紙の本
『こころ』というタイトルのもと、漱石はいかなる種類の「実験」を試みたのか
2001/02/25 01:14
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投稿者:オリオン - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校の時以来、数十年ぶりに再読した。こうした再読の楽しみのためこそ、若いうちにたくさんの本を読んで感動を蓄えておくべきだった。ずいぶんと月並みだけれど、ほんとうにそう思った。
それにしても、この作品の構成はかなりいびつだ。こんな初歩的な問題はその筋の人々の手でもって論じつくされているに違いないと思うが、「上 先生と私」「中 両親と私」「下 先生と遺書」の三部構成はどう考えてみても一つにはまとまらない。もともと漱石は『心』という総題のもと短編をいくつか書くつもりだったらしくて、確かに「上」「中」「下」はそれぞれ独立の作品として読んだ方がむしろ味わいがある。
しかし、ここで考えてみたいのは、それらがまとまって一つの作品世界をかたちづくっているとした場合に見えてくるもののことだ。その際、注目すべきは、一つは手紙=遺書というフィクショナルなものとリアルなものを架橋する文学的装置の機能だと思うし、いま一つは『こころ』全篇に出てくる複数の死──Kと先生の自殺や「私」の父の死、明治天皇の死(「明治の精神」の死)や乃木大将の殉死、等々(あるいは身体の死と精神の死?)──がもつ機能である。これらの装置や道具建てを使って、そして『こころ』というタイトルのもと、漱石はいかなる種類の「実験」を試みたのか。
この「問題」はまた数十年後(?)の再々読のときの宿題にしておこう。
紙の本
こころ再び
2015/06/05 16:55
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投稿者:ぶーにゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
中学生の頃、授業で一部を学びましたが1冊通して読みたくなり購入しました。授業ではクライマックスの一部分だけを取り上げていましたが、改めて読むとこういうお話だったのかとすっきりしました。先生と私の周りの状況もわかりおもしろかった。文体も読みやすく言葉使いもなつかしい感じがしてよかった。
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文学作品として深く心に残ったのは、この作品が初めてだったように思える。高校2年生の夏休み課題図書として配布されたのがこの岩波文庫版で、その時はじめてこの作品を知り、通読した。◆文学作品といえば、これ以前にもアンドレ・ジッドの『狭き門』や井伏鱒二の『黒い雨』(これは1年生の時の夏休み課題図書だったと思う)などを通読してはいたが、前者はいかんせん自分が幼すぎたのか、「頭が良すぎる2人の恋愛は、失敗に終わる」などという身も蓋も無い、かつ正しいかどうかすらも怪しい感想(この正否については、同作品を再び通読しなければならないが)のみを抱くにとどまり、後者は夏の炎天下で読んだためか、原爆投下直後の熱い悲惨さのみが心に残ることとなった。◆そうした2作品とは異なり、『こころ』は明治期日本の世相や風俗といった巨視的な知識から、自我を通すことによって他を押しのけねばならないという、悲しくも普遍的な“人間の業”めいたこと、そしてそこより生じる“孤独”ということについての思索までを、示してくれたように思う。◆当時の自分の意識について、もはやほとんど記憶にはないが、部活に委員会にと比較的忙しい毎日を過ごしており、その中でかえって自分は孤独であると感じる夜もあったように思う。本作品の「先生」の言った幾つかの言葉は、そうした心理状態にあった自分を、問題を同じくする先達として、同病相憐れむという感覚で励ましてくれたように思われる。◆高校生だったころから幾年も経つが、人間の孤独ということを考える機会は、いや増してきている気がしている。同じように感じている人がいるとするのならば、本作品の役割はまだまだ摩滅してはいないということなのだと思う。(2005/05/19)
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先生の友人Kが自殺をして、そして、それ以来、人生の見方、生き方を変えてしまった先生のお話。大人向きのお話だと思います。子供にゃわかりませんね。
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夏休みの宿題で読まされた。
若いうちにこれほどの名作を読むということがどれほど重要なことだったか。
母校に感謝したい。
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すごくせつないはなし。
人間の弱さをすごく感じた。
昔の本なのにこんなにひきこまれるなんて自分でもびっくり。
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先生の遺書のところが好き。
先生の利己的な感じが、どこか自分にもあるなぁと思った。でも、それで落ち込むというよりは、共感できてうれしい気持ちになった。
「私」は列車に乗ったあと、どうなったのか気になる。
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「…しかし君、恋は罪悪ですよ。解っていますか」「精神的に向上心がないものは馬鹿だ」「覚悟、―覚悟ならない事もない」
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「私」「先生」「K」、固有名詞が無い分、読者は思う存分第三者気分から客観的に傍観出来るんだけど、やはり心を責められるような、気が重くなるような人間の弱さや愚かさ、なんかを丁寧に描いてる素晴らしい作品。モヤッとして上手く言えない。けど決して色褪せない作品だと思う。
情景描写がすごく綺麗です。視野の広い文体。恋=罪悪、これに限る。
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大学生の"私"と、海岸で出会った"先生"と慕う二人が繰り出す痛々しく切ない話。親友を裏切った罪悪感に苦しむ先生の心、裏切られた親友の心、先生の秘密を知った"私"の心など何人もの思いが錯綜し、それぞれの心を考えるだけで胸が締め付けられます。
先生の言葉一つ一つが重く深く、考えさせられるものばかりでした。
冷静にみえて時に熱くなる先生、マジメで不器用な親友、その間に何があったのか、また読みたくなる一冊です。
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言わずと知れた傑作。
これの「先生と遺書」だけを高校生の頃現代文で習ったわけですが、なんであんなオチのいちばん大事なシーンのみを学習させるのか理解に苦しみます。
どうせなら頭から読ませろ。
大学生になってから図書館で借りてちゃんと読みました。
「Kは先生に裏切られたから死んだ」なんて、高校生の頃はそんな浅い読み方しかできなかったのですが、大人になっていろいろとわかるようになってきました。本当に奥深い話です。
それと漱石の文章がとても好きです。
今でもわからないのですが、これ、お嬢さんはわざと思わせぶりな態度を取っていたのかなあ……。
現在持っているのは角川文庫なんですが、初めてちゃんと読んだのは岩波だったはずなので画像はそれで。
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8月?
漱石の後期三部作の一つ。
先生の抱える、妻にもいえぬ寂寞・孤独感。
そして、それが私との会話の中で、時々顔を出してくる。
最後、先生の遺書でそれが明らかになる。
私は、先生の経験から何を学んだのだろうか。
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中学の頃教科書で少し読みました。
先生がKのあの場面に遭遇するシーンがすごく印象的で、今でも初めて読んだときの衝撃が忘れられません。
大人になって作品を全部通して読むと、例のシーンの衝撃はさらに深く感じられました。
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息を潜めるように生き、死によってようやく生を得る、と言うか何というか・・・・・。
先生、生きていて、本当に苦しかったのだと思う。特に 「私」 に出会って以降。それでも 「私」 との出会いが、先生の人生に唯一最後の意味を持たせることにもなっている。
どんよりとした読後感。でも救いは、ある。
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心苦しい・・・
漱石を初めて全部読みましたが流石の一言です。
時間が経ったらもう一度読もうかと。