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後期ヴォネガットの代表作のひとつといっていい。
ヴォネガットらしさに満ちて、構成もうまい。
「ローズウォーターさん」同様に、ここでのテーマは「金」。
ヴォネガットは、金や富をファンタジーとして扱う。
金持ちは、金を用いて富を分配することで世の中をよくしたり、
人々を救うことができると真剣に考えている。
違うのは、エリオット・ローズウォーターは幸せだったが、
「ジェイルバード」のメアリー・キャスリーンはそうとは言い切れなかった、
といった差だけ。彼らは資本主義社会のファンタジーであり、魔法使いなんだな。
「ジェイルバード」では、本人の意向や思惑を大きくそれて、誤解の上に待ち受ける、
思いがけない展開に流されてしまう人々の物語とも取れる。
人生は、勘違いと思い込みで彩られているのかもしれない。
読後感の後味は、わたしは「ローズウォーターさん」よりも
「ジェイルバード」のほうが好きだ。
限りなく、ヴォネガットらしい。
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アメリカを舞台にした、痛快な物語。
とても奥が深いです。構成が好きですね。
和訳ものは苦手でしたが、後半から盛り上がり、とまらなくまります
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『ジェイルバード』は「囚人」という意味。
タイトル通り、ウォーターゲート事件に巻き込まれて囚人となった男の人生を描く物語です。
非情な経済システムに対して疑義を投げかける作品で、大変面白かったです。
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1行読んだだけで私の顔をにやけさせる作家というのは、たぶんこの人だけ。関係のない(ようにみえる)ことが次々に書き連ねられていって、その中に身を置くこと自体すごく気持ちいいんだけど、それらが最後にうまいことまとまっていくところがたまらない。これまでアメリカで起きてきたいろんなことを良く知っていればもっともっとおもしろく読めるのかもしれないなあ。でも、今、わたしが感じるおもしろさだけで充分。
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ローズウォーターの再来
古本屋で見つけたので買ってしまった。
ヴォネガットの作品史では「スラップスティック」と「ガラパゴス」の間に位置する1979年の作品。
登場人物は新しいが、なぜかキルゴア・トラウトが復活しており(あまりインパクトはないが)、2編ほど超短編SFが入ってる。
ひとりの男が金持ちになったり牢獄に放りこまれたり(Jailbird=囚人)、また金持ちになったりというお話。80年にわたる主人公の生涯を回顧録の形で自身に語らせながら、脇役たちに各種のテーマを語らせるという手法。
今回のテーマは金だと言える。ある意味で「ローズウォーター」に似ている。今回もプロローグとエピローグの密度が濃く、むしろそこにテーマが潜んでいるような感じさえある。
現代アメリカをベースにした、少しも幸福感のないおとぎ話ってところにまとめられるな。
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ヴォネガットはジェイルバードとかローズウォーターさんあなたに神のお恵みをなどを書くことで、
支配階級の意識を少しでも変えたかったのだろうか
ローズウォーターさん〜の方ではラストで下層階級へお金を放り投げて終わるけど、
ジェイルバードでは解体されたRAMJACは結局支配階級の食い物にされて終わる
ユートピアなんて実現しねーよどうせ みたいな悲観的な印象を受ける
諦めようぜ!人類は滅びます!資本主義万歳!
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ヴォネガットを読みたい時にはもってこいの良作
表紙 7点和田 誠
展開 8点1979年著作
文章 7点
内容 700点
合計 722点
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たくさんの買い物袋を提げているホームレスを見かけることがあるが、女性の場合はshopping bag lady と呼ぶ。20年前字辞書を引き引き読んだこの作品で知った単語だが、なるほどと思ったのを思い出した。
ショッピングバッグ・レディーとして登場するメアリー・キャスリーン・オルーニーの存在は、わたしにとっては「タイタンの妖女」の主人公マラカイ・コンスタントと同じぐらい衝撃的。よくこんなキャラクターを作り出せるもんだ。
ヴォネガットらしい何とも言えないエンディングで、ある意味ハッピーエンドといっていいのだろう。読者はなぜか不思議な満足感を得られるのだが、これは最高度の離れ業ではないだろうか。
ヴォネガットの冴えを見せてくれる最後の作品。