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紙の本

井上ひさし全著作レヴュー 12

2010/08/16 07:33

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:稲葉 芳明 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 初出は『新劇』73年5月号。初演は73年7月、五月舎・西武劇場の提携公演。木村光一が本作で初めて井上戯曲の演出を務める。
 因果な宿命で生まれながらの盲人として東北の片田舎で育った杉の市は、晴眼者を見返さんと持ち前の悪知恵と才覚を頼りに悪行の限りを尽くして成り上がっていく。最高位の「総検校」に次ぐ「検校」にまで登りつめ、藪原検校と名のって暫し栄華を極めるものの好事魔多し、それまで重ねてきた悪事がふとしたことで露見し、行年二十八で「三段斬り」の刑に処せられる。『天保十二年のシェークスピア』でも重要なモチーフとして用いていた『リチャード三世』を江戸時代の座頭の世界に置き換え、凄惨に描き上げた「悪の一代記」。
 井上ひさし自身初演のパンフレットで、「お客様に笑っていただくための工夫を、これだけ抑え、かつ避けたのも生まれてはじめてだ」と述べているように、これまでの井上芝居を特徴づけてきたことば遊び、寸劇、挿入歌といった「趣向」はかなり抑えられ、劇中劇によるどんでん返しも無い。猥雑なエネルギーを内包した陽気な笑いも影をひそめ、陰惨でグロテスクな物語がストレートに展開する。『天保』はとことん悪い奴を描いていても、ピカレスク・ロマンと称したくなるある種の痛快感があったが、それに比べて本作は、主人公に全く救いが無い。幼年時代、辛酸をなめるような生活を送らざるを得なかった井上氏が心の奥深くに内包してきた「怨」=負のベクトルが、杉の市という稀代の悪党にデフォルメされ投影されたのではないかとも思うのだが。されど、これほど悪に染まった、これだけ救いのない杉の市の生涯が――映画『市民ケーン』の主人公にも相通ずるが――「生きる」ことが本質的に併せ持つ悲しさと切なさを感じさせるのが、井上ひさしの並々ならぬ筆力である。
 なお本作は2007年に演出:蜷川幸雄、音楽:宇崎竜童、主演:古田新太・田中裕子・段田安則でシアターコクーン等で上演され、筆者も観る機会を得た。盲太夫という語り手を含め登場人物は全て盲(ギター伴奏者は例外)という設定は演ずる方もさぞ大変だったろうが、だからこそ盲が抱えている「恨み」「怨念」の深さは強く伝わり、と同時に「悲しさ」と「切なさ」を感じさせる感銘深い舞台に仕上がっていた。

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