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坂口安吾のエッセイは、目を普段より若干大きめに開いていないと見落としがありそうな気がする。
これよりも、「安吾新日本地理」「安吾新日本風土記」の方が面白かったかな。
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激動の時代を生きた人物7人にスポットを当てた、安吾による人物評が面白いです。
独特というか、執筆された時期ではなかなか新しい解釈であったり、酷評あり、鋭い安吾節は健在ですが、他の作家の史観よりも納得・共感できる部分が自分的には多かったです。
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天草四郎、道鏡童子、柿本人麻、直江山城守、勝夢酔、小西行長、源頼朝
それぞれについて、史実を元に独特な解釈をもって描いた短編集。
小西行長が目的で読んだ。
最新研究結果に照らせば色々つっこみどころはあるのかもしれないが、小西ファンの贔屓目で見ればこの解釈が真実ってことでいいです。
どの人物についても読みやすくて面白い。
ただ、良く書かれていない人もいるので場合によっては覚悟が必要。
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親父の本棚から持ってきた本。
古代から幕末まで著者が好きな歴史上の人物を取り上げて解説するスタイル。
取り上げているのは、
天草四郎
道鏡童子
柿本人麻呂
直江兼続
勝夢酔
小西行長
源頼朝
この人選がまたバラエティに富んでて面白い。
それぞれの人物ごとに時代もバラバラなので、好きなところから読んで大丈夫なんだけど、でもやっぱ登場順に読むのが良いですね。
まず最初の天草四郎で度肝を抜かれます。
天草四郎とは、「いかにも頭の悪い熱狂的テロ少年」と。
いや、なるほど、そう来たか。
聡明な少年ではなかったが演じることにかけては天才的だった四郎少年が、いかに祭り上げられ、いかにふるまったか。彼の周りの人物の思惑いろいろ、とか。
誰を主人公にしても小説をかけそうな、そういう見どころもいっぱい見せてくれるのも良いですね。
次の道鏡もなかなか。どういう人物かってけっこう想像しにくいんですよね、特に古代は。宗教的なものとか文化的な背景が実感として分からないから。でもそういう時代背景だからこそのぶっとんだ素朴さとかがありえた、とか、なるほど。これ読んでから山川の教科書読みなおしてみたりしても色々考えられて面白い。
坂口安吾って歴史評論も書いてたんだなーとか思いつつ、そこまで期待せずに手に取ったんだけど意外になかなか面白かったし、至極まともな評論だった。後から調べたら色々歴史研究もしてたんですね。
やはり歴史というのは単なる事実の羅列ではなく解釈による学問なんだなと、その面白さを改めて感じさせてくれる一冊。
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歴史エッセイのようなものかと思って読み始めたのですが、それよりはもっと史実寄り。
通説とは違う、安吾独自の歴史論というか、歴史物語。
人物の生き生きとした描写は、まるで現場で見ていたかのよう。
そのうえ文章のリズムが良い。
これは、講談を聴いているようではないか、と思ったら、本人もそうと意識して書いていたとのこと。
歴史の王道とは少し離れたところにいる人物にスポットを当てているのもまた、安吾らしいと言えるかも。
”その名演技の裏側に多くの黒幕たちの甚だ組織的な準備や宣伝が行き届いており、その後における仕上げとしての名演技であることを考えると、名演技者として抜群の才能はあったかもしれぬが、要するによく訓練された名演技者にすぎなかった。”『天草四郎』
確かに、たった一人の若者の言動で、あれほど大規模な反乱は出来なかっただろうと、言われてみれば腑に落ちる。
だけどなあ、庶民の犠牲の大きさを考えると、罪な存在ではあったなあ。
彼も被害者ではあったのだろうけど。
『道鏡童子』
道鏡の話を始めるのかと思いきや、持統・元明・元正の3名の女性天皇がいかに中央集権制度を固めていったのかということから始まる。
そして中央集権制度の完成した時頂点にいたのが聖武天皇。
彼はその全知全能を使って国家の財政を傾けた。(全国に国分寺・国分尼寺を建てたりした)
それを立て直すべく帝位に就いたのが孝謙天皇というわけだ。
彼女はとても賢かったので、権力を狙って暗躍する藤原一族の中で、一番単純でお人好しな藤原仲麻呂を重用する。
”そこで彼は同族の藤原貴族を一丸として敵に廻すに至ったが、彼が己れの実兄や一族をおとしいれた陰謀といっても、決して手のこんだものではなく、むしろ無策でガムシャラで、ただもう威張りたい一方の頭の良くないお人好しの田舎育ちの大臣の策という泥臭い手段が多いのである。”
ウケる~。
安吾の結論としては、孝謙(当時は称徳)天皇も道鏡も私利私欲は全くなく国家のために尽くし、仲麻呂を追い落とした藤原氏が付け入るスキのない二人に対して、「ふたりは男女の仲だ」と因縁をつけただけだ、ということだそうです。
史料には男女の仲を裏付ける言葉はないのだそうで、藤原氏の流したデマが今も生きているという事なら、それはそれですごいというか、怖ろしいことだと思う。
小西行長がなぜ朝鮮出兵の失敗の後も秀吉に重用されていたのか。
そもそも秀吉はどういうつもりで朝鮮に出兵したのか。
目からうろこでした。
朝鮮及び明国との貿易の再開を目していた、と。
だから突出した外交手腕を持つ行長(商人上がりで戦での活躍はない)が先鋒なのだ、と。
確かに信長のそばにずっといた秀吉なら、西洋の珍しいものを見る機会も多かっただろうし、それなら朝鮮や中国の名品をも日本のものと一緒に西洋に売り込むことができる、と思うのも不思議はないかも。
秀吉のそばには商人上がりの者も多かったし。
で、当時は貿易なんぞ武士のすることではないと思われていたのもあり、本心��ひた隠して、「挑戦を制圧するぞ~!」なんて出来もしないことをうそぶいていた、と。
うん、あり得る。
秀吉を見る目が変わった。←単純
坂口安吾が勝海舟を好きなのはわかっていました。
”ところが負けた方の総大将の勝海舟は、幕府のなくなる方が日本全体の改良に役立つことに成算あって確信をもって負けた。否、戦争せずに負けることに努力した。”
愛ある文章。
しかしこの本に取り上げられたのは海舟の父ちゃんの方。
なかなか破天荒なことは存じておりますので、いつか必ず彼についての本を読むつもり。
思ったことの半分も書いていないのに、こんなに長くなってしまった。
歴史ってホント面白いなあ。