投稿元:
レビューを見る
今回の作品は前の2作に比べると捜査の進歩の仕方にわざとらしさがなく、 ある事柄を捜査中に新しい事実が飛び込んでくるという形になっている。 フレンチは、自分の推理に自身を持ちローパーを追うが 最終的に捜査は完全に失敗であり、最後の偶然性がなければ 事件は解決しなかったという落ちも良い。今回の作品ではフレンチの捜査以外での思考がときたま 現れており、笑えるのは、自分の推理に自身を持ったフレンチが 近いうちに昇進できるだろうと夢見てしまうところである。
投稿元:
レビューを見る
ルース・エイヴァリルが引き取られたスターヴェル屋敷。伯父で吝嗇家のサイモン。かつての友人パーマー・ゴア夫人からの招待。旅行中のスターヴェル屋敷の焼失。発見されたサイモンと使用人ローパー夫妻の焼死体。金庫に入れれていた3万ポンドの紛失。紙幣の代わりに入れられていた新聞紙の灰。失われた20ポンド紙幣を使用したルースの婚約者ウインパー。フレンチ警部の捜査開始。ローパーの貸金庫に預けられたフィルポット医師の妻殺害の告白文。ローパーの強請り。火事の直前死んだ昆虫学者マーカム・ジャイルズ。ジャイルズの死体の消失。
市川図書館
2009年3月7日再読
2011年5月24日再読
投稿元:
レビューを見る
このストーリーの魅力は、やはりなんと言ってもフレンチ警部の人間臭さ・普通っぽさでした。
この難事件を解決したあと、上司や周りから高評価されるであろう我が身のことを楽しそうに想像していたり(事件解決のずぅ~っと前に、ですよ(笑)、行く先々でその土地の風景を存分に楽しんでいたり、捜査が行き詰った時には、上司・組織に対する不平不満をぶつぶつとつぶやいたりなどなど…ニヤリとするところも多かった。
探偵役って常人を超えた能力を秘かに、あるいは大げさに発揮してあっと驚くような推理力で事件を解決していくというイメージがあるけれど、フレンチ警部は全くの正反対。とても地味で地道でコツコツと調べ上げていくし、関係者と話す時にも、異常すぎるんじゃない?と思うほど、気を使い言葉を選んで話していて、彼は生真面目なんですね。かと思えば、事件からだいぶ横道にそれたり、まったく関係なさそうなところにこだわっていたりしています。
なにやってんだろうねぇ~と思っていたら、あとになってその中のいくつかは、実は大切なシーンだったとわかりました。そして、大人しいというイメージだったフレンチ警部が戦うシーンもあって、全体的にとても楽しく読みました。
投稿元:
レビューを見る
1927年発表
原題:Inspector French and the Starvel Tragedy
投稿元:
レビューを見る
クロフツと言うと、「樽」と「クロイドン発12時30分」が有名で、私もその二作品しか、これまでに読んだことがなかったが、この作品は予想を超えるすばらしい作品だった。
犯人を特定するような十分な手掛かりが示されていないので本格物ではない。フレンチ警部の地道な捜査過程を描いた警察小説だが、捜査の過程で次々と意外な事実が判明し、リーダビリティーが高く、事件の見せ方が非常に巧いと感じた。作中でフレンチ警部が語っているように、殺人、窃盗、放火、死体泥棒とあらゆるものが揃った事件。フレンチ警部の聞き取り調査に対して、誰が嘘をついているのかが大きな問題となる。
特筆すべきなのは、犯人の犯罪計画の綿密さ。これぐらい見事な犯罪計画のミステリーには、なかなか出会えない。
ミッチェル主席警部の洞察力もすばらしい。捜査の途中で、ミッチェル主席警部はフレンチ警部に対して、スターヴェル事件とは一見何の関係もないような指輪投棄事件の担当を命じるが、二つの事件にはつながりがあることがわかる。ミッチェル主席警部の機知には感心せざるをえない。
劇的な犯人逮捕劇で幕切れとなるが、多分、最後の方になるとほとんどの読者が犯人の予想がつき、フレンチ警部の大失策を心配しながら見守ることになるだろう。
投稿元:
レビューを見る
ヨークシャーの荒野に立つ陰気なスターヴェル屋敷が一夜にして焼け落ち、当主と召使夫婦の三人が焼死した。だが、この火災に疑問をいだき、犯罪のにおいを嗅ぎとった銀行支配人の発言をきっかけに、フレンチ警部の捜査が開始される。事故だったのか、それとも殺人・放火といったいまわしい犯罪なのか? クロフツ中期を代表する長編傑作。
「樽」以来のクロフツですが…なにクロフツってこんなに面白いの笑
地道な捜査、ミステリとしての意外性、犯人の計画性、どれをとっても完成度が高い作品である。
私はポケミス版を読んだのだが、違う意味で驚いてしまった。
文庫版だと修正されているのだと思うが、それは…ずるいぞ笑
オススメマラソンその⑨
弦さんから紹介してもらいました。
投稿元:
レビューを見る
事件の真相解明に向けて着実に進んでいる、無事解決できたならば昇進もあるかもしれないと思うフレンチが正直でいい。
犯人を捕まえるために罠を仕掛けるフレンチ、果たして上手くいくのか?
