紙の本
この痛みは決して「遠い昔」の痛みではない
2003/01/25 21:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岑城聡美 - この投稿者のレビュー一覧を見る
新訳の発行を間近に控えて、改めてこの名作を読み返してみようと思い立った。主人公ホールデンの無力なあがき、秘められた繊細さ故の暴挙、悲嘆。そうしたものが、初読時より十年あまりの歳月を軽々と越えて、と言うよりは、むしろ「大人の世界」に格好だけは両足を踏み入れてしまった今だからこそ、一層鮮烈に響いてくる。
ホールデンは、人が社会に順応して行くにつれ、目をふさぎ、感覚を鈍磨させてやり過ごしてきたあらゆる感覚的矛盾に鋭敏に反応し、反発する。社交辞令やその場しのぎの会話の虚しさ、不全でありながら形だけは成立したように見せかけるコミュニケーションの愚かしさ、形骸化した芸術等々。あまたの人間がまともに生活していくために、ほとんど無意識のうちに丸呑みにし、見えない振りをしてきたまやかしや矛盾の数々を、彼の言動は逐一掘り起こし、読む者の眼前に突きつける。頁をめくるたびに新たな痛みが読む者の胸を刺す。生きるために一体自分は何をごまかし続けてきたのかと、思わず自問せずにはいられなくなる。
彼、ホールデンの、内面に無垢を抱えながら外の世界との軋轢に苦しむ様は、決して少年期の通過儀礼として過去に葬り得るものではない。むしろその時期を過ぎた、いわゆる「大人」が読んでこそ、この作品がはらむ真の痛みを実感出来るのではないかと思う。
ホールデンが唯一、無垢なままの自分で接することが出来る妹、フィービーとの美しいラストシーンに、ようやく救われたと言う安堵感を得て、本を閉じた。それでも、彼があの「無垢な世界」に安住することは叶わないのだと言う暗澹たる思いが後に残る。美しい世界に安住出来ないのは彼ばかりではない。「大人」であるはずの自分も、彼と同様の痛みに耐えていかなければならないのだ。「成長のための痛み」は、決して16歳の彼ばかりのものではない。
投稿元:
レビューを見る
あまりにも有名な一冊。
永遠の16歳の少年ホールデン・コールフィールド。
トテモ トテモ大好きデス。(LOVE
物語は、主人公ホールデンが名門高校を退学処分となり、
寮を飛び出してからの3日間あまりの彷徨を描いています。
彼は接する人間の言動に少しでも欺瞞を感じ取ると
激しい拒否反応を起こし、
結果的に本人も疲弊してしまいます。
そんな
デリケートで硝子細工の様なココロを抱えるホールデンが
唯一心を許す妹のフィービーに逢う為に
深夜自宅に忍び込み彼女と会話をかわす中で、
好きなことは何もないの?って妹に問い詰められ、
答えに窮したホールデンが
「The catcher in the rye」になりたい。
と答えたコトが題名に引用されています。
日本では、ソノ物語の内容に物議が交わされ 一時販売停止になった。
リナは、改定される前の「ライ麦畑でつかまえて」を持っています。
ハッキリ言って 何が危険か解りません。
もし 手に入れば 改定前をオススメします。1980年12月9日、ニューヨークのダコタ・アパートの前で
あのジョンレノンを射殺した25歳のマーク・デヴィット・チャップマンが
最後に読んでいた本が「ライ麦畑でつかまえて」だったという。
投稿元:
レビューを見る
少年〜青年期にしか持てないイノセンスはなかなか言葉で表しにくい。特にネガティヴな面は。書き込みすぎるとリアリティを失ってしまう。そういった意味でこの翻訳は永遠に輝きを失わないだろう。大人になるには鋼のようなウィズダムを手に入れるしかないことを示唆してくれている。
投稿元:
レビューを見る
すごく有名ですこく売れた本でもある。
少年はまず、批判する、すべてが気に食わないのか?大人への反発?そして、タバコにお酒にいろんなことするし。何か、信念みたいなものはあるけど、すぐ考え変わるし、なんというか、その時代の若者なんだろう。たぶん。結構すごい言葉で表現されてる部分もあったけど、現代文学もまぁ、性とかに関する分野はオープンだし問題はないのだろう。
この主人公を好きになるか、嫌いになるかは人次第かな。私は結構好きだけど。何もかもに反発したくなる時期ってきっとあるんだよ。私はあまりなかったけど。だから、主人公がかわいいくも見える。
内容は面白かった。村上春樹みたいな本だな。とちょっと思った。海辺のカフカしか読んだことないけど。
