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物見の塔、無窮の滝、版画画廊、球形住宅…天才画家エッシャーの描き出した超建築の街カストロバルバの不可解な連続殺人、幻想の都市を訪れた夢探偵万治陀羅男はこの白日夢的世界に事件の謎を追うが。
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『カストロバルバ~エッシャー宇宙の探偵局』改題文庫版。
現実世界では平凡な人間である万治陀羅男(まんじ・だらお)が
夢という別世界で名探偵ぶりを発揮する物語。
舞台となる海港都市カストロバルバはM.C.エッシャーの作品が実体化された街で、
エッシャーが創造した「新しい遠近法」や「不可能な図形」を応用した建築物で
成り立っており、その名はエッシャー1930年制作の風景画に由来。
街の空気が地中海性気候らしく描かれているのが、エッシャー作品に相応しい印象、
だが――殺人事件を探偵が捜査して犯人を指摘するミステリの形式を取っているものの、
そもそも舞台が夢の中であり、
しかも、建築物がエッシャー作品を立体化した造形(!)なので、
トリックなど、ああそうですか、としか言いようがない(笑)
精神分析的解釈で動機を言い当てるのはいいとしても、
結局、夢の中の話だし……。
作者が心理学×建築学を修めた人だから、そういう筋立てになるんだろうか。
確か、昔読んだ『聖シュテファン寺院の鐘の音は』も、
建築家のアニマがどうとかいう話だったっけなぁ。
そもそもミステリとして読むべきではないのかもしれないが、
かと言って、SFとしても幻想文学としてもパンチが足りないというか、
中途半端な気がして、よく出来た作品だと思うが今一つ好きになれない、といったところ。
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荒巻義雄『エッシャー宇宙の殺人』読了。
様々な人の見る夢から成立する街カストロバルバ。この街ではエッシャーの騙し絵のような建造物が実在する。誰もが一度は見たことがあるエッシャーの絵画の中で起きる殺人を夢探偵の主人公が解決する連作短編なのだけれど、夢と幻想の世界だけあってやや本格度は薄い。しかしエッシャーの絵だからこそ発生する現象を土台にした事件はやはり面白い。特に2話の無窮の滝の殺人はミステリファンも十分楽しめる。モルグ街やまだらや密室の行者のネタバレがあるが(笑)
僕が何より好きなのはこの小説の舞台。夢の街の中での日常があまりに魅力的で、仕事なんてしないでこの世界でのんびり暮らしたい、と本気で思ってしまった。幻想ミステリの傑作と言っていいだろう。
つらくなったら再読して現実逃避しよう、そうしよう。