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紙の本
文章による肖像画集! 開高健さんだから聞きだすことできた話
2009/10/28 16:36
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者の開高健さんは言う。「文章による肖像画集と呼ぶべき性質のものかと思う。」
武田泰淳氏、金子光晴氏、深沢七郎氏、井伏鱒二氏、田村隆一氏…などなど、まだ若かりし頃の開高さんが、大物の、その懐の大きさに飛び込むようにして、インタビューに挑む。
私としては、やはり井伏鱒二さんのところが一番気になる。
「中央線沿線ならどこにでもありそうな、昭和初期に建てた古さをあちらこちらに見せている、庭に木のある家である。木がおびただしいので家がすっかりかくれて見える。朽ちたような感じの門柱に一枚の名刺が張りつけてある。門標はない。名刺はよれよれになって反ったままになっていて、マジックか何かで、めんどうくさそうに”井伏”と書いたきりである。」
冒頭の文章で、私も井伏家に同行した気分になった。うなるほど、いい。
そして、井伏さんと言えば、『飾りらしい飾りの何もない、簡素そのものの仕事部屋らしき部屋に、和服を着て掘りゴタツに入っている。「オーバーを着たまままで」』でいるのだ。
ありのままが書いてある。そのなんとユーモラスなこと。
読みながら、にんまり。
なんでも井伏さんはストーブなどであたためられた空気が好きではなく、さらに部屋を改造するのがめんどうであるらしい。
その情景がありありと目に浮かぶ。そしてまた、にんまり。
「井伏鱒二氏の眼はなにげない、晴朗なるべき釣りの話をしながら、ときどき、ふいにギラギラしだし、フッと消えてなごやかになり、という風であった。」
読みながら、おお!と思った。
そして、「氏の作品の味の一つには”ふくみ味”、”かくし味”と関西の料理名人たちが呼んでいるものがある。書いたものよりもはるかに多くの書かれていないものが作品の質や魅力を決定しているのではあるまいかと思われる。」とあって、そうなのだよなぁと大いに共感した。
井伏さんと面と向かってしか味わうことのできない貴重な瞬間を切り取った。
ぞくぞくする瞬間だ。
井伏さんに限らず、開高さんだから聞き出せた話、引き出せた魅力が多かったのではないかなぁ。
最近の「NHK週刊ブックレビュ」ーで、開高健没20年の特集をしていました。あれもこれも読みたいと思った中の一冊、です。
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