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紙の本

おどろおどろしさよりも、不安定さ

2003/02/03 17:49

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:亜李子 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ミステリとして、バラバラだった人間関係や物事がひとつに終結してゆくそのさまは良かったと思う。完結時にはすがすがしささえ感じるだろう。けれども、如何にもそれが『ミステリミステリ』してしまっていて読み応えという点では劣っている。
 例の如く名探偵・浅見光彦が難事件を解決してゆくさまに目を向けるのならば、十分満足できるだろう。キャラクタ性としてはこのシリーズは◎である。
 今回、首を傾げたかったのはキャラクタの登場の仕方がいかにも後々絡ませますという感じだったこと。確かにミステリはあっちでこの事件、こっちでこの事件、そして向こうではもうひとつの事件が起こり、実はそれらは大きなひとつの事件の末端でしかなく、これこれこういう点でひとつに纏まるのだ、というものが多い。これも、またその点ではその古くからの因襲から逃れられてはいないだろう。もっとスマートに、如何にも仕方なくキャラクタを登場させて、それがまさかという状況になってようやく舞台に上がるというふうに出来たのならば、もっと良くなっていただろう。
 また、『恐山殺人事件』というから、世間一般の程度より劣るであろう自分の恐山のイメージからして、イタコの口寄せで死者の亡霊を呼び出して犯人を追い詰めたり、もしくは霊によって取り殺されるかの如き事件でも起きるのだろうかとも思ったが、そうではなかった。その点、題名から連想されるイメージは肩透かしを食らった気がする。これは全くの個人的な感想だけれども。
 ラストの、犯人の暴露に行き着くまでの引っ掛けは、まあ考えれば解ることだけれども、流して読んでいる人には「えっ」と感じられるかもしれません。その点もまたミステリ古来の引っ掛けですが。

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2010/04/16 08:18

投稿元:ブクログ

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