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紙の本
さらば絶望。
2010/07/19 23:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
燃えさかるベルリンの街、負傷して運び出される建物の通路には無数の美術品が飾られている。ゲルマン民族の栄光を示す芸術が。
占領軍の監視をかいくぐって、自由を求め、連帯を求めた人々。
終戦直後、あるいは戦中を回顧して生まれでた小さな物語たち。
死地と承知しているオデッサの戦場へ配属される兵士。
敗戦に打ちひしがれた元兵士。戦死した兵士。戦傷の癒えぬ兵士。戦後という、廃墟と困窮と混乱の時代を生き抜く女たち。
まるでパラレルワールドのように、僕らには見慣れた構図であり、また少しだけ異なる風景。
誰もみな、無力感に浸り、希望を失い、今日一日を生きることだけを考えている。
それから作者には、戦場の記憶も取り憑いて離れない。悪夢のような現実と、悪夢のような記憶が、作者の中でぐるぐると巡り続けて、そしてそれらを小説という形で吐き出し続けなくて入られない、戦後文学らしい性質に満たされているように見える。貨車から石炭を盗もうとして(それは日常的な光景だ)、落下して病院に担ぎ込まれた子供の話などいかにも救いが無いが、それでも子供という立場に身を置いて、失われる未来ということに少しずつ眼が向けられるようになりつつあるのかもしれない。
後半の作品は、それから僅かな時間が経って、戦後の新しい生活に主眼が置かれ始める。むしろ戦後の混乱期に発揮された才能が、世情が徐々に安定するに連れて居場所を失って行くという諧謔さえ混じる。
世の中は常識あるいは良識なるものに支配され、創意工夫や斬新なアイデアは排除される。まっとうな理屈はうるさがられる。
経済は少しずつ正常な活動を取り戻して、暮らしやすい社会になっているというのに、社会の性格は馴れ合いで形成され、人間の疎外もまた繰り返される。
作品のテーマは警句的だが、語り口はペーソスに溢れている。戦争とドイツというものに、とことん寄り添って書いている。たぶんそれが彼そのものと一つのものであるからなのだろう。彼の作品は「廃墟の文学」と言われ、1972年にはヘッセ以来のドイツからのノーベル文学賞受賞者となったのだそうだ。
ベルの作品の普遍性は、確かに僕らには証明できることには違いない。
紙の本
人間の一面・・・
2017/06/30 04:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:une femme - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争という特異な状況の中で、人間が、どのような精神状態になり、どのような行為に至るのか、そのことを描いている。
追いつめられた状況の中で、人間は、通常では、考えられないような、残虐さや狂気を見せることがある。その現実を、目を逸らさずに見ること、または、考えることは、ときに辛いものではあるが、人にとって、必要なことかもしれない。読後、暗澹たる絶望を超えたような気持ちで、そんなことを考えた。
紙の本
X町での一夜は秀逸
2001/03/02 16:05
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:7777777 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハインリヒ・ベル(ドイツ、1917−85。1972年ノーベル文学賞受賞)の書いた短編集である。そのなかでもX町での一夜が空虚さうまく書いていて秀逸であると思う。
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