紙の本
過去から未来へ
2002/01/29 19:14
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投稿者:H.N - この投稿者のレビュー一覧を見る
文学と聞くとやたらと難解な表現ばかりというイメージがあったのですが、どうしてそうなのかまでは気が回りませんでした。
この本で著者はなぜそのような表現が文学で用いられるのか、そもそも文学とは何を目的としているのかを「異化」を中心に語っています。ここで言う異化とはあえて難解な表現をすることにより日常と異なった感覚を読者に与えることですが、その異化が階層構造を持つ作品のどのようなレヴェルで行われているかを実例を交えながら解説するという分析的な手法は理解のし易さに通じています。
作者はあくまで文学を論じていますがこの理論はそのほかのエンターテイメントを語る際にも有効なのではないでしょうか。
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文学を読み書くための本。
全体として自分にとっては難解であった。
ただ、日常で使っている言葉を、
いかに小説や詩において特別な意味を持たせるか、
そこまではいかなくとも特定の効果を働かせるか、
という異化の章はなるほど!と思った。
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(「BOOK」データベースより)
文学とはなにか、文学をどのようにつくるか、文学をどのように受けとめるか、生きて行く上で文学をどのように力にするか―本書はこれから積極的に小説や詩を読み、あるいは書こうとする若い人のための文学入門である。著者は文学の方法的・原理的な問題について考えを進めながら、作家としての生の「最後の小説」の構想を語る。
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現代の文学理論が非常に平易に解説されている良書。
理論関係はいろいろ読んだけど、いまいちまだ頭の中で整理がつかない、という方にオススメ。
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内容(「BOOK」データベースより)
文学とはなにか、文学をどのようにつくるか、文学をどのように受けとめるか、生きて行く上で文学をどのように力にするか―本書はこれから積極的に小説や詩を読み、あるいは書こうとする若い人のための文学入門である。著者は文学の方法的・原理的な問題について考えを進めながら、作家としての生の「最後の小説」の構想を語る。
目次
「小説の声」が聞きとられる
様ざまなレヴェルにおいて
基本的な手法としての「異化」
「異化」から戦略化・文体化へ
想像力はどんな働きをするか
文学は世界のモデルを作る
読むと書くとの転換装置
道化=トリックスター
神話的な女性像
カーニバルとグロテスク・リアリズム
新しい書き手へ
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P.213
子供じみたいい方と受けとめられるかもしれないが、希望か絶望か、と問われる際には、僕はとりあえず希望の側に立ち、人間の威厳を信じる側に立つ。
P.216
想像力とは弦にあたえられているイメージ、固定しているイメージを根本から作りかえる能力である。
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文学作品を読むための方法について、著者がみずからの創作体験を踏まえながら考察をおこなっている本です。
著者は、文学について「客観的な尺度」が存在するという考えが、たちまち裏切られるものであることを知りながらも、「小説を書きながら、あるいは小説を読みながら……ある客観的な尺度による批評、しかも自分としてそれを喜び、心から同意できる批評ということを夢想しないものがいるだろうか」と語ります。そこには、「客観的な尺度」を求める個の態度が、文学をつくり出す、あるいは文学を読み解くという試みにつながり、それを共同の場へもたらしたあと、ふたたび個の作業へと帰っていくというプロセスを後押ししているという著者の考えが示されています。
本書では、ロシア・フォルマリズムの批評家たちによって提唱された「異化」の概念や、文化人類学者の山口昌男がさかんに喧伝したことで知られる「道化」の概念、神話学やユング心理学における女性像や、バフチンのカーニバル論などを紹介し、それらの概念が文学作品をつくり出し、あるいは文学作品を読み解くさいの想像力の働きにどのような影響をあたえるのかといったことが論じられます。
さらに著者は、本書の冒頭でミラン・クンデラのことばを引用することで、文学によって賦活される想像力がもっているはずの可能性について示唆しており、文学の可能性をより広い領域へと開こうとする志向が示されているようにも感じられました。
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文学とは何かについて考えさせられる内容である。飛び出す名言たちは素晴らしいのだが、大江さん自身の言葉があまり無い気がして残念である。
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非常に難しい内容が多い本でした。
しかしながら僕が「期待した地平」以上のものが確かにあった気がします。
改めて、大江健三郎さんは頭が良いのだな、と思いました。
また、「小説」を読むことの重要性を改めて感じました。
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文章が分かりやすく、とても読みやすい。
「想像力」とは何かを定義する章は特に興味深く、新鮮だった。
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一章の『人びとの愚かしさは、あらゆるものについて答を持っていることから来る。』というクンデラの言葉の引用が印象深い。
二章では、ダンテの神曲と俵万智のサラダ記念日を挙げ、同じ本を読むにしてもそれぞれの年代で感じ方は違うことなどを指摘する。
三、四章では異化をわかりやすく説明している。異化とはつまりこれまで私たちが見慣れすぎて見過ごしてきたものたちを改めて認めさせ、経験させることである。その手法によってものを見る私たちをハッとさせ、私たちはそれをまじまじと見ることになる。
また、作家の"声"というもの。
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非常に為になったと思う。じっくりと、非常に時間をかけて読み取って多くのことを読み取った。
これから自分が一人の読み手/書き手としてどのような姿勢を持つべきなのか、どのようなものに着手するべきなのか、それを具体的に明示してくれていた。しかも、その内容が、示し方が、非常に納得の行くものであった。論理的に説き伏せられるのではない、感覚として実感を与えてくれるような言葉の力があったように感じる。
異化するということ、そして想像力と言うこと...文学の中核を為す概念について、今まで自分がいかに無頓着であったかを初めて認識させられた。一冊一冊と、一人一人と、もっと真摯に向き合っていきたい。
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「異化」という手法を使って、言葉によって世界に「意味」を与えていく、それが芸術であり、物語であり、小説であり、文章であるのだろう。
「ことば」のもつ重みにあらためて考えさせられました。
「電車の中で一冊の文庫本を熱中して読んでいた若者が一瞬窓から外の風景を見て、魂をうばわれたように放心している。僕はそうした様子をみるのが好きだ。」
・・・この感覚!!! 自分にもよくあります。
「ことば」って、本当は「沈黙」の中から生まれてくるものなんじゃあないかなって思います。
小説を書くこと、小説を読むこととはどういうことかを深く考えさせられる一冊です。
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最近本当になぜか面白い本しか読んでいないのでまた言うのだけれどとても知的刺激と示唆に富んだ素晴らしい本だった。わたしは常々、平易な言葉、つまり日常で使われるようなありきたりな言葉で複雑な事柄を語る書き手が好きだと言っているのだけれど、その直感が「異化」という論理で示されており震えるほどの発見があった。「異化」とはぼやんと要約すると、言葉というのは色んな箇所で色んな文脈で使われて手垢が付きまくっており、文学者は一度その垢を言葉からすべて洗い流し、その一つ一つに新鮮な意味をもたらすことで、単語レベルから文章レベルから段落レベルまでに何かしらの情報伝達以上の手触りを宿す、というような風に私は理解したのだけれど、まさに詩を読む喜びや、優れた小説を読む喜びはここから湧き上がってくるもので、そうか、わたしは「異化」されていると感じられる文章を求めていたのかと痛感した。途中のバフチンの議論や女性論などはやや読み流してしまったのだけれど、差し引いてもとても大きな発見のある読書だった。やはり文学は励ましである、本当にそう思うな。