サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

東方綺譚 みんなのレビュー

新書

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー28件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (11件)
  • 星 4 (9件)
  • 星 3 (4件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
28 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

絢爛たる修辞、彫琢された硬質の文体。

2015/01/18 17:02

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:abraxas - この投稿者のレビュー一覧を見る

一篇を除く八篇が作者の生地であるベルギーからみて東方に位置する地方を舞台にするのがその名の由来。ブリュッセルの名家に生まれ、教養ある父と家庭教師により高度の古典学を教授されたユルスナールは、父の死後各地を遊学し見聞を広める。厖大な古典学の教養と実地に感受した諸国の風土、文物の印象を綯い交ぜにし、絢爛たる修辞を惜し気もなく濫費しつつ、彫琢された硬質の文体で思惟を固め、衆生の耳目を驚かせるに足る九つの稀譚を、表情の一つも変えることなくさらりと語り終える。初版時には十篇構成であったが、38年後改訂版上梓にあたり、その内一篇を手直しの用無しとして削除するほか、文体上の修正を経て今に至る。

巻頭を飾る「老絵師の行方」。訳者いうところの「神韻縹渺たる趣き」が全篇を蓋いつくし、時に読者をして批判や解釈を捻り出そうとさせる夾雑物が入り込む隙を与えない。旅の絵師汪佛の興味の対象は物ではなく、その影像にあった。偶々知遇を得た玲は、汪佛によって事物に色彩あることを知り、家財を売り払い汪佛と旅に出る。

ある時、師弟は捕縛され皇帝の前に連れ出される。無実を訴える絵師に皇帝が語る。外界と隔絶され、汪佛の画を蒐めた部屋で育った皇帝は、世界を汪佛の描いた画のように美しいと思って育つ。長じて実世界の醜悪であることを知り、あまりの違いに絶望した。老師の罪は天子を欺いたことによる、と。最期に未完の絵を完成させるよう命じられた汪佛が素描の水に色を差すと櫂の音が聞こえ、先刻殺されたはずの玲が舟から招く。汪佛が乗るや否や舟は次第に遠ざかり、やがて画中の崖の陰に消える。汪佛が船に乗って消え去るところは、「解題」にあるハーンの『果心居士』によく似ている。

訳者は絵師の品格と作品の美的効果をもってユルスナールが勝るとする。それに異論はないが、両者の差は名品を所有する(描ける)者に対する権力者の思いの差にあるのではないか。信長や光秀のそれは単なる物見高さに過ぎない。しかるに皇帝のそれは、現実を超える美や真への希求である。魂のこもった画には、現実世界の空虚さには比ぶべくもない存在感がある。しかし、一度それを知ってしまえば、皇帝と言えども、世界の支配者という点では一介の絵師に及ばないことを認めねばならない。皇帝としてそれは許せない。手を断ち、眼を焼く罰は、汪佛からその世界を奪うことに他ならない。支配者は一人でいいという論理。これでこそ皇帝というものである。

ユルスナールの物語る綺譚は、ただ物珍しい話というのではない。そこには哲学というと言い過ぎかもしれないが、何か人をして深く思いに至らせるものが含まれている。しかも、寓話のように独断的な解釈によって諭すのではなく、読者が自ずから思いをめぐらせそれまで気づかなかったものの見方に触れる契機となる、そんな物語となっている。すぐれた文学だけが持つ美質である。

人柱とされても幼子に乳を飲ませたいと願う母性を描いた「死者の乳」、修道士によるニンフ撲滅を憐れみ降臨するマリアを語る「燕の聖母」と、譚詩を素材とするものや、礼拝堂の名による架空の由来記、とその発想は自在。原作がはっきりしているものとしては「源氏の君の最後の恋」がある。奥山に庵を構える光のもとを訪れるのは花散る里、女人の持つ業の深さに、ひときわあわれを催す一篇である。

悼尾を飾る「コルネリウス・ベルクの悲しみ」は、巻頭の「老絵師の行方」が、画家の永遠の救済をモチーフにしたものとするなら、それに呼応して、厭世観を胸に抱く老画家の救いのない境地を描く。鮮やかな対比の妙にただただ賛嘆するのみ。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

紙の本

作者の「東方」

2019/05/31 23:18

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:H2A - この投稿者のレビュー一覧を見る

ユルスナールが日本や中国、いわゆるオリエントの題材を描いた短編集。この訳者の訳は日本語として素晴らしい美文で、まずそうした紹介のされ方が幸運だ。内容は幻想味と残酷さ、卑猥さ、華美さを合わせ持って幻惑される。源氏物語に題材を求めた短編も、随分自由に翻案しているがやはりその世界観は共通している。最初の中国の絵師の短編も素晴らしい。良い作品集だった。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2007/09/19 15:35

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2008/06/10 21:03

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2010/05/30 19:54

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2010/11/18 03:12

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2014/03/24 00:09

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/07/13 01:25

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2009/06/15 02:05

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2012/01/25 23:53

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2014/06/23 23:41

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/09/25 20:33

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2014/05/02 17:14

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2015/01/18 16:21

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2014/12/11 21:24

投稿元:ブクログ

レビューを見る

28 件中 1 件~ 15 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。