意外な展開もあり、最後まで面白く読めた。
ただ、終盤、上司の主席警部の指示で取り組んだ捜査で突破口を掴むのだが、上司がそんな繋がりを見抜いたとは、少しうまく出来過ぎているように思われるところが、やや不満。
本書で巻末には、解説代わりに識者4人のクロフツ談が掲出されているが、クロフツはあまり語られることがないので、とても貴重。
投稿元:
レビューを見る
クロフツの作品の良いところは、
登場人物が行動の理由が理解できる人ばかりで、
情景もしっかり描かれていて、
「安心して読める」ところだと思います。
本作は、荒野の中の一軒家で発生した火災事件が、
強盗殺人の疑いに発展します。
中盤までは犯人の目星を付ける捜査。
後半は犯人と思われる人物の追跡。
結末はミステリ的どんでん返し。
という作品。
結末のどんでん返しが、
取って着けたもののように感じられました。
これならどんでん返し無しにして、
捜査と追跡のみにしておいたほうが
スッキリとしたかもと思います。
投稿元:
レビューを見る
地道な捜査で小さな事が繋がっていき、事件の全貌がだんだん見えて来て、最後に驚きの展開!
面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
クロフツは読むべきである。
だって面白いから。
安定感のある面白さだから。
「いや、しかし『樽』が面白くないって、あなたやいろんな人が言ってたじゃないですか!」
う、いやそうなんだけど、クロフツは面白いから。
『樽』以外は面白いから。
フレンチ警部がいいのだ。
スコットランド・ヤードの警部である。
人あたりがよく、人から話を引き出すのがうまい。
加えて『豊富な経験は彼にほとんど神秘的な、人を見抜く力をあたえていた。』(98頁)
警部といったが、巻を重ねていくといずれ出世する。
今は警部だが、いずれは主任警視にまでなっている。
この『スターヴェルの悲劇』では、しかしまだ警部で、階級が上がったらどうしようと、ワクワク夢見る場面がある。
その仕事ぶりは地味だ。
珍奇な習性や悪癖を持つようなことはない。
「あなたが犯人です!」
ばばーんと皆の前で名指しをする――というようなこともない。
派手さがない。地味である。
当たり前の人間が、当たり前の人間達の中を歩き、話し、考える。
ひたすら歩きまわって、足で証拠を集めていく。
その始まりも、皆が事故だと思っていたのに、
「あれ、ひょっとして・・・・・・?」
と、誰かがふと思ったところから始まる。
それがスコットランド・ヤードにいき、フレンチ警部が呼ばれるのだ。
フレンチ警部は地味だが、めったに語られることもないのだが、実はファンが多いのだろう。
巻末には豪華な面々による「内外ミステリ談義」があり、これまた大いにおすすめである。
中島河太郎、紀田順一郎、北村薫、小山正という面々がクロフツについて語り、戸川安宣が聞き手という豪華な企画である。
だいたいこの本が「復刊」だというのが、実はファンが多いという証拠と言えるではないか。
そしてこの「復刊」というのがミソである。
売り切れたらまたも絶版というのが予想されるので、見つけたら、出会ったら即お買い上げすることをお勧めする。
ひょっとすると、『樽』も面白いかもしれない。
人によるらしい。
あなたには面白いかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
スターヴェル屋敷が一夜にして焼け落ち、主人と召使夫婦が焼死体で発見され、金庫の中の紙幣が灰になるという事件で始まる.スコットランドヤードからフレンチ警部が些細な疑問から捜査に乗り出すことになる。単なる火事なのか、それとも火事に見せかけた殺人事件なのか。フレンチ警部は関係者から話を聞き足を使って捜査を行い事件の真相に近づいていく。その過程が地道ですが、予想外の展開が待っており、とても面白かったです。
フレンチ警部の出世への願望や署内での人間関係も描かれ、すごく人間くさくて良いです。
クロフツの作品は「樽」「短編集」「ホッグズバックの怪事件」を数年前に読んで以来ですが、一番面白かったです。
2024年2月27日読了。