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愛書家たちの事件を神田の古本屋店主が解く
読了日:2006.08.12
分 類:中編集
ページ:254P
値 段:360円
発行日:1982年8月三一書房、1985年9月発行
出版社:文春文庫
評 定:★★★
●作品データ●
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主人公:須藤 康平
語り口:3人称
ジャンル:ミステリ
対 象:本好き~一般向け
雰囲気:本に対してマニアック
結 末:一件落着
解 説:瀬戸川 猛資(ミステリ評論家)
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---【100字紹介】----------------------
世界最大の古書街、東京神田に登場した名探偵は、
何と古本屋の主人。蔵書家、愛書家、コレクターの
奇書収集をめぐる血なまぐさい事件を鮮やかに解決。
ビブリオマニアと古書世界を、
書誌学の第一人者が描くミステリ。
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●収録作品●
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・殺意の収集
・書鬼
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古本屋探偵。もはやこの言葉だけに惹かれて読ませて頂きました。だって菜の花、本好きですものー。蔵書家ではないし、愛書家でもないし、コレクターでもないですが。物語の中で出てくる「ビブリオメイニア(書痴)」というのは、菜の花程度では一生かかっても達せない(しかも達したくない!)境地です。
以下、解説より引用…
愛書家とは自分の夢見る最上の生活が、
書物との関係なくして考えられない人種のことをいう。
自分の運命に書物が常にスーパーインポーズ
されているような人種をいうのである。
★ 新聞を常に下から読む。書籍の広告欄からである。
そこに面白い本がなければ、その日の世界に
めぼしいニュースはなかったということになる。
★ 永遠の彼方にある憧憬の書物を
想像するかのような眼つきをしている。
★ 天変地異の場合には、家族よりも
まず書物の心配をする。
★ 貸した金は忘れても、貸した本は死ぬまで忘れない。
★ 幻想あるいは夢のうちに、書物状のものが出現する。
★ 書籍代に家計の80パーセント以上を費やし、
ついには家庭生活を破壊せしむる。等々。
…いや、菜の花の周りにはさすがにこういう「ビブリオメイニア」はいない…と思います。多分。
著者は評論家。本作がミステリデビュー作です。紀田順一郎で検索するとデビュー作は「幻書辞典」となっているかと思いますが、本作は同作の改題されたものです。
主人公は「古本屋探偵」というと、古本屋さんが探偵役なのか?と思いきや(間違っていないですが)、本当は古本を探す探偵です。もちろん二束三文の古本じゃなく、奇書収集のマニアさんたちの古書探索です。
とにかく物語に出てくる書名の固有名詞が多い!愛書家でない菜の花には、もはやフィクションかノンフィクションかの見分けもつかないくらい、沢山の「幻書」が飛び交います。さすが原題「幻書辞典」だけありますね。ミステリとしては、デビュー作ということで、それほど複雑ではありません。アリバイトリックが出てくるくらいで、大仕掛けもなく。ビブリオメイニアでたっぷり味付けが済んでいるので、これくらいでちょうどいいな、という感じです。ええ。何しろ収集家ときたら
「私は本探しの極意は熱意ではない、殺意だと思います」
なんて言ってくれたりしますからね。そりゃもう、それだけでミステリ要素たっぷりです。
本を愛してやまないあなたに、奇書収集家の世界をのぞかせてくれる一冊。
●菜の花の独断と偏見による評定●
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文章・描写 :★★★+
展開・結末 :★★★
キャラクタ :★★★
独 自 性 :★★★★
読 後 感 :★★★
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菜の花の一押しキャラ…小高根 閑一
「本は人に結びついているんですね。
本の背後には人がいるんです。」(須藤 康平)
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イメージ参照(http://kentuku902.seesaa.net/article/387158749.html)
「幻書辞典」を改題
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結構昔の本ですね。4半世紀前。でもそれでいて話は古臭くなく読みづらさも感じませんでした。
話自体は・・・かなり好みが分かれるところでしょうか。古書をテーマにというと、なんとなく「ハートフル」とまではいかなくてもそれなりに暗い話になりにくそうな感じしますが、これはなんとなく後味があんまりよくないというか、思ったよりもシリアスというか。主人公とバイトの女子大生のやりとりなんかは若干コメディっぽい感じもあるくらいなのに・・・
いやでもこれくらいピリッとしてるのも悪くない・・・かな?
