずだわ〜。
「The Scarlet Pimpernel」と「紅はこべ」では、ちょっとイメージが違いますよね(^^;
昔は「紅はこべ団」だったらしいですけど→題名。
団は取って正解だと思います
新訳では「スカーレット・ピンパーネル」になってますね。
これはこれで、人の名前みたいだけど(^^;
(って、どれだけ題名にケチつけるねん〜/笑)
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先に宝塚の舞台を観てしまったので、原作小説の設定の違いに少々戸惑いましたが、随所に面白いと感じる場面がありました。
こういう設定を、ああいうミュージカルの設定にしてしまった、アメリカのオリジナル・ミュージカルの脚本家の方ってすごいなぁと思います。
舞台のシナリオの方が断然わかりやすいし、雰囲気も出ている。もちろん、音楽、衣装、舞台装置という演出効果の影響は大ですが。
フランス語と英語という違う言語文化を持つ人たちとのやりとり。
これは、原作ではどんな風に表現されているのかしら?と気になったりもしました。