暗殺者の愛読書になっていたり、現在でも禁書扱いになるところもあるらしい。
どこらへんを読んでそういった、思想になるのかは興味があったり。。
投稿元:
レビューを見る
○2008/03/03
とりあえずなんとなくの感覚を覚えてるうちに、と手に取った野崎訳。なんでだかこっちの方がしみ込んできた。多少言葉遣いは古くても、文の雰囲気が合ってるのかもしれない。ホールデンに嫌味な印象がなかった。先に村上訳を読んでいたからこそ気に入ったのかな。
前半はやっぱり流れて行った感じはするけど、後半のとくにフィービーと話すあたりからはすごく集中して読んでいた。自分でもよくわからないけど、何か惹きつけるものがあったんだろうか。
また次に手に取るとしたら、断然こっちだ。
投稿元:
レビューを見る
女は偉大ってことかな。そういうことなんだろうに。一つの見方としては、ということだけど。
原書を読みたくなったなぁ。スタンド・バイ・ミーに続いて二冊目だ、原書を読みたくなった訳本は。
投稿元:
レビューを見る
終始単独の語り口調で描かれたこの作品は、純粋で潔癖な少年の心を持った青年が大人の世界に入った時の嫌悪と侮辱を「低脳」という台詞で表現している。
周りの物事すべてに憂鬱となり、イカれていると蔑む。
大人の世界に浸る自分には彼は潔癖すぎるし理想を求めているだけにも見えてしまう。
ジョークを上手く受けきれなくて多少ムッとしてしまう所も。
男の子目線の方が共感しやすいのだろう。
投稿元:
レビューを見る
うーん。初読ではいまいち良さがわからなかったなぁ。
人の文句ばっかり言ってるホールデンにちょっとイライラしたというか。
でも、おもしろい表現とかは色々あったから原書で読んでみたいな。
投稿元:
レビューを見る
ちょっと違うかな、と思ってしまった。初読だからかもしれませんが、ホールデンにイライラしてあまりスムーズに読み進められなかった。
投稿元:
レビューを見る
お恥ずかしながら、読んでなかったんですよ。これ。で、今更ですが、読んでみた。主人公の男の子が常に「これには参ったね」と言ってるのが印象的。この人は、何にでも心を動かされるらしい。よくもわるくも。
敏感なんだな。翻訳されたものを読んで思うのは、原書が読みたいなということ。きっと、感じることも思うことも違ってくるんだろうと。
投稿元:
レビューを見る
アントリーニ先生がホールデンに語ったことが、最近ぼんやりと思っていたことなので、ものすごく共感します。
結局ホールデンは自己矛盾に陥ってると気づいたんでしょうね。
投稿元:
レビューを見る
最初は「ひたすら愚痴を聞かされるだけでつまらない。米国社会で生きる思春期の少年なら楽しめるのか?」と思った。しかし少しずつ、反抗期、思春期だった頃の自分、今より潔癖だった頃の自分が、実際何に苛立っていたのか、当時も明言できなかった事柄が発掘されていくようだった。
投稿元:
レビューを見る
★2014SIST読書マラソン推薦図書★
所在:展示架
資料ID:09203313
本を読んで読書マラソンに参加しよう!
開催期間10/27~12/7 (記録カードの提出締切12/12)
投稿元:
レビューを見る
面白いとか感動するとかそういうのではなく、爽快とか共感、そちらの方がピッタリくる。若い頃の自分に戻ったつもりで読まないと、ただのわがままな悪ガキの話に読めてしまう。最初から最後まで思い付くままの話し言葉、しかも横路にそれまくるので、苛立つ人は苛立つし、愉快と感じる人は愉快と感じる、両極端な印象を持つんじゃないかと思う。自分も読み始めたとき度肝を抜かれたが、さすがに慣れてくるとと爽快さを感じてくる。ただ、ものの感じ方や表現の仕方、風景に至るまで全てがアメリカ的なので、かなり入り込まないと訳が分からないで終わってしまうかも知れない。いずれにしても最後まで読まないと、単なる自分勝手でやりたい放題な少年の言い分、そんな風にしか読めない。
投稿元:
レビューを見る
ホールデンのクレイジーさは思春期独特の潔癖からきているんじゃないかと思う。人や物や世の中を痛烈に批判してみたり、それらに反抗してみたりするけれど、その裏には確固たる理想や「こうでなければならない」といった信念があるように感じた。それらが正解かどうかは別にして、それらを越えることでホールデンはこれからだんだんと大人になっていくんだろうなぁ。そしてクレイジーでありながら家族愛溢れるホールデンにいつの間にか惹かれた。この本、思春期の頃に読めばもっとよかったかもなぁ、と思う。