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今人気の『ビブリア古書堂…』などと一緒に平積みされていて、何となくこちらを買いました。
「今、買っておかないと!」な感覚に突き動かされたので。
内容は非常に面白く、古さは微塵も感じられなかったのですが、“国電”…え?国電って何?
そこで本編に出てくる日付を改めて見直したら、たいそう古い作品でした。
どうして今頃、文庫で再販されたのだろう?
書店ものが流行っているのかな?
私も実は、本に関係する仕事をしているのですが…
お客さんも実にいろいろですね。
この本に登場するキャラクターでも、既に千差万別、金儲けのために古書をあさる人物、とにかく本を買い込まないと気が済まない半狂人、本を撫でていれば幸せ、希少本を所有したい欲でいっぱいの人物など、様々登場しますが、その内容を読んで感動したり癒されたり…という人物がいないのではないかということが、こう言ってはなんですが、少々気分が悪くなる。
時代小説が好き~、携帯小説が好き~、西京が好き~赤川が好き~…といった、本を読むのが好きな人たちとは、なんというか裏表な存在の気がします。
特に最近は、本で儲けることができる………と、どこからか聞きつけて、やたらバーコードリーダーを駆使しているにわか背取りが横行…
おっと、この作品とは関係ない。
とにかく、途中で混乱して、収録の二本とも、頭から読み返したりしたので、すでに二回読んだみたいな感じです。
それも仕方ないか…謎解きの場面を読まなければ、一見無関係な二本の糸はより合わさらないのですね!
蛇足かもしれませんが、帯のコメントが、三上延氏。
「これが古書ミステリーの本流です」ですって!
近いうちに読みます、同僚たちの間でも評判いいです。
あ、作者名、見覚えがあると思ったら、怪奇小説作品集jの編者の方?
3冊とも読みました!
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本を扱うミステリはいくつかあって、今流行ってるのはビブリオ。
例にもれず私もそこから始まり、こっちにも手を出してみました。
少し読みづらかった、が印象。
ビブリオにしても乾くるみにしても、本の要素に色々加えていたし、文章が重くなかった。
これは、もっと本寄りというか、密度が高いというか。
1冊に2話だし、テンポうんぬんじゃあまりなかったし、結構時間かかってしまいました。
私は本が好きだからまぁまぁかなとも思ったけど、正直人に勧めようとはあまり思わないかな。
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今日は小説の紹介ではありますが、私にとって少し残念な記事になってしまいます(;^_^A
小説の題名は紀田順一郎さんの「古本屋探偵登場」になるのですが...
以前このブログで同じく、紀田順一郎さんの『古本屋探偵の事件簿』を紹介させて頂きました。
その本が凄く面白く紀田順一郎さんの事を知った私は続けて「古書十番勝負」も購入して楽しく読ませて頂きました。
そして今作「古本屋探偵登場」も本屋さんで発見し、中身を確認せず購入決定!
積み本になっていて、昨日読み始めようとしたのですが...
何処かで読んだ記憶がある話なんですヽ(*'0'*)ツ
収録されている題名を調べてみると↓
『古本探偵登場』(約250ページ/476円)
・殺意の収集
・書鬼
の二編。
『古本屋探偵の事件簿』(約650ページ/1200円)
・殺意の収集
・書鬼
・無用の人
・夜の蔵書家
の四編。
そうなんです...
ダブっているのです(>_<)
*出版社は違います。
確認せずに購入した私がいけないのですが久しぶりに残念な思いをしました。
購入してから積み本(ストック)にしてあったので交換を本屋さんにお願いするのも何ですし...
