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前から読みたかった。
ようやく読めた。
いいものを読んだなあ。
邪馬台国の場所について論評できるほどの見識は持ち合わせていない。
だから、正邪はいいようがない。
だけど、読んでいる限りでは論理的だと思う。
とくに、松蘆国が神湊というのはすごく良い。
地理を少しかじったものとして、歴史系統の人が海進と海退について無頓着なのが、とても気になっていたからだ。
たぶん今は、地理というよりも、環境とか生態系と言ったほうがいいと思う。
海退にともなう沖積平野の発達と、稲作と中央集権の進展は、相関関係があると思う。
そういう意味では、実にすかっとした。
私は本をよく読むほうで、自分の読みたい本を読みたいように読んではいるが、
やっぱり、「今これを勉強しておいた方がいいよな」とか「これは知っておいた方がいいよな」と言ったスケベ根性が入る。
「クソの役にも立たないが、読んでいる瞬間は実に楽しい」というのが、私は最良の読書体験だと思う。分かっているんだけどなかなかできない。
その条件に近いのが、歴史とSF。この二つばかり読んで生きていくべきで、他の本などは人生の無駄遣いなのだが、やっぱりできない。
その二つの欲求を同時に満たしてくれる良著だった。
だけど、作者自ら「主人公の神津恭介は私の投影である」と言っておいて、文中でその神津恭介と、その論旨を、「素晴らしい推理だ」「まさに天才」とかと言ってのけるのは、少々鼻白む。
ほほえましいといってしまってもいいのだけど、後世に小林よしのりという、できの悪いエピゴーネンが出てきてしまったからねえ。