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紙の本

分子遺伝学入門と優生学

2012/01/25 22:11

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:king - この投稿者のレビュー一覧を見る

分子進化の中立説を提唱した遺伝学者木村資生による進化学史と遺伝学入門をかねた、ややハイレベルな入門書。

これまで遺伝学関係のものはあまり触れてこなかったので、遺伝学について書かれた部分は知らなかったことが多く非常に面白い。中立説っていったい何なのかよくわからない状態から読んだのだけれど、詳しい数理的な部分はともかくとして、どういうことが問題になっているのかがある程度つかむことができると思う。

進化というと、それまでは目に見える表現型をもとに考えられてきたけれど、遺伝子という内部構造を精査する手段を得たことで、いろいろ意外な事実が判明してきた。その一つが分子時計を可能にした、分子進化の速度が一定だという発見だろう。外部形態等の表現型が急速に変化した生物でも、生きた化石と呼ばれるほど形態に変化を生じていない生物であっても、その遺伝子レベルでの変異の大きさが変わらないというのはなかなか意外。これによってある生物同士が遺伝的にどれだけ離れているのか、またどれくらい過去に分岐したのか、というのがわかる。

ここら辺はもっとも基礎的な部分で、ではそうした遺伝学の知見と進化学とをどう橋渡しするかということについてなど、より高度な、数学的な議論もなされているので、初心者にはややハードルが高い部分もある。


この本では、終章の優生学の導入を主張したところがよく問題になる。以下、その内容について。

木村氏は、蠅の劣性致死遺伝子(ホモ接合になると高確率で致死性を持つ遺伝子)などを事例として、医療の進歩により人体に不都合を生じる変異に自然淘汰が働かなくなってくると、変異遺伝子が淘汰に対して中立となり、次第に集団中に固定されてしまう、そして究極的には人類の退化を引き起こすだろうという危惧を語っている。さらに何万年も先の話になるかも知れないと保留しているものの、知能、労力、資源等を、そうしたものの治療ではなく、建設的発展的な事業に使うためには優生的な措置が必要だと主張している。

この章は最終的に宇宙植民がどうとか思いっきりSF的な話になっていくので、優生の話もそうした遠未来を見ての議論としてある。だから、そんな未来の集団においての変異遺伝子の固定の害を理由に、「有害遺伝子」保有者の子供の数の制限とかを主張されてもどうにも納得できない。変異遺伝子の固定というのも、千年、万年単位の将来においてようやく意味を持つようなスケールの話で、そんなに先なら遺伝子操作によって有害と見なされる部分のみを除去するなどの方法が可能になるんじゃないかと思うのだけれど、木村はいろいろ理由をつけてそういう対策には消極的だ。

とりわけ問題だと思うのは、「とくに染色体異常を含む受精卵を発育させないのは、その個体自身にとっても社会全体にとっても、好ましいことと考えられる」と言い、続けて出生前診断によって染色体異常を中絶で除去できるようになったのは「明るいニュース」だ、と述べ、アメリカの遺伝学者による、健康に生まれることは基本的人権と考えられるときが来るだろう、という発言を引用しているところだ。中絶を人権によって正当化しようと言うのはさすがに倒錯が過ぎるのではないか。健康に生きること、なら生存権として理解できるけれども、健康に生まれること、となると中絶その他出生前診断の是非等、かなり話が難しくなってくる。

劣性致死遺伝子のような変異の保存は将来的に発現リスクを増大させるというのは、数の大小はともかく想定されうる。しかし、遺伝病などが淘汰的に中立になるような状況にあるのはきわめて限られた先進国の、ごく限られた状況(遺伝的な病気などがまったくハンデにならないようなパラダイスな社会が今、あると言えるのだろうか)だろうし、この想定にどこまで具体的な現実性があるのか。数万年単位の未来予測をもとに重大な人権侵害になりうる措置を現在において行うというのは天秤の片側が軽すぎるのではないか。

SF作家や科学者はその合理性指向や技術至上主義的な態度から、人間性を欠いているとか非倫理的だとかいうレッテルを貼られる時があるけれど、木村氏はそれがレッテルではない実例のように見えてしまう。何にしろ、出生制限について語るときにはまるで無視していた「人権」を、中絶正当化の文脈でのみ持ち出したりする感覚は、ずいぶん歪だと思う。

まあ、いろいろな意味で面白い本だということは間違いない。グールドは木村の『分子進化の中立説』を「ダーウィン以来の本」と評したというけれど、この本の優生学の記述を読んだらどう思うのか。どっかで言及してるかも知れないけれど。

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