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紙の本
ひとり息子がこの春小学校に上がるもので…愛読させていただいております。20年近く続いている元気なシリーズの古びることのない輝き。
2002/01/24 10:57
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投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
町の書店に出かけると、今はきゅうっと童話の本の棚が圧縮されている。学校販売を除くと、店売における童話の動きは極めて厳しい状況らしい。その理由はいろいろ想像して頂くとして、絵本とファンタジーの読み物などが、平均して5パーセント程度にしかならない各書店における児童書売上比率の大部分を支える。ハリポタの登場と『指輪物語』のフィーチャーで、児童書比率の事情はだいぶ変わったと思うが…。
でも、この<1ねん1くみ>シリーズが刊行され始めた1984年当時は、童話の本が出せば売れるという状況だった。特にサイコロみたいな大きな文字が並ぶ小学低学年向き童話が活況を呈していて、「こんなんまで本になっちゃうの」というものまで本にされ、そこそこ片付いていった。でも、そういうもののほとんどが絶版になった。なかには絶版にするのがもったいないようなものまで、復刊が決して期待できない絶版になったことと思う。
そこで生き残ったのが結局、以前からロングセラーを続ける『くまの子ウーフ』シリーズや、あまんきみこ、いぬいとみこ、なかがわりえこといった作家たちの童話。それから、当時出されたものでわずかに挙げられるのが、このシリーズであると言える(翻訳物は除く)。
『1ねん1くみ1ばんワル』でさっそうと登場した、やんちゃ坊主の<くろさわくん>は、大人たちには高度成長期に失われた子どもの古き良きイメージを彷彿させた。青っぱなたらして、ひざ小僧がいつもかさぶただらけ。着ているものが汚れても無頓着。勉強は苦手だけれど、体育が得意で放課後の王様…というやつだ。
火の玉のように日々を燃焼させるくろさわくんの姿、ときどき家庭事情からくる陰翳がちらりのぞくその姿は、可能性がまだまだ全方向に開けていると思える5〜6歳ぐらいの子どもにとって、変わっていて少し困ったやつ、けれど面白くて憎めない——愛すべき鬼っ子なのである。子どもの本性丸だしのワイルドな魅力に引き摺られて逆らえないものがあるのだと思う。
息子が通う保育園で、入学を意識した先生が、このシリーズの本を数冊ずつ図書館から借りてきてくれているらしい。そこでも、くろさわくんの魅力は絶大のようで、保育園であった出来事とくろさわくんのエピソードが話のなかでオーバーラップしたりする。だもんだから、私がシリーズのなかのお気に入りのこの1冊を見せたときの喜びようったらなかった。
クラスのみんなが知っている英語を競って口にしたとき、「犬はドッグ、バナナはバナーナ、ねこは二ャンコ、うしはギューっていうんだぜ」「キツネはコンコン、おならはプー」と勢いよく始まるくろさわくんのこの本は、6つのお話を収録している。
残業ばかりのお父さんとふたり暮らしのくろさわくんは、七夕の夜、お父さんが笹を持って早く帰るのを楽しみに待っている。遊びに来てくれた仲良しの友だち(この男の子の「ぼく」という一人称で全編語られる)が帰るのがさびしくて靴を隠す。夜、靴を入れた箱に、「ごめんな」と書いた短冊を添えて友だちの家の玄関近くに置いておく。この短冊を「ぼく」のお母さんは笹飾りにしてしまう。短冊が翻る絵で読み聞かせが終わるとき、私はぐっとくるものをこらえて、子どもとともに「えへへ、面白かったね」と笑うのだ。
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