紙の本
せっかくのアーサー王伝説の集大成の和訳だが、省略が多いのが残念
2004/09/13 23:21
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投稿者:APRICOT - この投稿者のレビュー一覧を見る
アーサー王伝説の集大成と言われるのは、15世紀にトマス・マロリーがまとめたもの。それを、同時代の印刷業者ウィリアム・キャクストンが編集し、"Le Morte Darthur(アーサー王の死)"のタイトルで出版した。本書は、その一部を抜粋して和訳したものである。キャクストン版は以下の21巻から成るが、うち★印を付けたものが本書に収録されている。
★第1巻 アーサー王の誕生と即位
第2巻 騎士バラン
第3巻 アーサー王とグウィネヴィア王妃の結婚、その他
第4巻 マーリンうつつをぬかす、アーサー王が挑まれた戦
★第5巻 ローマ皇帝ルーシヤスを征服
第6巻 ラーンスロット卿とライオネル卿
第7巻 ガレス卿
第8巻 トリストラム卿の誕生及び業績
第9巻 ケイ卿、ラ・コート・マル・タイエ卿、トリストラム卿
第10巻 トリストラム卿の冒険
★第11巻 ラーンスロット卿とガラハッド卿
★第12巻 ラーンスロット卿の狂気
第13巻 ガラハッド卿のアーサー王宮廷訪問、聖杯探索開始のいきさつ
第14巻 聖杯探索
第15巻 ラーンスロット卿
第16巻 ボールス卿とライオネル卿
第17巻 聖杯について
★第18巻 ラーンスロット卿と王妃
★第19巻 グウィネヴィア王妃とラーンスロット卿
★第20巻 最後の戦い
★第21巻 アーサー王の死
予想以上に省略が多い。トリストラム(トリスタン)の物語と聖杯探索が省かれたのは、まだ仕方ないかもしれない。個人的には興味あるが、サイドストーリーとも言えるからだ。だが、2〜4巻と6〜7巻は載せてほしかった。決着は次巻にとあるのに、その次巻が抜けていたり、過去の出来事が引き合いに出されているのに、その過去が抜けていたりして、欲求不満を感じる。また、アーサーとグウィネヴィアの結婚、マーリンの表舞台からの退場など、重要なトピックスが省略されているのにもガッカリ。ラーンスロットとグウィネヴィアが恋に落ちた経緯も、ぜひ読んでみたかった。入門書「アーサー王ロマンス」で全体の骨子はわかっているが、それ以上の血肉を知りたくて本書を読んだのに、残念である。
以上、大いに不満はあるが、それでも読んで良かったと思う。話はなかなかおもしろかったし、翻訳がこなれているおかげもあり、とても読みやすかった。そして終盤、ラーンスロットとグウィネヴィアの不倫をきっかけに、円卓の騎士たちの団結にひびが入り、ついにアーサー王の最期に至る過程には、それなりにジーンと来るものがあった。だが、アーサーとグウィネヴィアとラーンスロットの三角関係の始まりの部分が省略されていなければ、もっとおもしろかったかもしれない…と思うと、やはり残念である。
紙の本
聖剣、聖杯、魔法使い
2022/05/28 02:00
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投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波少年文庫「アーサー王物語」の和訳を
手掛けた厨川文夫氏が夫人とともに、
マロリーの原書から半分程の章を選び出して、
一般向けに訳したものです。
話の筋や結構は、現代の小説と比べてしまうと、
とっちらかっていて、漱石が「簡浄素樸」とか
「散漫の譏そしりは免がれぬ」と表現しているのも
宜なるかな、と思ってしまいます。
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トーマス・マロリー版 アーサー王伝説。アーサー王伝説は、これが最高では?
