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紙の本
明治近代化の葬られた歴史を暴く
2005/10/29 20:36
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
信州の街道沿いにある、廃仏棄釈によって首をもがれた地蔵の前に佇む1人の僧、それがいきなり斬りつけられるところから始まる。襲って来たのは明治政府の密偵、襲われた僧は維新の際に岩倉具視に裏切られた赤報隊の生き残りの一人で、隊長だった相楽総三の副官、軍師と言われた虚空いう男だった。
明治維新において、一時的に民衆の支持を得るための年貢半額という嘘を隠蔽するために草莽の志士達を抹殺した岩倉、明治政府の重税や貨幣政策の失敗による貧困から全国で起きた一揆、廃藩置県に伴う行政の混乱、そして岩倉らと西郷隆盛の確執、これらの史実の中に虚空という架空の人物を挟み込ませることで作り出した壮大なフィクションが本書。そして虚空はただ復讐に燃えるだけの男ではなく、志士としての志の延長として信州を民衆による独立国家にしようという計画を立てていた。
民衆を支援し、時には一揆をコントロールして政府の暴政に立ち向かおうとする虚空と、あらゆる奸計を使って一揆を潰し面目を保とうとする岩倉の戦いだ。
これに、新撰組から維新政府に寝返って虚空を付け狙う男、西郷隆盛から虚空護衛のために送り込まれた薩摩示現流の使い手、虚空の夢にかける女、夢砕けて地方に帰り散っていた志士達、そして西郷隆盛など士族の反乱が絡み合って、行き場の無い情念が渦巻く。ともかく当時の山国にあって、突如として虚空のようなイデオロギーの持ち主が登場することが度胆を抜くことで、現実問題として藩主でも中央政府でも農民でも、適切な対応はできなかったろう。孤高を貫ける虚空はいい。戦いの嵐に巻き込まれた人々の、悔しさ苦しさの中にも、なんとかそれぞれの道を見い出していく力強さが強く印象付けられる。
岩倉具視は散々悪者扱いされ、西郷隆盛もピリッとしない後半生として描かれているが、それもまた歴史の一面なのだろう。権力と民衆の抗争も戯画的に作られたのだとしても、これもまた一つの真実であるように感じる。
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