今回は本棚にコレクション?としてしまっておこうと思います(^_^;)
もし、紀田さんの作品を買われるご予定がある方は気を付けて下さいね。
そして『古本屋探偵の事件簿』は前にブログでも紹介したのですが(上にリンクを貼っておきました)本好きな人にはオススメだと思います。
まだ読んでみえないかたは是非読んでみて下さいね☆
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この本の解説に、愛書家の特徴がいくつか列挙されている。
そのひとつに、「新聞を常に下から読む。書籍の広告欄からである」。残念ながら、愛書家になるべく情熱も先立つものもないが、これだけは当てはまる。さすがに、「そこに面白い本がなければ、その日の世界にめぼしいニュースはなかったということになる」とまでは思わないけど。
蒐集をめぐる二つの事件。たぶん「ビブリオ古書堂」のおかげで読むチャンスを得た。紀田順一郎の本は一度読んでみたいと思っていたので、感謝。
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本屋や図書館が舞台の小説が好きな方におすすめです。主人公は神田神保町の古書店を営みつつ、一方でタイトルから見てわかる通り探偵(ただし、本の)も副業でやってる須藤という名の男。
私がこの本を読もうと思った一番の理由は、登場人物の異常さです(笑) どのくらい異常かというと、「本探しの極意は熱意ではなく殺意だ」などとのたまうアグレッシブな古書収集家や、持ち歩くステッキの目印の線のところまで本を買わないと半狂乱になる老人などなど・・・それ以外にも読んでみると、本にかける情熱が尋常じゃない方々が総出で待ち構えている。
個人的にはミステリーとしては度肝を抜かれるような斬新さはなかったが、そのほかの魅力で本愛好家の読者をがっちり掴んで離さない、そんな一冊でした。
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愛書狂たちの凄すぎる争奪戦。これが古書ミステリーの
本流です。東京神田に登場した名探偵は古本屋の主人。
書誌学の第一人者が挑んだ本格ミステリー。
第一話 殺意の収集
第二話 書鬼
改めて読んでも面白い。
最近(といっても古いが)メジャーな愛書家というと喜国
雅彦だろうか。「本棚探偵の冒険」は面白かった。荒俣宏
の「ブックライフ自由自在」には圧倒された。
梶山 季之の「せどり男爵数奇譚」も傑作だった。
長山 靖生の「おたくの本懐」も素敵だ。
いろいろ思いはつきないが、本書を読むと神田神保町の雰
囲気を思い出す。古本屋で目当ての本を見つけた時の喜び、
思いもがけない良書にめぐり合った興奮。そんなエッセン
スが感じられるのが良い。もちろん本格ミステリーとして
も楽しめてお買い得である。
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古本の背後には人がいる、ということを描き込んだミステリと言えるのかな。
ただ、ミステリとしては、犯人が最初から分かってしまうような気がするけれど。
むしろミステリとして楽しむより、本にかける執念の恐ろしさを描いたホラーとして読むべきなのかも。
最近刷られた本のようなのだが・・・
「国電」とか、登場人物の、わりと若い人が昭和二十年代生まれという設定だったりするあたりに時代を感じる。
子どもの頃、大人向けの本を背伸びして読んだ感覚がよみがえってきた。
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創元推理文庫版もあるのですね。
そちらは「古本屋探偵の事件簿」というタイトルで、この本の2作+2作だそうです。
ミステリというよりはハードボイルド色の方が強めに感じたかも。
なにごともマニアの世界は深淵ですわね…。
主人公、もうちょっと個性的でも良かった気がしつつ。
いやこれは他の登場人物が個性的すぎるだけかしらん。
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古書店の探偵というと「ビブリア〜」が思い浮かびますがこちらは初版30年以上前の作品。文章や様々な描写に時代を感じます。この時代はビルを建てるほど古書店は儲かっていたんですね。 解説と帯にも書かれていましたが、作中の古書収集家は愛書家というより愛書狂、収集鬼ですね。「書鬼」のクライマックスは恐ろしい・・・。
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ミステリーとしては辛うじて水準作。だだ紀田さんは本業が作家ではないので、こんなものだと思う。最近のビブリア古書堂の当たりで復刊されたものかもしれない。
作品そのものは、古臭さもあるし、古書が主役というわけでもないのだが、読んで損はないだろう。
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いちいち思いあたる。ああ神保町というのはこういう町なのだと。都民ですら、よほど覚悟を決めた者でなければ、そうそう通わない。まして地方住みの者であれば、思い切って数ヶ月前から予定をたてて訪れる場所なのだと。
そんな神保町を知り尽くした著者が書いた、古書にまつわるミステリー。本という物体そのものにそこまでとらわれる感覚はわからないけれど、本を愛する者としては、そこからかなりはみ出してしまった方たちの思いも、なんかわかる気がします。その道には足を向けないまま死んでいきたいですが。
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書籍狂いの鬼気迫る感じが強く感じられる。特に『書鬼』の方は怖いぐらい。一方で本以外の物には時代を感じずにはいられない。