英文も美しいです。二度と読みたくありませんが…。中世英語嫌い。
OEDはもっと嫌い。
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アーサー王伝説に興味をもった人(大人)が、最初に見つける可能性がきわめて高いのがこの本だろう。
しかし初心者にはこの本は薦めない。というのもこの本はマロリーの抄訳なのだ。収録されているのは全体の1/3程度なので、他書籍などで全体の物語がわかっている人はいいが、予備知識がない人にはきびしいだろう。
たとえ抄訳でも、最後の怒涛の展開には大泣きなのだが、せっかくならやはり全体の物語を知った上で読んで欲しい。厨川氏の訳文は簡潔で読みやすく、きもちがいい。厨川氏のマロリー全訳をぜひ読んでみたかった。初心者にはグリーンやラニアなど児童書の再話か、井村君江「アーサー王ロマンス」を薦める。
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『アーサー王の誕生と即位』
『ローマ皇帝ルーシヤスを征服』
『ラーンスロット卿とガラハッド卿』
『ラーンスロット卿の狂気』
『ラーンスロット卿と王妃』
『グウィネヴィア王妃とラーンスロット卿』
『最後の戦い』
『アーサー王の死』
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面白かった。やっぱりあらすじじゃなく、物語として読むと生き生きとしてくるね。でもそれも『ロマンス』で概要を知ってたからこそなので、良い順番で読んだと思う。(あらすじでは端折り過ぎて身も蓋もないというか、なんだそれ、みたいに思ってたところが、台詞を全部通して読むと、なるほどそういう気持ちだったのね、とわかる感じ)
しかしアーサー王の脇役っぷりと言ったらないな。ランスロットが主役じゃないか。
アーサー王から王妃に対しての感情がどんなものかもいまいちわからん。それこそアーサー王実は女でした説じゃないと腑に落ちないくらい、ランスロット&王妃を放任し過ぎというか、王と王妃の睦まじさが描かれてなさすぎて、謎。こっちはこっちでちゃんと睦まじかったのか、それとも形式的な感じだったのか、これを読んだ限りではいまいち判断がつかん。
もっとアーサー王視点の本が読みたい。これは『落日の剣-真実のアーサー王の物語-』を読むのがよさそう?
あと、Fateやった時に持ったストーリーのイメージといまいち噛み合わないあたりがもやもや。解説読むに、「ブリテン列王史」が土台なのかなあって気がしたので(ランスロも円卓も恋愛もないそうなので)これも読んでみよう。
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授業でアーサー王物語扱った時読んだ本。
理解するには十分だったけど、もうちょっといろいろな場面も扱ってたらもっと良かったな。
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[主な内容]
タイトルは「アーサー王の死」となっていますが、アーサー王が
生まれる前から死ぬまでの物語となってます。
アーサー王が主人公ですが、途中からサー・ランスロットの方が
アーサー王より活躍したり、アーサー王より人気だったりします。
ランスロットさん、「完璧な騎士」などと呼ばれながら、主君の
王妃を寝取ったり、円卓の騎士の半数を味方につけアーサー王と
戦ったり大暴れです。
[おすすめの理由]
こんな時代だからこそ「騎士道の精神」を忘れずに生きて行きましょう。
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イギリスの伝説的な人物、アーサー王の物語。
王国誕生から、その崩壊までを描く歴史叙事詩。
1485年にイギリス初の印刷業者によって出版され、今に至るまで長く読み継がれている。
円卓の騎士、聖剣エクスカリバーなど、物語を象徴するキーワードは有名である。
前半はアーサー王の誕生と王国の建設までが描かれ、アーサー王が如何に猛々しき武人であったかを語る。
ところが、中盤あたりから、アーサー王も聖人君主とはいえなくなってくる。
近親相姦、妻と家臣への猜疑心など、アーサー王の行動が、王国の未来に暗い影を落とし、それがやがて崩壊への危機につながる。
原作者の、サー・トーマス・マロリーは、現代(1485年当時)は性風俗が乱れていると本書の中で嘆いており、アーサー王の時代は恋愛にいて、禁欲的だったとしているが、現代から見ても奔放に映る。
それというのも、有名な騎士ラーンスロットの物語がそれを象徴している。
欧州全土にその名を轟かせた武人ラーンスロットは、アーサー王の妻と密会を重ねる。
しかも物語の途中何度か数名の女性と同衾するシーンが描かれているが、王妃のために独身を貫いているという呈で描かれている。
この当時のフランス(原作はフランス語)・イギリスあたりの恋愛観がイマイチぴんとこない。
ともあれ、王妃をめぐる問題でアーサー王とラーンスロットは対立し、全王国を巻き込む一大合戦へとつながっていくのだから、アーサー王妃も罪作りな女性だ。
アーサー王の時代、常に戦争があったようで、終盤は人心が王から離れていく。
東洋的な描き方であれば、アーサーは殷の紂王や秦の始皇帝のような描かれ方をしてもいいはずなのだが、ここが文化の違いなのかもしれない。
他国の王から袋だたきにあったり、家臣の大反乱に巻き込まれたりと、女性をめぐる王国の混乱は、理想の君主を描く物語としては、ふさわしくないような感じもするのだが。。。
この物語が、後世のファンタジー物語に影響を与えたであろうことは、想像に難くない。
どうでもいいことなのだが、この物語のもう一人の主人公、ラーンスロットは、同時代に支那の明で成立した「三国志演義」でいえば、呂布です。
貂蝉をめぐって董卓と対立するあたりと、符合するものを感じました。
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昔読んだ児童書より収録話数が多いためか、予備知識がついたためか、読みやすく感じました。
現代の常識と倫理を頭において読んでしまうと混乱しますが、当時は常識はそうなんだろう、と思って読むと面白いです。
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今日アーサー王伝説といえば、このマロリー編の『アーサー王の死』を下敷きとしたものがほとんどです。15世紀テューダー朝英国で成立したもので、それまでにあちこちの伝説・伝承から派生した物語を集大成したような作品です。
とはいえ何というか…理想化された中世騎士道の精華としてのアーサー王と円卓の騎士の物語なので、元々個々の伝説にあったケルト的な土着性ですとかある種のわけわからなさのようなものが失われているとも言え、善し悪しです。しかし定番中の定番ではあるので、一読しておいて損はありません。
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原書名;Le Morte d'Arthur
著者:トマス・マロリー(Malory, Thomas, Sir, 1416-1471、イングランド、著作家)
編者:ウィリアム・キャクストン(Caxton, William, 1422?-1491?、イングランド、出版者)
編訳:厨川文夫(1907-1978、熊本、英文学)、厨川圭子(1924-、東京、翻訳家)
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「アーサー王伝説」を初めて物語としてまとめたものがこれですが、抜粋したところが抜粋したところだからかアーサー王が主役というより、中盤からランスロット主役です。解説にもありましたがアーサー王は序盤では主役として描かるけど、いざ王になって円卓の騎士団が成立すると背景の人物として描かれてます。後半ランスロットばっかりでちょっとアーサー王が好きな傾向がある自分は「んー?」と感じました。
でもランスロットの話はやっぱり面白かったです。
「アーサー王の死」とあるからアーサー王の勇姿が見れると期待してる方より、ランスロットが好きな方にこの本はオススメです。
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トマス・マロリーによる『アーサー王の死』キャクストン版の抄訳。
そう、抄訳。それが残念。
(なお、ウィンチェスター版の完訳が青山社から今上下巻で出ているようなのだが、あわせて1万円ほどする。こ、これは厳しい)
アーサー王伝説というと、きらびやかで騎士道の華で、勇敢な騎士たちが、アーサー王の他に、ランスロット卿、トリストラム卿、ガウェイン卿などなど、輩出しており、アーサー王伝説のファンであるという人には、大抵ご贔屓の騎士がいるものかと思う。
前述のとおりこれは抄訳なので、
トリストラム卿の話は全て割愛されている!
パーシヴァル卿の話は全て割愛されている!
ガウェイン卿の冒険は全て割愛されている!
ガレス卿の冒険は全て割愛されている!
聖杯探索は全て割愛されている!
要するに、これはアーサー王とランスロット卿及びグウィネヴィア王妃の部分のみまとめたものと言って良いだろう。
しかし、それだけに、アーサー王の生涯についてはスッキリとまとまっており、わかりやすいと言えなくもない。
また、アーサー王と複雑に絡み合うランスロット卿についてもおおむねこれに習う。
(但しランスロット卿の生まれ育ちなどについてはここでは語られていない。最初から栄誉ある生え抜きの騎士として登場する)
同時に、後世『アーサー王の死』を下敷きにして物語としてまとめられたものなどには、もっとエレガントなものがあるのだが(たとえば訳書でいえば、岩波の児童書に収録されているものなど)
本書はそういった脚色は当然ないので、驚くほどワイルドであり、中世的な残酷さや、感情の迸りが露骨に描かれている。
高貴なるアーサー王というイメージで読もうとすると、アーサーが王となってすぐ、どのような事件があって、どのような事をなしたかについては驚くほど……そう、ある意味では「人間的」なのだな、と感じる。
彼は激しく戦闘した優秀な戦士であり、敵に対しては容赦ない男だったと描写されている。
また、若い頃も、晩年も、全く賢明とは言えなかった。
物語としてもっと美しいものは、他にいくらでもあるので、そちらを読んだ方が良い。
それでも、アーサー王の物語の原点を知りたいと思った時は、やはりマロリーの『アーサー王の死』に限るのではないかと。
末尾ながら、激しくツッコミしておきたいところが一点ある。
作中何カ所か、「恐竜」と訳されているところがあるのだが、これ、おかしいだろ!
恐竜というと、あれですよ、ジュラシック・パークのああいうのを連想するでしょうが。
というか、同じ爬虫類(なのか?)というだけで、竜と恐竜は違うだろ。
爬虫類だから、亀を蛇だとまとめちゃうのと変わらないぞ。
竜です。ドラゴンです。恐竜ぢゃない!
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アーサー王と円卓の騎士の冒険を期待して読んだが、中盤はランスロットと王妃の不倫の話だった。
宮廷ロマンスと言えばそうだが、読むのはキツイ。
ランスロットは強くて、礼儀正しくて、高貴で、仕事ができて、一途。けど、駄目。そんなのあり得るんだな。
ただ、文章が簡潔でとても読みやすい。
終盤のガウェインの
「つべこべ言わずに、王妃を渡したら、この宮廷から消え失せろ」
良かった。